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セブン・リングス  作者: しおばな
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隠し事

窓から差し込む日射しでルーは目を覚ました。とりあえず顔を洗い、干しておいた服に着替える。


脱ぎっぱなしで放置した服は今から洗おう。ルーは脱衣所の衣類を集めバスローブと一緒に洗濯機にいれた。洗い終わるまで洗濯機のまえに突っ立ていた。朝食を食べる気にはなれない。


洗い終わった服を干すと何もすることはなくなった。


ガレたちは何時ごろに来るだろう?

そういえば何も約束してなかったな


ふと、このままガレはここへは来ないんじゃないかと思った。もうルーのことなんか忘れて、セブン・リングスを追うのなんかやめて、クロエとふたりカレトリアで暮らしていこうと心変わりしたかもしれない。


それでもいいや、ルーはそう思った。


自分でも何故なのかわからないけれどガレのことで心が動かなくなっていた。昨日より酷く冷淡になっている自分がいる。


リングスの性に触れたから?

考えても原因はわからない。


そういえばガレは俺にあんなふうに接してきたことは一度もなかったな…ただの一度も…


そこまで考えてルーは首を振った。


何を考えてるんだ俺は。変質者に襲われておかしくなったのか?どうかしてるぞ


ルーは頬を叩き気合いを入れ直して、昨日のことはなかったことにしようと決意した。


あれは事故だったのだ。夜中に浜辺で変質者のリングスに襲われただけ。ペアにもされなかったし、原石にも傷は付かなかったし、犯されたわけでもない。


何もなかった、そう何もなかったんだ。


ルーは自分にそう言い聞かせ、テーブルの上に置いてあったフルーツを食べた。別にお腹は空いてなかったけど気を紛らわすために食べた。


「おはよう~ルー」

「起きてるか?」


そうこうしている内にクロエとガレの声がした。ルーは急いでフルーツを飲み込み、ふたりを迎えた。


「おはよう。ガレ、クロエ」

「ふふ、朝ごはん食べてる途中だった?種ついてるよ」


クロエは笑いながらルーの頬についたフルーツの種をとってくれた。


「!ありがとう」

「これからのこと話そうって来たんだけど…ちょっと早かったかな?」

「ううん。俺が起きるの遅かっただけだよ」

「お邪魔していい?」

「クロエの家の宿じゃないか」

「それもそうね」


ルーとクロエは笑い合い、三人は宿へと入った。クロエは宿に泊まってみてどうだったとか、朝日が綺麗に見えるスポットの話しとか他愛もない世間話をしながらルーと笑いあった。


ガレは一言も話さずただ部屋を見回したり、時折ルーを見たりしていた。


違和感を感じているのだろうか?ルーは感づかれたくないと思って必死に平静を装った。


動揺したら指輪を通して昨日の記憶が伝わってしまうかもしれない。


ガレの視線に緊張しつつクロエと世間話をしているとなぜか当然クロエが話を中断した。そしてゴミ箱の中にあった指輪を拾った。


「これって…」

「あっ!?」

「これウチのお店で売ってた指輪じゃん!なんでここにあるの?」

「え!?えぇと、あっ昨日浜辺で拾ったんだ!やっぱそれあの指輪!?今日クロエに聞こうと思って」

「そうなの!?マジで落ちてたの!?」

「ま、マジだよ!昨日浜辺歩いてたら踏んじゃってさ、ん?って思ったらそれがあって」

「えー!??これ700万もするのに!?踏んじゃったのルー!?」

「ご、ごめん」


めちゃくちゃ動揺したルーは苦しい言い訳をした。


「いやルーは悪くないよ!もう売っちゃったやつだしさ!買ったのがここら辺に泊まってたお金持ちだったんだね、きっと」

「そ、そうだね!金持ちからしたら大した買い物じゃないから油断して落としたんだよ」

「……うーんこれ鉱石変形してるかな?中古品として値下げすればもう一回売れるかも…?専門家的に見てどう?ルー」

「は、はは…どうかなぁ」


言い訳はどうにかクロエには通じた。クロエは入手経路より指輪の状態が気になっているようだった。このままやり過ごせるかと思ったが、黙っていたガレが口を開いた。


「…なんでゴミ箱にあった」


ガレは怒りを含んだ声で問い詰めた。


「クロエに渡すつもりだったって言ってたよな?なんでゴミ箱に捨ててあった?」

「………それは、間違えて…」

「間違えて捨てるようなもんじゃねーだろ」

「……寝ぼけて捨てたのかも…悪かった」

「お前昨日何かあったろ。なんか様子がおかしい」

「…………別に何も…」

「嘘をつくな」

「……嘘なんか…」


場に気まずい空気が流れる。クロエが焦ってふたりの間に入った。


「ちょっとガレ、なに怒ってるの?そんなに怒らなくても……」


クロエはガレを宥めようとした。しかしガレは強硬な姿勢を崩さなかった。


真剣にルーを疑っている。

ルーの何かを疑っている。


ガレはルーの右手をとり強く握った。指輪からルーの記憶を探ろうとしているのだ。


「っ!」


ルーは反射的に手を引っ込めようとしたが力が強く離せなかった。抗議しようと思ったが、射ぬくような冷たい視線に黙ってしまう。


まずい、このままじゃ昨日のことが…


別に後ろ暗いことではい。でも流石にリングスの変質者に襲われた挙げ句、自分も興奮して一人でしましたなんてバレたら恥ずかしすぎる。


ルーが青ざめていると、クロエがガレの頭をポカッと殴った。


「イテッ。なんだよ」

「ルーが嫌がってるでしょ。無理強いしないの。そういうのリングスの悪い癖よ」

「だってこいつが」

「無理強いして聞く必要はないでしょ?指輪はあるんだし、落とし物として届ける。それで終わり!わかった?」

「~~っわかったよ」


荒れるかと思ったが、クロエが治めてくれた。


「さあ。本題の話ね。なんかね、今朝リリーさんって人から港町に集まってほしいって通信が来たの。それでね、私も一緒にいっていいかな?私は…部外者だけど知りたいの。セブン・リングスについて」

「もちろんいいよ」


クロエは嬉しそうに笑った。ルーは胸を撫で下ろした。この場にクロエがいてくれてよかった。


ルーは生乾きの着替えをバックに詰めて三人で港町へ向けて出発した。ガレはさっきのことで拗ねるようでふたりと少し距離を置いて歩いた。


「ねえ、ルー」


先を行くガレを追いながらクロエはルーに話しかけた。


「さっきさ。ガレが強引にルーの手を取って何かしようとしてたけど…ガレとペアになってからああいうことってよくあるの?」


ルーは正直に話した。


「たまにね。ペアになってからお互いの記憶とか気持ちとか共有することがあるんだ。俺に何かあったらガレにも影響がでるから過敏になってるんじゃないかな」

「そっか」


クロエはなんだか悲しそうな顔をした。


「羨ましいな」

「……え?」


クロエはポツリと呟いた。聞き返そうとしたが前を歩くガレに呼ばれて話はそこで中断した。

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