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セブン・リングス  作者: しおばな
27/30

言われなくても

「これみてルーくん!うちの一番の売れ筋商品!瓶図めの砂。どう?」

「真っ白な砂…よく見ると一粒一粒星形になってる?すごい綺麗だ」

「ロストダリアの人的にはどう?お土産に欲しくなる?」

「マジで欲しくなると思う!ロストダリアにこんな砂ないし!値段もお手頃…俺も買おうかな」

「ふふ、星の砂って名前で売ってるんだけどね、それ実はその辺の砂を瓶に詰めたやつなの」

「そうなの!?」

「浅瀬の時だけ現れる砂浜の砂は全部それと同じやつよ。800ダリアで売ってるけど原価はタダみたいなもの。観光客は知らないからその値段で買っちゃうけど、ぶっちゃけちゃうと浅瀬の時に空き瓶に砂詰めれば同じものが手に入るよ」

「はぇ…そうなんだ」


ガレとクロエとルーの三人はクロエの実家のお店に来ていた。クロエの両親は仕事で明日まで不在らしい。


クロエの実家は土産物屋と飲食店を何店舗か営んでいて、その店の土産をいろいろとみせてくれた。


店に並ぶカレトリアの土産物はどれも珍しく衝動的に買ってしまいそうだった。


クロエはとても気さくに土産物のことを解説してくれた。最初はなぜか緊張したけど、クロエはとても話上手で話題が広がった。


「ルーくんは何歳なの?」

「16」

「!じゃあ私と同い年だ」

「そうなんだ。ガレと同じ年なのかと思ってた」

「同い年じゃお店で働けないよ。14じゃ違法だもん」

「確かに」


ルーとクロエはクスクスと笑った。ルーはガレが不法乗船してきたことを思い出してつい笑ってしまった。


ガレは面白くなさそうにケッと悪態をついていたが本気でなく、ルーとクロエが会話してるのをなんとなく嬉しそうにしているようでもあった。


「ルーくんってロストダリアでは何してたの?」

「港の近くの鉱山で働いてたよ」

「鉱山かあ~。私ずっと店の接客してるからなんか想像できないな。炭鉱の仕事ってやっぱり大変なの?」

「そうでもないよ。慣れれば単純作業の繰り返しだし、人間相手の仕事じゃないしね。逆に俺は接客とかしたことないから、クロエはすごいなと思う」

「そうかな?あんまり考えてないけど」

「いろんな人が来ても対応出来るってすごいよ。気を遣うだろうし喋んなきゃいけないし…鉱山は石相手だから話しかける必要ないしね」


クロエとルーはまた笑いあった。

そんなふたりをガレは微笑ましく見ていた。


ルーは笑いながらふとあるコーナーに目を奪われた。目立つところに仕切られた特別はコーナーがある。


そしてそこにはすごく見覚えのある石があった。ネックレスや指輪に加工されているけどルーはこの石を知っている。


「これ、ダリア鉱石?」

「そう。よくわかったね。これってロストダリアでしか取れない石なんでしょ」

「……俺、鉱山にいたときこれを加工する仕事してかも」

「そうなの!?すごいじゃん!」

「はは…毎日イヤというほどみてから…ダリア鉱石ってお土産になってるんだ。初めて知ったよ」


ルーは鉱山にいたときのことを思い出した。


ダリア鉱石はその石の品質によって産業用に使うものと、そうでないものに振り分けられている。


質の高い石は産業用。船や通信機の重要な部品になったり、すごく重要なものに使うそうで値段も高い。だからルーのような末端社員は加工を任されていなかった。


質の低い石は燃料になるならそのまま輸出。燃料にもならない質の石は用途に合わせて加工する。ナイフだったり、鍋などの調理器具だったり。


ルーがやっていたダリア鉱石の加工は質の低いダリア鉱石の加工。けど時折、用途が想像できない謎の形に加工することがあった。


変な文様の形とか。菱形にして不自然に穴を空けたりとか。


当時は何に使うのか謎だったが土産物の品をみて納得がいった。あれはきっと土産物用の石だったんだ。


「俺が作ってたものって最後はカレトリアで売られてたんだなぁ」


ダリア鉱石のアクセサリーを手にとって眺めると、ルーはしみじみした。鉱山の仕事は楽だけど好きな仕事ではなかったし、加工したものが何に使われるかなんて深く考えたことなかったけど、自分の作ったものがこうして誰かの手に渡っていると思うと少し嬉しい。なんだか誇らしい気分だ。


そしてふと、アクセサリーの値札をみた。


7000000D.


ゼロの多さに思考が止まる。


……700万ダリア?


「700万!?!?嘘だろ!?」


ルーは驚きのあまり声をあげた。クロエはルーのリアクションを想定していたのか面白そうに笑った。


ルーはクロエに聞いてみた。


「なんでこんな高いの!?」

「ダリア鉱石が高価だからじゃない?ダイヤモンドのアクセサリーが高いのと同じ理屈よきっと。石が高からアクセサリーも高いんじゃないかな」

「そ、そうなんだ…」


いやでもやっぱり引っかかることがある。ルーはクロエにさらに疑問をぶつけた。


「そうだとしてさ。そもそも、なんでダリア鉱石をカレトリアで売ってるの?」

「なんでって…珍しいものだからじゃない?」

「いや確かにそうかもしれないけどさ。カレトリアにきてロストダリアの鉱石をお土産に買うってなんか変じゃないか?そんな人いるの?」

「ふふふ、わかってないわね。ルー」


クロエはニヤリと笑った。笑い方がなんとなくガレに似てる。


「ここは人気No.1の観光地カレトリア。お客さんはみんな浮かれてテンションが上がってる。カレトリアデザインのアクセサリーですって紹介しとけば誰も石の原産地なんか気にしないし、すごい高い鉱石の加工品が置いてあるだけで物珍しさにお客さんがくる。基本は客寄せの飾り物よ。売れるのを期待して置いてあるわけじゃないの」

「そうなんだ」


力説するクロエにルーはたじろぐと同時に感心した。さすがは観光客相手に商売しているだけのことはある。


「じゃあこれは売れたことはないの?」

「あるわ」

「あるの!?」

「観光地特有のハイテンションを舐めちゃいけないわルー。テンションに任せて必要のないものを買いまくるのは誰でもやること。それはこのダリア鉱石のアクセサリーだって例外じゃない。たーまにだけどね、これ買ってれる人もいる」

「そうなんだ…観光地テンションすごいな」

「ま、買うのはお金持ちセレブなんだろうけど、その場のノリでサクッと買うのよね。ビックリよ」

「信じられない…700万あれば小さい船とか買えるのにサクッと買うんだね…」

「ほんとよ~。実は昨日も一個売れたのよ」

「マジで!?」

「マジよ!700万ダリアの指輪!おかげでうちのお店は儲かったからいいけどお金持ちの考えてることはわからないわ」

「ほんとだね…」

「ふふ、ルーったら。驚いてるけどこれ元はルーが作ってたんでしょ?」

「た、確かに」

「鉱山辞める前に一個くらい貰ってくれば良かったかもね」


クロエはいたずらっぽく笑った。つられてルーも笑った。


「だいぶ打ち解けてんな、お前ら」


笑い合うふたりの後ろでガレがちょっとムスッとしていった。そういえばガレそっちのけで話が盛り上がってしまった。


「ごめん」

「相変わらずヤキモチやきね、ガレは」


ルーは謝りクロエは笑った。

ガレは特に否定しなかった。


「そうだ、ルー。今夜の宿だけど、ウチの宿いま1つ空いてるの。そこに泊まっていかない?戻るの面倒だし今は漁の繁忙期だから港の宿は埋まってるかもしれないし」

「え、でも…」

「いいからいいから!ねっ!泊まってきなよ」


ルーはガレをチラリと見た。ガレは別にどっちでも、というような顔をしていた。


どっちでもいい。


嫌がられるよりも、そういう態度のほうが傷つく。


傷つく?なぜだろう。


俺はガレにとってはいてもいなくても同じなのかもしれない。クロエが側にいる時は。


きっと、そう思ってしまったからだ。


「大丈夫。私とガレは私の家に泊まるから。その…変な遠慮とかはしなくていいよ」


ルーがそう思っているとクロエは顔を赤らめて言った。ルーはその言葉と表情の意味がわからないほど子供ではない。


また、ルーの心の奥底が痛む。

指輪が熱くなっている。

この痛みがガレに伝らないでほしい、

ルーは心の中でそう祈った。


そして返答をした。


「わかったよ。ありがとうクロエ」


クロエは嬉しそうに頷いた。


そのあと、三人で夕食をとった。海老や貝が使われた美味しいカレトリア料理を囲みながら、ルーが初めてガレと出会った話や、不法乗船の話や、リリーやメアとのジーランドでの日々を話した。


クロエは興味深く話を聞き笑った。

ガレもルーもクロエも、三人とも笑いの絶えない楽しい時間だった。


ルーはクロエをみて、初恋の人マリナさんを思い出していることに気がついた。


まだ会ったばかりだけど、クロエは素敵な人だ。もっと違う出会い方をしていたらルーはクロエに恋をしていたかもしれない。


そんな考えと同時に。


ガレにとってルーはクロエの半分にも満たない存在なんだという現実を思い知らされた。


頭では理解していたけど実際に三人で対面してみるとガレとクロエの硬い絆がはっきりとわかる。


ペアの誓いなんかより。セブン・リングスなんかより。もっと強いモノで2人は結ばれている。


二人は愛し合っているんだ。


食事が終わると二人と別れ、案内された宿へ向かった。とても豪華な宿みたいだった。でも、ハシャぐ気持ちは少しだけ。


「じゃあまた明日ね!ルー」

「うん、また明日」


ルーはクロエに手をふった。


「亡霊には気を付けろよ」


別れ際にガレはそう言った。いつもと同じような口調だったが、ルーはなぜかムッとしてしまった。


「……わかってるよ」


わかってるよ、言われなくても。


ルーは心の中でその言葉を繰り返した。


俺じゃなくて、ペアを失う心配をしてるだけだもんな。俺を失えば、お前とクロエとの未来がなくなる。


それを恐れているんだろ?

それだけなんだろ、ガレ


俺たちはきっと普通の友達にはなれない。

それはペアになった日からわかってた。

ペアになれば心の石が交わってしまうから

どう足掻いても友達ではいられない。


相棒とか仲間という表現が一番近いのかもしれないけど、しっくりこない。何か違う。


友達でも相棒でも仲間でもない


俺はガレにとってのなんなのだろう

俺にとってのガレはなんなんだろう


俺とガレは、ペア・リングス

ふたりを繋いでいるのは指輪だけ


俺たちの関係って一体なんなんだ?


そんなことを考えなから1人宿へ歩いた。

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