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セブン・リングス  作者: しおばな
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降りたふたり

アーウィンは地図を見た。


この辺りの海域はロスト海域。潮の流れにはなんの法則性もない。天候や地形とは関係なしに常に巨大な渦潮が大きな1つの輪のように張り巡らされ、ロストダリアとその周辺諸島、ダリア地域を外部からの侵入者を拒むように取り囲んでいる。


ここでは羅針盤も蒸気エンジンも無意味。この海を渡る方法はただ1つ。セブン・リングスの力をもつ者が、その力を解放し海渡りをするしかない。


この船にはエマと熊のベア、

キトラ人のナオマサとシンロン人のユエ、

そしてペア不在のアーウィンが乗船している。


つまり2つのペア・リングスとペアの片割れ…2.5の力で船を動かしているわけだ。


今のところ船の状態は安定している…安定しているはずなんだが……。


「はぁ~」


アーウィンは盛大にため息をついた。


船の下から何やら言い争う声が聞こえる。4人と一匹しか乗ってない船で言い争うやつらは2人しかいない。


アーウィンは憂鬱な気持ちで2人に声をかけた。


「なぁ争いは船降りてからにしようぜ?な?ロストダリアに着いたら好きなだけ言い争えばいいから」


「玖咤易化怒,盧乘輪鉄殺意!!」

「くぁwせdrftgyふじこlp」


アーウィンが止めても二人はそれぞれ自国の言葉で罵り合う。何を喋ってるのか一言も聞き取れない。


アーウィンは諦めてエマの隣に座った。


「はぁ…」

「大丈夫?アーウィン」

「エマ。俺決めたわ。セブン・リングス問題が解決したら世界中旅するってのが夢だったけど東にはいかないことにする」

「東は素敵な地域よ。私たちとは全く違う文化があって面白いのよ。街が大きくて活気もあるし。親切な人も多いしね」

「親切ねぇ…」


アーウィンは呆れながら言い争うナオマサとユエを見下ろした。


「あの二人はセブン・リングスだし事情が特別すぎるのよ」


エマはフォローを入れるように笑った。


「はやくロストダリアについてお兄さんと合流できるといいわね。もう3年くらい会ってないんだっけ?」

「そうだな。兄貴がダリア地域に入ってもうそれくらいになるか」


アーウィンは自らのペアである兄のことを思った。兄はセブン・リングス問題解決のためにこの地に赴きずっと1人で活動をしていた。


そして今回、セブン・リングスが揃ったと連絡を受けてアーウィンが他のリングス達を連れてロストダリアへ向かうことになったのだ。


アーウィンは手紙を広げた。


「兄貴がいま正確にどこにいるかはわかんねえけど最終的に目指す場所は決まってるからな。ロストダリアで合流できるはずだ」

「そうね。残りのペアとも上手く話が纏まればすぐエアルに向かえる。確か…ジーランド島で女の子同士のペアが見つかったんだっけ?」

「ああ。それが6つめ。そのあとロストダリアで7つめが成立したらしい。詳細はわかってないが…そいつらが最後のセブン・リングスだな」


エマとアーウィンが話している間にも下ではギャーギャーと言い争いが続いている。


いい加減頭にきたアーウィンはふたりに怒鳴った。


「おいお前らいい加減にしろ!ここは船の上だぞ!この船の船長は俺だ!これ以上勝手な真似は」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「機奇偏碧黙芯!!!!」

「だから何言ってるかわかんねーよ!!!」


アーウィンはもっと厳しくやらねばと思った。彼らとは対等な立場だがこれ以上この船で争いを続けさせるわけにはいかない。エスカレートして船が壊されたら困る。


「いいかお前ら。お前らは辺境の出身だし、2人とも王子だし、文化も違うし、言語も違うし、多めにみてきたがもう我慢できねえ。今からダリア語以外で喋るの禁止!言い争いも禁止!守れないなら…」

「船を下ろすか?」


アーウィンの言葉を遮るようにナオマサが言った。アーウィンを見上げるその視線は挑発的だ。船から下ろせないことを見透かされている。


「てめぇ…!!!」


アーウィンは怒りの限界だった。そして言ってはいけない一言を言ってしまった。


「ああそーだよ!お前らもう船降りろ!」

「ではそうさせてもらう」

「え?」

「さらば」

「え?え?嘘でしょ?待って待って、ナオマサくん!!!!」


ナオマサはスタスタと船首まで歩き、そこから飛び降りた。船を動かしていたナオマサのリングスの力が減り船はガタガタに揺れる。


「ちょ、本当に降りるやつがあるかぁ!!」


ナオマサが降りた途端に船はグルグルと回転し始める。


「なら私も降りる」

「ユエくん!?」

「私は奴に縛られこの船にいただけだ」

「いやいやいやユエくんまで降りたら転覆しちゃうよこの船!何言ってるの!?」

「…熊と女がいれば大丈夫であろう。渦潮の海峡は越えた」

「いやいやいや越えたけどそういう問題じゃないくて!転覆しないかもだけど!!この船の目的わかってる!?セブン・リングス連れてくことが目的で」


ユエは別れの挨拶もなしにひょいっと船尾から飛び降りた。船はさらに回転する。


「どうしよアーウィン!」

「くっそ!俺達でなんとかするしかない」


エマと熊のベア、アーウィンはリングスの力を使いなんとか船を安定させた。


アーウィン雄叫びがロスト海域に響く。


「おめーら次会ったら覚えてろよ!!!」


さ迷う船は果たして無事ロストダリアにたどり着けるのだろうか。

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