表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く
107/205

3−67:炎を操る小さき悪魔


 試練の間を後にした俺たちは、第7層への下り階段を目指して未踏破区域を進んでいく。

 さて、階段が見つかるまでにどれくらい時間がかかるだろうか……と考えていた矢先のことだった。


「……あったな、下り階段」

「……ええ、すぐ見つかったわね」


 朱音さんと顔を見合わせて、どちらともなくクスリと笑う。思ったよりも第7層への階段はすぐ近くにあった。どうやらあの巨木は、第6層最後の関門的な存在だったようだ。

 道中ではラッシュビートルを確実にやり過ごしつつ、巨木で待ち受けるラッシュビートルとの戦いにはしっかりと勝ちきる。それが、第7層へ挑戦するために必要な最低条件なのかもしれないな。

 ……まあ、俺たちは試練の間でもっと強いモンスターとも戦っている。さっきのように奇襲でも食らわない限り、ラッシュビートルに臆することはきっともう無いだろうけどな。


「ぱむっ。もにゅもにゅもにゅ……」


 ちなみに、さっき倒したラッシュビートルの魔石はアキにあげた。アレを倒せたのはほぼアキのお陰なので、魔石をあげることに躊躇いは一切無かった。

 そして、アキは意外と食べっぷりがいい。小さな口を目一杯開けて、ラッシュビートルの大きな魔石に一生懸命齧りついている。既に半分ほどが無くなっているが、食べるスピードは最初と比べてもほとんど変わっていないようだ。


「ここだと落ち着かないし、とりあえず階段に行こうか。アキが食べ終わるまで、そこで待とう」

「ええ、そうしましょう」


 階段はモンスターポップ率0地帯だ。下の階層からモンスターをおびき寄せてこない限り、階段でモンスターに遭遇することはない。

 いわゆる"トレイン行為"が少し怖いが、ここまで来れる探索者はそういない。他のダンジョン、例えば横浜ダンジョンなんかでは、第10層すら突破した探索者がそれなりに居るらしいが……亀岡ダンジョンは人が少なく快適な反面、深く潜れる探索者が少ない。なので、そもそもそういう(トレイン)行為をする輩自体がここには存在しない。

 ゆえに、階段はほぼ安全地帯と言って差し支えないだろう。






「さて、階段の真ん中くらいまで下りてきたが……」

「ぱむっ。もにゅもにゅもにゅ……」


 見れば、アキはまだ魔石を一生懸命頬張っている。残りは4分の1くらいかな?


「もう少しかかりそう……待たせてごめんなさい」

「まあ、特に急がないさ。ビューマッピングを何回か使ったから、俺も少しだけ魔力が減ってるし」


 午後に入ってから、巨木前を含めて3回ほどビューマッピングを使っている。魔力残量は8割強ほどで、探索に支障は無いものの……万全の状態に持っていけるなら、なるべくそうしておきたいところだ。

 次の第7層がどういう場所か、ほとんど情報が無いからな。進むにしろ戻るにしろ、少しでも完璧に近い状態へもっていくに越したことはない。


「きぃ?」

「ぱぁ♪」

「きぃ!」

「ぱぁぁ!」


 階段に座って小休止をとっている間、俺の左肩に乗ったヒナタと朱音さんの右肩に乗ったアキとで楽しげにじゃれ合っていた。2人は随分と気が合ったようで、いつの間にか仲良くなっていたようだ。


「ぱぁ!」

――パキッ


 ……ん? アキが、少しだけ残ったラッシュビートルの魔石を半分に割った。


「ぱぁっ」

「きぃっ」


 その片方をヒナタに渡して……。


「かぷっ」

「ぱむっ」


 2人が同時に魔石を食べた。食べ物を仲良く分け合うなんて、本当に仲良くなったんだな――


――ヒナタがレベル10に到達しました


「おっ、ヒナタがレベル10に到達したみたいだぞ」

「あら、もしかしてシステムアナウンス?」

「ああ、どうやら一区切りごとにアナウンスしてくれるみたいだ」


 第7層の直前というタイミングでレベル10に到達とは、吉兆というべきかなんというべきか。これは第7層を探索していけと、そういうことかな神様よ?


「さて、朱音さん。進むか戻るか、どうする?」

「あら、まだ午後2時前でしょ? さすがに戻るのは早い気もするけど」

「まあ、確かにそうなんだけどな」


 試練の間もこなしてるからなぁ。朱音さんは武技を連発してたし、疲労が溜まってないか心配だ。


「どうしたの? 私の顔をじっと見て」

「いや、疲れてないかなって思ってな。見た感じ大丈夫そうだけど、キツいと思ったら無理せずにちゃんと言ってくれよな」

「……ありがとう、まだ大丈夫よ」

「りょーかい」


 ニコリと笑みを浮かべる朱音さんは、特に無理をしているようには見えない。

 ……ただ、疲れは急にくることもある。適宜様子は確認するようにしようかな。


「さて、第7層の情報だけど……実はあんまり無いんだよな」

「あ、私もよ。やっぱり、ラッシュビートルを倒すのがみんな大変なのかしらね?」

「まあ、そうなんだろうな」


 座りながら、朱音さんと情報を共有する……といっても、俺が知っているのは1つだけだ。

 第7層では、遂に敵にも魔法を使う奴が出てくる。インプという名前のモンスターで、【火魔法】を使ってくるそうだ。ド◯クエでいう◯ラの魔法を使う、序盤の厄介モンスターポジションなわけだな。

 ……まあ、リザードマンやらハイリザードマンやらにファイアブレスを吐きかけられたり、ヘビータートルにウォーターブレスを撃ち込まれたりで今さら感はあったりするのだが。聞けば、インプはそこまで強力な魔法は使ってこないらしいので、この盾でしっかりと防げば問題は無いだろう。奇襲だけには要警戒だな。


 ちなみに、インプは倒すと稀に【火魔法】のスキルスクロールをドロップするらしい。本当に稀にしか落とさないらしいが、売れば6桁円は余裕でいくそうだ。

 ……夢があって大変良いとは思うが、俺たちは拾えても多分使ってしまう気がするけどな。


「どうする、朱音さん? そろそろ先に進むか?」

「ええ、そうしましょう」

「よし、ヒナタもアキも、もう行っても大丈夫か?」

「きぃ!」

「ぱぁ!」

「アキは大丈夫だって」

「ヒナタも大丈夫みたいだ。それじゃあ、行こうか」


 立ち上がりながら、お尻をサッと払う。そうしてから、階段の下をじっと見つめた。

 ……第4層・第6層と手強い階層が続いた後の、到達者が少ない第7層。果たして、何が待ち受けているのか……。



 ◇



「さて、と。第7層に着いたが……」


 第7層に下り立ったが、正直ほとんど変わり映えのない風景だった。階段前に広場があり、近くには川が流れ、濃い藪が行く手を遮り、藪の薄い道があって……唯一、第6層までと違うのは。


「クキッ」


 道を塞ぐ、体長1メートル程の小さな黒い影。低空をふよふよと漂うように飛び、黒いギザギザの翼を羽ばたかせる人型の生物……小さな2本の黒い角が頭から生え、細長い尻尾は先端が鋭く尖っている。細身の体も黒く染まり、目だけが紅く煌々と輝いているように見えた。

 これは、もう間違いないな。


「あれがインプか、いきなりお出迎えとは気が利いてるな!」

「ギギッ!」


 その紅い目がこちらを捉え、遭遇一番インプの人差し指の先に火の玉が生まれる。バスケットボールほど大きくはないが、拳大よりは大きいくらいのファイアボール……。


「クキキッ!」

――ゴォォ!


 それなりの大きさを持つそれを、インプは真っ直ぐに撃ち込んできた。弾速は中々に速く、小学生が投げる野球のストレートよりはやや速い……が、中学生のストレートには少し負けるか。

 某関西球団の元絶対的クローザーが投げていた球くらい速ければ、文字通りの火の玉ストレートなどと言えたのだが……所詮は序盤のモンスター、超一流は遥か遠いか。


「盾、展開」

――ブォン

――バチチチチッ!


 もちろん、黙って食らってやる義理はどこにも無いので、白い防壁を展開して炎を受け流す。

 火の玉が防壁を掠めるように左へ流れていくが、攻撃の圧力はウォーターブレスより遥かに弱いし、リザードマンのファイアブレスと比べてもやや弱い。もしかして、インプってラッシュビートルより弱いんじゃ……?

 いや、油断は禁物だ。もしかしたら、まだ隠し玉があるかもしれない。侮らず、慎重に……。


――ガサガサ……

「……ん?」


 なんだなんだ、藪が急に揺れ始めたが……あ、もしかして――




「「「「――ガウッ!!」」」」


 グレイウルフ4体が茂みから飛び出してきて、なんとインプの横にズラリと並んだ。これで、魔物の群れは5体に増えてしまった。

 おいおい、モンスターの増援か? 随分とタイミングが良いが、もしかしてこれインプの特殊能力か?


「増えたな」

「増えたわね」


 もし本当にインプの能力なら、魔法以上に厄介な能力となりそうだ。十分な殲滅速度を確保できなければ、延々と乱入してくるモンスターを倒し続けるという泥試合状態に陥ってしまいそうだが……。


「ならばこうだ、"ライトニング・サークル"!」

「"飛刃・散雨"!」

「きぃっ!」

――ゴォォォォ!

「ぱぁっ!」

――プシュゥッ!


 広範囲攻撃は、むしろ俺たちの得意とするところだ。朱音さんも低コストかつエンチャント無しで広範囲を攻撃できる武技を新たに開発していたようで、各々が魔法や技を放っていく。

 ちなみに、アキは青色の霧を手から放っていたが……何の状態異常だろうか?


――バリバリバリ!

――ヒュッ!

――ゴァァァァ!

――パシュゥッ!

「グギッ!?」

「「「「キャウゥゥゥゥゥゥ!?!?」」」」


 雷撃が落ち、真空波が舞い飛び、炎が踊り、青霧が包み込む……。

 色とりどりの攻撃に全く反応できず、モンスター共は無防備にも呑み込まれていった。




「……キュゥ……キュゥ……」


 敵集団を覆っていた炎が晴れた後。

 魔石4個とその他ドロップアイテムが転がる横で、呑気に眠るグレイウルフが1体いた。グレイウルフは全身傷だらけながら、穏やかな寝息を立てている。


 なるほど、青い霧は睡眠付与の効果があるのか。見る限り、麻痺も睡眠も決まればほぼ試合終了と言ってもいいくらいに強力な効果があるな。


「"ライトニング"」

――ゴロゴロ……

――カッ!

――ドォォォォン!!

「……ギッ……」


 無防備に眠るグレイウルフへ、雷を1発落とす。グレイウルフは最後まで起きることなく、魔石と防具珠に姿を変えた。

 これで魔石5個、武器珠1個、防具珠1個を得た……って、うん? まだ何か落ちてるな。


「……なんだこれ?」


 ちょうどインプが居た辺りに、野球ボール大のオレンジ色の玉が落ちているのを見つけた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
ド○クエのメラで攻撃してくる低級悪魔系モンスター(インプ)→ ベビ○デーモン デカいフォークを持った小太りで舌を出したままのヤツじゃなかった……(笑) 私の姉が「ドラ○エの舌を出したままのモンスタ…
着弾したら盛大な火柱が上がる炎弾を放たれ「これはメ◯ゾーマではない、メ◯だ」と言われたり・・・しなかった(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ