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9


それからは、しばらく2人とも黙って星を見た。

静かで、だけど少しの喧騒と、風の音、虫の鳴き声、夜のにおい。


私の頭の中には、さっきの彼の言葉が反芻されていた。



“僕って、なんなんだ”



正直、全然わからない。何故そんな疑問が出るのか……というところから。

ぼんやりと、でもどこか苦しそうに街ゆく人を眺める彼の目には、これまで一体、何がどんなふうに映ってきたのだろう。

いろんなことを回想しているように感じたけど、やっぱりてんでわかる気がしなかった。


「……分かんないけどさ」


唐突に沈黙を破って、そう切り出す。同じように街並みを眺めたまま。

……うん、やっぱり私にはわからない。私の目には、いつもただ、賑やかな街並みと楽しそうな人々が映ってきた。

サーカスにいた頃から、ずっと。



彼の頭の中や心の中、これまで経験してきたこと、今の気持ち。想像できないし、別にしなくていいや、と、そう思った。


「わかんないけど……その答えって、必要?」

「……?」

「別にどんな血だろうと、あなたはあなただし。しかもだいぶ個性的な人だし。そんなこと考えるくらいなら、血、とかにとらわれすぎないで、君らしくいられる手段を考えた方がいいじゃん」


とらわれすぎちゃったら、それこそ“血”の、思うツボって感じじゃない?なんて適当にそう呟いたその時。





一瞬、ひどく時間の流れが遅くなるように感じた。ゆっくりと、大きく見開かれる彼の目。ちらりと彼を見やった私の目と、ばち、と合った視線。


「……」

「……」



たった、一瞬だった。

そのスローモーションの時を終えて、頭の中に戻る夜の音。


街に視線を戻して、今のは何だったんだ?と首を捻る。初めての感覚だった。まるで世界の時が10倍遅くなったような。



誰かどこかで魔法でも使ったのかな、なんて考えながらもう一度彼の方に顔を向けると、彼はまだ、固まっていた。目をパチリと見開いたまま。


「え?」

「いや、」


まるで時間そのものを忘れていたかのようにパッと顔を戻して、彼は言った。


「いや、うん。びっくりした。ありがとう」

「?なんか今、変だったよねぇ、」

「いや大丈夫。うん。なんでもない」

「え?」


いまいち会話が噛み合っていない気がしたけれど、まぁいいか、と立ち上がった。


「そろそろ寝よっかな…………どしたの」


隣の彼は、はぁ……と大きなため息をついて自分の膝に突っ伏していた。


「ねぇ、僕さ」

「ん?」

「ちょっとずつそんな気はしてたんだけど」

「なに?」

「……君のこと、好きみたい」

「は!?」



















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