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セブン・リングス  作者: しおばな
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噂のふたり

「カワイイ」


甘い声に身震いがする。金色の瞳に体が強ばり、全身から汗がでる。身の危険を肌で感じる。


ジェムスのリングスに対する防衛本能はペアになっても消えないのだと実感した。


ルーは咄嗟に少女と距離をとり身構えた。


「誰だっ…リングスなのか?」


金髪の少女はルーの態度に一瞬キョトンとしたあと笑った。


「別に怯えなくていい。ホントにカワイイからちょっとからかっただけよ。確かにあたしはリングスだけどあんたに危害は加えるつもりはない」


少女の態度にルーはどうすべきか考えた。相手は丸腰だし敵意も感じない。砂浜には他に人もいなそうだし、とりあえず話してみるしかなさそうだ。


「…ここはどこですか? あなたが俺を助けてくれたのか?」

「そ。あたしが魚の亡霊を始末してあなたをここに連れてきた。お礼くらい言ってくれてもいいんじゃない?」


ルーは戸惑いながらもとりえず少女の話を信じることにした。


「ありがとう。でもなんで助けて…って!うぉ!」


少女は突然ルーに近づき顎をクイっと持ち上げてじっとルーの瞳を見た。10センチ以上背が高い相手に顎をもたれるなんて女の子でもそうそう経験しないだろう。


少女は目を反らさない。けどルーは目のやり場に困っていた。見つめ合うのも気まずいし、かといって視線を下にやれば少女の谷間に目がいってしまう。


少女はかなり胸が大きくしかもビキニとショートパンツにサンダルという格好。ルーも健全な16歳の男子、迫力のある褐色の巨乳にどうしても目がいってしまう。視線が定まらずキョロキョロ動揺していると低い声で少女が命令した。


「こっちをみろ」

「!」

「胸なんかあとでいくらでも見ればいい。今はあたしの瞳を見て」

「は、はひ」


少女の威圧的な態度と胸を見てしまった罪悪感でルーは真っ赤になりながらカミカミの返事をした。


少女は何かを確かめるようにルーの瞳をみた。肉食獣に詰め寄られているようでとても居心地が悪い。


「やっぱり本物ね」

「本物?」

「あなた、ブラックオパールの原石をもつジェムスでしょ」

「…!なんでそれを」

「まあ待って。その前に名乗らせて。あたしはリリー。リリー・G・スタリオン。ジーランドのリングスで金属はゴールド。で」


リリーは薬指に嵌めた金色の指輪をルーにみせた。金のリングにつるりとした透明度のない緑色の石…翡翠が嵌め込まれている。


「あたしはセブン・リングスよ」

「セブン・リングス…!?」


ルーは驚愕した。そしてここへきた当初の目的を思い出した。


そうだ。俺とガレはジーランド諸島でセブン・リングスの可能性をもつペアが成立したって情報を確かめにきたんだ。


「あなたが噂になってたジーランドのセブン・リングス」

「そういうこと」


リリーは満足げに頷いた。そしてルーに言った。


「あんた達はあたし達に会いに来たんでしょ?」

「そう…なんだけど俺はペアとはぐれて」

「それなら心配ない。あたしのペアがあんたのペアの所に行ってる。ここで合流する予定。もうすぐ来るんじゃない?」

「…!ガレは無事なのか?」

「あんたよりはね。単体ならリングスのほうが強いんだから当たり前でしょ」


ルーはそれを聞いて一先ず胸を撫で下ろした。リリーは言った。


「そんで、話を戻すけどあんたの名前は?」

「…俺はルー・クロノス。ロストダリアのジェムスで原石はブラックオパール。最近ペアになったやつがいる…言うまでもなくあなたは知ってるみたいだけど」

「あんたの名前は初めて知ったわ。名前以外は宝石商から噂を買って知ってたけど」

「噂を買う?」


宝石商…宝石商ってなんだ?噂を買うってどういうことなんだ?


ルーの疑問をよそにリリーは話を始めた。


「あたしたちはある噂を確かめるためにあんた達に接触した」


リリーはルーの手をとり、薬指の指輪をみた。


「ロストダリアでセブン・リングスの可能性をもつペアが成立したって噂をね」


心がざわめく。

指輪が熱を持っていく。


「あんたは確かめたくない?」

「え、」

「自分達が本当にセブン・リングスなのか。もっと言うとセブン・リングスとはなんなのかってこと」

「セブン・リングスがなんなのか…?」

「確かめる必要があるはずよね」


リリーは不敵に笑った。


「確かめるためにジーランドへきた。ここに来る前から心は決まってたんでしょ?」


尋問されてるわけじゃないのにリリーの言葉はルーの心を揺さぶった。


俺たちはやっぱりセブン・リングスなのか

なんで今ここにいてくれないんだ、ガレ

俺ひとりじゃ確信がもてない…


ルーの葛藤を遮るように遠くで声がした。


「リリー!!!シルバーのリングス連れてきたよー!」

「やっときた」


リリーは笑った。


ルーが声のほうをみると薄緑…いや翡翠色の髪をした褐色の少女と、その隣に銀髪の少年の姿があった。


「ほら、あんたのリングス。お出迎えしな」


いま何よりも見たかったその姿。あのときはもう二度と会えないかと思った、俺の宿命の相手。


「ガレ」


ルーが涙声でぽつりと名を呼ぶとガレはこちらに手を降った。

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