2
王宮での暮らしは私にとって命がけのものであり、ほとんどの事が辛いことでしかなかった。
私にとっては苦痛でしかない教育の数々。王女としての振る舞い方や、王族としての歴史、作法、教養、剣術の鍛錬、学問等々。毎日のように勉強漬けの日々で、私は足掻き続けた。
私は王子である兄と違って、才能は無かった。だから努力を重ね続けた。
その甲斐あって王女として求められる能力は及第点といったところだったが、私自身は満足していなかった。王になる気はなかった、それでも生き残って平穏を勝ち取るために手を尽くしていた。
それがどうしてか歯車が狂って私はアルという男の元に身を寄せていた。しかしそれも長くは続けられまい。私の消息が分からないとなったら、確実に私を排除しようとフェリクス王子の勢力が動き出す。
幸いなのはこの森が人の寄り付かない魔境であるということ。何故なら凶悪な魔物が闊歩している危険な場所だからだ。そんなところに家を構えているアルという男も相当な変わり者だったが、この場所ならばフェリクスの刺客に襲われる可能性は低いだろう。
私は流されるままにアルとの共同生活を過ごしていた。
最初はどうなるのかと不安に思っていたが、いざ過ごしてみると案外悪くないものだった。
それにアルは私を過剰に女扱いしなかった。最初こそ私の事を、その、綺麗だとか言っていたのにそういった素振りは見せてこない。
今まで他人から王女として敬われてきたり、恐れられていたのだがアルは私を対等の同居人として扱っている。それは何とも心地良い事だった。
ただ一つ不満があるとすれば、私の事を女だと認識していないと思わされる程にアルは私に関心がないように見えたこと。いや、関心がないというよりはどこまでも自然体というのが適切か。アルは私がここにいるのが当たり前というような感じで振舞ってくる。自然体で接されるのは心地いいのだが、一応女としては複雑な感情もあるわけで。まぁこれは私のただの矛盾した我儘な感情であり、女としての尊厳の問題だ。
私は木造の硬い感触のベッドから起き上がるとこの家のリビングに当たる場所へと向かう。
そこには既にアルの姿があった。アルは朝食の準備をしていたようで、森の川で釣った魚を焼いているようだった。
「おう、アイリス。起きたか」
「ああ。おはよう、アル」
「おはようさん」
挨拶を交わすとアルは料理を続ける。一応私は王女だ。正体を隠しているとはいえ、こんな感じで気安く接されると不快感が多少湧くものだったが、アルに関してはそういった不快感が湧かない。むしろこうして一緒に居る時間を心地いいと思ってしまう自分がいた。
それから少しして食事が出来上がり二人で食べる。
食事中は特に会話をするわけでもなく、静かな時間が流れる。
そして食後に水を飲みながらまったりと過ごす。
アルは空いた時間に本を読んでいて、私も同じように読書をしている。筋肉質な見た目の割にアルという男は結構な読書家らしい。
「……ふぅ」
一息つくと、私は本を閉じて立ち上がる。こうしてここにきて既に三日目。本当は初日にこの家を出ていくつもりだったが、思いのほか過ごしやすい空間だったため判断が遅れてしまった。
そろそろ頃合いだろう。いつまでも此処にいる訳にもいかないし、王子の勢力も動いているかもしれない。そうすればこいつに、アルにも迷惑がかかってしまうだろう。だから私はここを離れることにした。
立ち上がって出ていく準備を始める。といっても大した荷物は無いので準備はすぐに終わった。荷物を準備している私を見て力の抜けたような表情でアルが私を一瞥し、声をかけてきた。
「おい、アイリス? 何だ、旅支度か?」
「ああ、似たようなものだ。何日も世話になっていてはお前にも迷惑がかかるからな。本当は初日にこの家を出ていこうと思っていたんだが、思いのほか過ごしやすかったから判断が遅れた。アル、お前には感謝しているよ」
「……ほぅ」
おどけた調子でアルは私の言葉に反応していた。さっぱりとした反応だな。
「だから今日限りでお別れだ。短い間だったが楽しかったぞ。また縁があればどこかで会えることもあるだろう。じゃあ達者で暮らせ」
縁か。ここを出ていけばきっともうアルと二度と出会うことはないだろうな。
「ちょっと待て」
「ん?」
呼び止められたので振り返るといつの間にか立ち上がったアルがこちらに向かって歩いてきていた。
「なんだ? まだ何か用か?」
アルは私の目の前に立つとじっと私の顔を見つめてくる。一体なんなのだ。少しの間、私達は無言で見詰め合う。すると唐突にアルが口を開いた。
「顔に埃がついてたんだ、ほれ」
そう言うとアルは私の頬についた汚れを指先で拭うと、ニヤッと笑いその手でパンッと私の背中を叩いた。
どうやらさっきまで読んでいた本の埃がついてしまっていたようだ。気が抜けるようなやり取りに私は思わず脱力していた。全く、別れ際だというのに本当に締まらないやり取りだ。
「……ありがとう。では今度こそさよならだ。元気でな」
「おう、お前もな。アイリス」
こうして私の一方的な宣言でアルとの奇妙な共同生活は終わりを迎えようとしていた。私は家の外に出る為に歩き出す。後ろ髪を引かれるような想いが無いと言えば嘘になる。ここまで穏やかな時間を過ごせたことが本当に久しぶりだったから、そう思った。
「アイリス。お前の事、迷惑なんて俺は思ってなかったぜ」
去り際、不意にかけられた言葉に私は立ち止まる。私は驚いて振り向くがアルは既に本を開いて読み始めていた。彼が照れ臭そうに頭を掻きながらそう言っていることに気付いて私は小さく微笑む。
素直じゃない奴め。私はアルの態度に苦笑しながら再び足を踏み出した。
この森をアルの助力もなしに超えられるかは分からない。元々どうにでもなれという思いで彷徨っていた森の中。再びそこに入ろうというのだ。それでも恐怖はなかった。私はこの時、自然と軽い気持ちになっていたのだった。
♦♦♦
森の中を一人で歩く。不思議と魔物には出くわさなかった。今は私の精神面も安定している。自暴自棄になっているわけでもないので、魔物を避けた適切な道筋で森を歩けているのだろう。危険な場所と知られているこの森だったが、魔物と遭遇しなければ平和なものだ。王宮での一族同士の殺し合いに比べればマシにすら思える。
歩いているうちに、日が暮れてきた。夜の森は危険だ。視界が狭くなるし、魔物に接近されやすくなる。早く街に戻って、寝床を確保しなければならないがこのまま進んでも迷うだけだ。闇雲に進むのは得策ではない。元々一日で森を抜けられるとは思っていない。私の足では街に戻るまであと二日はかかるだろう。どこか休める場所はないだろうか。そんなことを考えながら辺りを見回した時だった。
闇に紛れて、影が蠢く。魔物の影ではない。これは人の気配。悪意を持った何者かがそこにいる。数は十人以上。私の存在に気付いたのかこちらに向かってくる気配を感じる。私はお守り代わりに持ち歩いていた大事な短剣を鞘から抜いて身構えた。相手は複数だが、こちらも素人ではない。王宮で武術の訓練は受けてきた。単なる盗賊であれば逃げる隙くらいは稼げるかもしれない。
しかし月明かりの下に現れた男たちを見て、私は愕然とする。そこには見知った顔があったからだ。先頭にいる男は、王である私の父の部下の一人だった男。その瞬間、私は総てを悟った。
「フェリクス王子の差し金か。となると私は逃げられないようになっているのかな」
思わず笑みを浮かべてしまう。父の死に便乗して、国を乗っ取っろうとする一派。兄の地位を完全なものとするために私に差し向けられた兵士達が彼らというわけだ。私がいなくなれば王位を継ぐ権利を有するのはただ一人。兄、フェリクスだけということになる。
私の言葉を聞いて、父の腹心であった男が前に出る。
「気付いておられましたか。これは残念です。もう少し気付かない振りをして頂けると助かったのですがね。まあ、いいでしょう。抵抗せずに我々についてきてもらえれば命までは取りません」
そう言って、彼は剣を抜き放った。背後にいた彼の部下たちもそれぞれの武器を手に取る。
「私が黙ってやられるだけの女に見えるか? 心外だな」
私は持っていた短剣を彼に向けていた。精一杯の強がり、虚勢を張って男どもに私は睨みを効かせた。相手は王宮お抱えの暗殺部隊の精鋭。勝算はないし、逃げ切れるとも思えない。連れていかれたらどちらにしても待っているのは死。状況的に生き残れる可能性は零に等しい。私は気丈に振舞いながらも、心は諦めの境地へ至っていた。
それにしても随分と呆気なかった人生だと今更ながら思う。王族として生まれたからには覚悟していたつもりだったが、まさかこんな形で幕を閉じることになるとはな。魔物が出る辺境の森にまで追っ手を差し向けるとは兄の執念にも恐れ入る。悪魔と契約して人生を回帰し、経験も積んだ。それでも何も変えられなかった。無為に時を過ごして、何も救えず、私自身の死の運命すら回避できない。
悔しかった。無力だった。私は疫病神のまま、誰にも必要とされずここで終わってしまう。
「申し訳ありません。これも命令なのです。悪く思わないでください」
男は冷たく言い放つと、躊躇することなく斬りかかってきた。私は目を瞑る。
次の瞬間、鈍い音が響いて何かが崩れ落ちる音が続く。恐る恐る目を開くと目の前に誰かが立っていた。筋肉質な体つきをした男だった。腰には大ぶりの剣を携えている。背丈は私より少し高いくらいだろうか。背中しか見えないのでよくわからないが、髪の色は吸い込まれるような黒色だった。どう見ても盗賊などではなく、歴とした戦士といった風貌をしている。その男の後ろ姿には見覚えがあった。数日前に私を魔物から助けてくれたあの背中。どうして彼がここにいるのか。偶然にしては出来すぎている。混乱する頭の中で様々な考えが浮かんでは消えていく。
私を狙っていた刺客たちも彼の登場に戸惑っているようだ。それも無理はない。私を襲おうとした暗殺部隊の何人かが彼によって地面に叩きつけられていた。
「よっ、アイリス。やっぱお前、面白いな。普通なら今のは逃げるとこだろ。抵抗しようと強がったのはお前っぽいけどな、ククッ」
振り返らずに私の前に立って黒髪の青年、アルは無邪気に笑う。突然の出来事に言葉を失っていると、彼は続けて言った。
「さて、俺が来た以上はもう安心だ。この場は任せておけ! なんてな。男なら女に一度は言ってみたい台詞をついつい吐いちまったが。まあ目の前のこいつらなら全員倒せるし問題はねえ。安心しときな」
冗談めかした口調だったが、有無を言わせない迫力が今のアルにはあった。私を庇うように立って私に安心しろ、などと言う。
「倒せるって、アル。あいつらは王宮お抱えの凄腕で……!!」
私は慌てて止めようとするが、アルは聞こうとしない。私は必死になって叫ぶ。
このまま彼を行かせてしまえば、間違いなく殺されてしまうだろう。それだけは何としても阻止しなければならない。アルはきっと強い。だがそれでも相手は十人以上もいるのだ。しかも全員が実力者。いくらなんでも一人で相手をするのは無理がある。
だが、そんな私の心配をよそにアルは余裕すら見せる物言いを見せる。
「まあ見てろって。俺、最強なんだぜ?」
そんな戯言を言って、アルはそのまま男たちに向かって歩いていく。私はただ彼の動きを見ていることしかできなかった。アルと男たちの距離は数メートル程。その僅かな距離をアルは一瞬のうちに詰めて見せた。そして、先頭にいた男の顔に強烈な拳を叩き込む。
骨の砕ける嫌な音がしたかと思うと、男は後方に吹き飛ばされた。
地面の上で悶え苦しむ仲間を見て、残りの連中は明らかに動揺している。だが彼らはすぐに気を取り直して、アルを取り囲むように散開すると一斉に飛びかかった。
「男に囲まれる趣味はねぇんだがな」
そう言ったアルにまず最初に斬りかかってきたのは、長剣を手にした金髪の若い男だ。アルはその攻撃を難なくかわすと、相手の首筋に手刀を入れる。一撃で意識を刈り取られ、その場に崩れ落ちた若者の身体を他の二人が受け止めた。もう一人がそれを見て剣を振り下ろしてくるが、今度は逆にアルが相手の背後に回り込んで、膝裏を蹴りつける。体勢を崩したところに容赦なく肘打ちを食らわせ、二人目も同様に沈める。最初に制圧した敵を含めれば相手は既に五人にまで減った。ここまでの動作が一瞬のうちに行われている。
「どうなってんだよ……」
残った五人の刺客は顔を見合わせ、戦意を減衰させてしまったのか、動きを止めてしまっている。それに私でも分かる。アルの動きは別次元。戦士として明らかに格が違う。神業のような技巧と力強さ。己の事を最強と謳うその言葉も強ち的外れではないと思わされる。それこそ幾度も私を絶望させてきた王子の相棒であるシンナイトと遜色ない実力すらあるのかもしれない。
「おい、まだやるつもりか? 俺は優しいから選ばせてやるよ。今すぐ尻尾巻いて逃げ帰るか、それとも大人しく俺にブン殴られるか」
「くっ……!! 調子に乗るなよ!!」
「おっ、やる気か? そういう負けん気は嫌いじゃねえが」
挑発的な態度を取るアルに対して、激昂した一人の男が襲いかかる。しかし、振り下ろされた男の剣をアルは片手で掴み取るとそのまま握り潰してしまった。武器を失った男は驚愕の表情を浮かべ、間合いを取ろうとするが、その隙を逃さずアルが男の顔面に鉄拳を叩き込んだ。
鼻血を吹き出しながら、男が仰向けに倒れる。
残る四人は恐怖で完全に腰が引けてしまっていた。
「追わねぇから好きに逃げろ。殺しちゃいねぇから倒れた仲間も連れてけよ」
「ふざけるな! 貴様だけは許さんぞ!」
アルに恐怖しながらもそう叫んで斬りかかってきた男の剣を、彼は手刀で真っ二つに折ると、そのまま喉元を掴み上げる。
「女一人のところを襲っといて許さない、だ? 笑えるぜ。アイリスは俺の連れだ。一緒に釜の飯を食った女を俺は見捨てねえよ」
アルは男の首を締め上げながら言う。普段の気だるげな感じとは程遠い殺気をアルは醸し出していた。既に意識を失っていたのか、白目を剥いたままのその男を地面に放り投げると、アルは踵を返す。
刺客たちはしばらく呆然としていたが、やがて一人、また一人と森の奥へと消えていった。
刺客たちが去っていくのを確認すると、アルはこちらへ振り返った。先ほどまでの鋭い殺気は消え失せ、気が抜けたような表情のアルに戻っている。誰とも戦っていないのに緊張の糸が切れたのか、急に全身の力が抜けて私は地面に倒れそうになる。
そんな私の身体をアルが駆けつけて支えてくれていた。
「何故私を助けた?」
私の問いにアルが答える。それは私が予想だにしなかった答えだった。アルの話によると、私が襲われているところに偶然通りかかったというわけではなく、彼は最初から私の後をつけていたらしい。
「俺が魔物の徘徊するこの森へ女一人を向かわせる薄情者だと思うか? お前の通り道にいた魔物は俺が間引いといたんだよ。アイリス、お前は変にプライドが高そうだからな。人知れず助けてやろうとしたのさ。そしたら妙なことになってたから流石に駆けつけたってわけだ」
魔物に襲われなかったのもアルのおかげだったということか。全く気付かなかった。おめでたいな、私は。私は素直に彼に礼を言うと、照れくさくなったのか、アルは話題を変えてきた。
「お前、結構強いんだな。身体的な話じゃねえぜ? ハートの話だ。正直驚いたぜ。あの人数を相手に一歩も退かないなんて大した度胸だ。あんな状況で大見得きれる女なかなかいねえよ」
「……私は強くない。ただ臆病なだけだ。臆病だから逃げた。王宮からも、お前からも」
私と関わった人間は死ぬ。不幸になる。私の味方をした者は全員消える。だから怖くなった。誰もいないところにいこうとした。諦めて全てがどうでもよくなったところで私はアルと出会った。
「私はきっと疫病神なんだ。誰かと一緒にいればいずれ必ず迷惑をかける。今までずっとそうだった」
そこまで言って涙が出そうになった。泣くまいと必死に堪えたが疲れているからか、感情がぐちゃぐちゃだ。
「生きてりゃ色々あんだろ。俺だっていっぱい誰かに迷惑かけてきた自信があるぜ?」
アルはそう言って笑う。そんなことあるはずがない。私なんかよりも遥かに凄まじい人生を送って、誰かのために生きてきたはずだ。この男の異次元の強さがそれを物語っている。
そうやって笑い飛ばすアルの姿が眩しく見えた。同時に自分が酷く惨めに思えた。アルはこんなにも強いのに私は弱い。その事実に、悔しさと悲しみが込み上げて、再び泣き出しそうになってしまう。
不意にアルが私を抱き寄せてきた。抵抗しようとしたが、何故か出来なかった。不思議と安心感があったからだ。
アルは私が落ち着くまで、優しく抱きしめていてくれた。しばらくすると、私の心も落ち着いてきた。
「ありがとう……アル。もう大丈夫だ」
「気にすんな、アイリス。俺は自分のしたいことをしただけだ」
「アル。お前は意外と優しいな。だが、あまりこういうことはしない方がいい。勘違いしてしまう女もいるだろう」
今日のこいつは優しすぎる。私の精神年齢がもっと幼かったらコロッと落ちていたかもしれない。ただでさえ顔が整っている男だ。既に何人かの女に言い寄られているかもしれない。
「ま、そりゃそうだな」
アルはあっさりと離れていく。少し残念だと感じるが仕方のないことだ。ってこれでは私がこいつのことを好いているみたいではないか。断じてそんなことはないはずだ。
それにしても、いつの間にかアルとは名前で呼び合う仲になっていた。アルと出会ってまだ間もないのに自然とそうなっていた。
最初はいけ好かない奴だとも思っていたのに、今は彼が隣にいることに安心感すら覚えてしまう。こんなに短い間に何度も助けられているからだろうか。アルをとても頼もしく感じてしまう。
「やっぱ、お前行く宛ないだろ? 今みたいな奴らに狙われるくらいだ。行く宛ができたから俺の家を出てくのかと思ったがどうやら本当に俺に迷惑をかけたくないっていう理由で出て行ったらしいな」
馬鹿を見るような目で私を見てくるアル。むっ、心外だぞ。しかし結果だけを見れば私は愚かだったな。そもそも何の策もないままこの森に飛び込んだ時点で大馬鹿の自覚はあったのだが。
「ったく呆れるぜ。俺がお前に迷惑だなんて言ったか? 無理に引き留めるのも違うから言わなかったけどよ、お前はもう少し人を頼れ。だからしばらくは俺の家にいろ。遠慮とかなしだ。分かったか?」
彼の有無を言わさない迫力に私は思わず頷かされていた。
こうして再びアルと私の共同生活が幕をあけたのだった。