第一章 Encounter
ー人間は死が近づくと、人間は死を恐れ、人間は死を拒む。ー
第一章 Encounter
桜の花は舞い上がり、地に落ちた桜の葉っぱは茶色く染まる。
夏に移り変わろうとしているとき、私は死を恐れた。母は俯き、涙を流しながら医者の話を聞いていた。私は不思議な感覚になった。これまで死を考えることはなかったのに、死を考えるようになることになってしまった。
私はとても不思議で仕方なかった。あと1年しかない私の命。
僕は生まれつき体はやせ細っており、人を守れるような容姿ではなかった。僕は小説が好きで、よく昼休みに小説を読むため図書室に向かうのが習慣であった。そのため、僕は友達も、話す人もいなかったから浮いていた。ある日、僕は放課後に風紀委員会の仕事で学校内の見回りをすることになった。僕が歩いていると、器具庫である男子と女子が同じクラスの女子をいじめられているところを発見してしまった。僕は最初見て見ぬふりをしようと思ったが、数秒後には体は動いていた。昔からそうだ。僕は正義感が強く、いじめられている人を見るとすぐ助けに行っていた。
「おい、僕の友達をいじめるな!集団でいじめるなんてみっともないぞ!」
僕がそう言うと、いじめっ子の一人のガタイの良い高山が殴りかかってきた。もちろん僕はボコボコに殴られ、顔に痣ができ、殴られたところがとても痛む。体を起こし、相手を睨む。
「くだらねぇ、そんなヒョロヒョロの体で何守ろうとしてんだよ。睨むなよ、気持ちわっる。引っ込んで小説でも読んどきな!」
高山に言われたとき、僕は怒りを覚えた。僕をボコボコにした高山たちは、笑いながら器具庫から出て、帰って行ってしまった。前に出たことは後悔してないが、ボコボコにされ、その上相手に罵倒されるのはゴメンだ。そう思っていると、小さな声で
「ねぇ、湊君。大丈夫...?私を庇ってくれてありがと。ごめんね、私のせいでこんなことになっちゃったね...。今ハンカチで血を拭くから動かないでね。」
彼女はいじめられていたのに、それを気にすることなく僕の体を丁寧に拭き始めた。僕は大丈夫だと言ったが、彼女は無視して僕の体を拭き続けた。
「でもなんで私を助けてくれたの?どう考えても不利だったのに...」
僕の体が、彼女を助けたがっていた。とでも言えばカッコイイかもしれないがそんなこと相手に話しても馬鹿にされると思い、いじめを許せなかった。とだけ言った。
彼女はクスっと笑い、「東雲君は優しんだね!助けてくれてうれしいよ!」と言うと、彼女は立ち上がり僕の顔を見て、自己紹介を始めた。
「私の名前は白鳥椿。たしか同じクラスの湊君だったよね?」
相手の容姿はとてもかわいく、僕なんかと話してて良いのかと焦りながらも固く僕は自己紹介をした。
「よく知ってるね、僕は東雲湊だよ。怪我は大丈夫?」
彼女はうなずく。僕は素っ気ない返事をして申し訳ないと思うが、慣れていない僕はどうすることもできなかった。その後何も話すことなく、僕は風紀委員会の仕事があるからと言ってすぐに器具庫を出た。
これが僕と白鳥椿との出会いであった。
後日、僕は登校を終え、近くで話していた女子たちの話が聞こえた。
「ねぇ、しってる?あの湊と椿って付き合ってるらしいよ。」
「え、そうなの?静かなもの同士お似合いじゃんww」
この噂を耳にしたとき、僕は確信した。絶対高山たちのせいだ。僕は許せないと思ったが、ここで真実を言ったとしても信じられないまま噂が流れるだけと思い、しゃべることをしなかった。周りの音をシャットアウトするために僕は昨日図書室で借りた本を手に取り、すぐに読み始めた。僕が小説を読んでから10分経ったとき、後ろから聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、そこには登校してきた白鳥さんが居た。
「おはよ、湊君!怪我は大丈夫?」
僕は初めて高校で同級生に話しかけ、少し動揺するがしっかりおはよ、大丈夫だよと返した。そうすると、「ねぇねぇ、湊君は何読んでるの?」と聞くと同時に、僕の顔を覗き込んだ。急な質問にまた動揺する。僕が小説だと答えると彼女は
「これ見たことある!うちの家にあるよ!その小説に出てくる女の子ほんと好きなんだよね...」
というと、僕は白鳥さんがどんな小説を読んでいるのか気になってしまい、つい聞いてしまう。悪い癖だ。僕は気になると、すぐ言葉に出てしまう。
「白鳥さんも、この小説読むんだね。ちなみにどんな小説を白鳥さんは読むの?」
「私は恋愛小説が好きなんだよね。私が入院してた時、私はゲームとかしないし、入院してる時はほんと何もすることないから小説を読んでたら、勝手に小説が好きになったよ。」
まだ白鳥さんと小説の話をしたかったが、朝SHRが始まってしまうため、昼休みに話すこととした。
「またね、湊君!」
またねと言った後、僕は昨日白鳥さんを助けたことを良かったと思った。
「あぁ、友達が出来るってこんな嬉しいことなんだ。」
私は寝る前に考えていた。私がいじめられたのは自分のせいなのに、湊君を巻き込んでしまったことに少し頭を抱えていた。私はいじめられる前日、高山に告白されたのだ。だが、私は高山が気持ちが悪いと思い告白を断るが、彼はそれが気に入らなかったらしい。ある女子二人が、私に
「おい、白鳥。今日の放課後器具庫に来いよ。」
と彼女らは言うと、去ってしまった。断ることもしなかったから、嫌々行くがそこには高山が居た。私は逃げ出そうと思ったが、女子二人が出口付近に立っていることから逃げることは無理だと確信した。そんな時に彼は、私に言った。
「よぉ、白鳥。昨日は俺の告白を断ったが、そんな気に入らなかったか?」
その言葉を聞いた時、怖かった。何をされるかわからなかったし、誰もここに助けに来てくれないと思っていた。
「な、なんで私を呼び出したのよ。こんな誰も来ないようなところに連れてきて何をしたいのよ。」
私は高山に強い口調で言い返すと、相手は言った。
「俺が告白してやったのに、断るのはないだろ。」
私はそう言われたとき、器具庫から見える廊下から人影が見えた。
「どうか、お願い。助けて、助けて...」
心の中でつぶやくと、なんと廊下から声を聞こえた。
「おい、僕の友達をいじめるな!集団でいじめるなんてみっともないぞ!」
私は、奇跡だと思った。いかにも助けてこなさそうな容姿をした人が、高山たちに声をかけたことが驚きだった。私がそう思っていると、彼は相手を殴ってしまった。彼が殴ることをやめ、器具庫から立ち去るのが見えたときに、私は倒れている人に近づく。彼の顔は痣が出来ており、出血をしていたが、同じクラスの東雲湊だということに気づいた。
私は、小説の世界にいる気分だった。助けてほしいと願ったとき、助けてくれることなんて無いに等しいと思っていたからだ。私は不思議と一緒に寝た。
昼休みになると、白鳥さんが僕を売店に行こうと誘ってくれた。
「あ~!疲れた!湊君は英語得意?私苦手なんだよね...ほんと英語の時間は嫌になっちゃう。」
「僕は得意じゃないけど、苦手でもないよ。けど、たまに嫌になるかもw」
いつもと違う風景だ。誰かと話しながら、食事をとるなんて家族ぐらいしかいないかと思っていた。僕には、とても似合わない光景であった。
「そういえば、この恋愛小説知ってる?」
彼女が質問をすると、実物を出した。
「読んだことないよ。どんな話なの?」
「これはね、1年の余命宣告を受けた少女がある少年に恋をするんだよね。でも先に少年が亡くなっちゃうんだよ。」
こんな語る彼女を見ていて、本当に小説が好きなんだと理解してしまった僕がいた。彼女は止まることなく語る。
「そして、この少女なんと死ななかったんだよ。1年の余命宣告を受けたのに、その少女は好きだった彼に言われたことで、生きる意志がとても強くなったんだって。愛の力ってすごいよね...。」
僕は口をはさむことなく、彼女が語るのを黙々と聞いて、昼食を取っていた。彼女が話し終わると、ちょうど昼休みが終わってしまった。もっと白鳥さんとの時間が延びればいいのに、と願うばかりであった。