第二章 Usual
第二章 Usual
「私もみんなみたいに健康な体で生きたかったな。奇跡が起こらないかな。私はこの小説みたいに奇跡が起きて、一年過ぎても生きてたらいいな。」
私は湊君と売店から出るときに、つぶやいてしまった。
彼に聞こえてしまっただろうか。
ずっと死を恐れている。彼と関わりすぎると、彼を悲しませてしまいそう...
残り何カ月なんだろ。
僕は白鳥さんと売店を出るとき、彼女は何かつぶやいてるのが聞こえたが、小さい声で聞こえなかったのであった。彼女に聞こうか迷ったが、僕は周りに人がたくさんいるからやめた。
放課後、僕ら一年生は帰りのSHRが終わると、みんなはすぐ帰ってしまったが、一人だけ小説を読んだ人が居た。白鳥さんだった。
「白鳥さん、帰らないの?もうSHRは終わったよ。」
彼女にそういうと、ハッとした顔で僕の顔を見た。そして彼女は急いで帰る支度をした。
「あぁ!湊君ありがと!!小説読んでて気づかなかった。エヘヘ」
僕は彼女の無邪気な顔を見て、顔を赤くしてしまった。高校生とは思えない可愛らしい笑顔をしている彼女に僕は、恋をしてしまっていた。すぐ帰る支度を終わらせた彼女は。
「湊君!帰ろっか!もうそろそろ暗くなっちゃうよ。」
「そうだね、早く帰ろうか。」
僕は昨日と同じく素っ気ない返答をしてしまった。
「じゃあね、湊君!」
と言って彼女は気にせず帰っていった。
帰りのSHRが始まったとき私は、気づくことなく小説に集中してしまっていた。
「私もこの小説に出てくる女の子みたいに、一年以上生きたいな。もっとやりたいこともあるし。」
私は心の中でそう思っていたが、それは小説の世界であって小説の世界ではない現実をしっかり受け止めている。やはり私は死を恐れている。私が小説を読んでいるときに、肩を叩かれた。
「白鳥さん、帰らないの?もうSHRは終わったよ。」
湊君だった。私は小説を読んでいて、周りを見ていなかったからSHRが終わったことが分かっていなかったのだ。
「あぁ!湊君ありがと!!小説読んでて気づかなかった。エヘヘ」
急いで帰る準備しているときに彼の顔を見ると、彼は微笑んでいた。驚いたが、帰る支度をしなければいけないと思い、顔を戻し支度を急いだ。
「湊君!帰ろっか!もうそろそろ暗くなっちゃうよ。」
「そうだね、早く帰ろうか。」
昨日と同じく彼は、素気のない反応をしたことに、私は少し落ち込んだ。
「私ったらなに湊君に求めているんだろ...」
心の中で私は、自問自答をしていた。私の中にある歯車は少しずつ動き出しているのが、分かった。
「じゃあね、湊君!」
私はもっと湊君と話したいと思った。まだ生きたい。彼と話したい。
僕が家に帰り、「ただいま」というと母親は夕食の準備をしていた。
「おかえり湊!今夕食の準備してるけど、まだまだ時間かかるしお父さん帰ってこないからお風呂入っといで!」
僕は一回だけ頷き、自分の部屋に帰る。もっと白鳥さんとの時間が欲しいなんて思っていると、勝手に顔が熱くなっていた。僕はすぐにお風呂に入りに行った。
私は帰ってから小説を読んでいた。親から夕食を食べるように言われたが、私は食欲がないと言って断った。
「あと一年しかない命をどうしていけば、それ以上生きれるのかな。」
小説を読みながら必死に考える私が居た。長生きしたい理由は何か、死を恐れるのはなぜかなどいろいろ考えながら読み進める。
「椿、お風呂空いたぞ。入っていいぞ。」
小説を読んでいる最中、父親が部屋に来て言った。私は元気よく返事をした。
「湊君、ごめんね。」
聞き覚えのあることが、僕の脳内に響く。女性の声だ。肌が白く、綺麗な長い髪。何に対して謝っているのか。どんどんその声は遠くなっていく。僕は夢を見ていたのだ。もう一度夢の世界に行きたかったが、部屋の外から母親の声が響く。
「湊、朝だよ!起きなさいー!朝ごはんもできてるわよ!」
この声が聞こえた時、眠気が無くなる。僕がリビングに居ると、父親は優雅に母の作ったコーヒー飲みながら、ゆっくりしていた。
「おはよ、お父さん、お母さん。」
うちでは挨拶をとても大切にしている。言わなければ、父親は怒るだろう。
「おはよう、湊。どうだ高校生活には慣れたか?」
父親の座っている目の前の椅子に座ると、父親は質問をし始めた。
「うん、友達もできたよ。女の子なんだけど、いい人でね。」
「えっ、女の子の友達が湊に出来たのか?」
父はとても驚いた顔をしていた。キッチンに目を向けると、母親が泣きそうな顔で僕を見ていた。
「よかったな、湊。お前に友達が出来たことないからお父さん嬉しいよ」
父も泣きそうな顔をしていたが、朝から少し不快感を感じながら朝食をとる。
「行ってきます。」
朝食を取り終わった。僕はいつも父が仕事に行く前に家を出る。
「おかあさん!桜が綺麗に咲いてるね!今年もいい春が来てるんだね!!」
私は母と一緒にデカい病院へ歩きに行く最中に元気よく桜を見て言った。
「そうだね、椿。とても綺麗だね!椿は知ってるかな。桜はピンク色に光り輝くんだけどね、この桜の花が落ちると茶色くなってしまうんだよ。」
その時母親から聞かされた言葉がとても不思議だった。ピンク色をしていたのに、落ちると茶色くなってしまうんだろう。不思議に思っているとーーーー。
私は目を覚ました。病院へ向かう最中に母と話しているときのことを、夢で見ていた。思い出したくない記憶であったのに、寝る前に考えてしまったから出たのだろう思った。私は胃に腫瘍が見つかってしまったのだ。ステージは4。他のところにも腫瘍は転移していたが、私は高校生活をしてみたいという気持ちから入院はしなかった。抗がん剤を使うことをしたくなかったが、親は強制で抗がん剤を使うことにした。
少し時間が経ったとき、コンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「椿、起きてる?朝だから起きなさいよ。」
「うん、起きてるよ。ありがとう、お母さん。」
学校に行くことを拒みたくなる時もあるが、自分が腐ってしまう思い頑張って学校に行くことをしていた。朝食を取った後、すぐに学校の準備をして学校に行った。
僕が学校に着いたときには、白鳥さんは自分の席に座り小説を読んでいた。昨日と同じ小説を読んでいた。朝の挨拶をしようかと思ったが、真剣に読んでいる彼女の邪魔をしたくなかったので、挨拶をしなかったが彼女は僕が来たことに気が付く。
「おはよ!湊君!!」
相変わらず元気な挨拶をしてくれる白鳥さんが、そこにはいた。
「おはよ、白鳥さん。今日も小説を読んでいるんだね。」
「そうだよ!この小説長くてね。ハハ。」
「白鳥さん、もしよかったらその小説を読み終わったら、貸してくれないかな?僕もそれを読んでみた。」
彼女は大きく頷き、貸してもらうことを約束した。
「ありがとう白鳥さん。」
その会話が終わると、たくさんの人が登校してきた。