未経験と記憶の流入
「お邪魔します」
「広い家だな」
「パパが研究用に使ってた家だからね。大きいけど部屋は少ない」
「でも立派な家でしょ。そうよね?ルー」
「うん」
リリーの家は天井まで吹き抜けになっていて空がよくみえた。リビングの窓も大きくて海がみえる。海に沈む夕焼けが眩しくてルーは目を細めた。
「まあそこら辺に座ってて」
そういうとリリーは奥の部屋に行ってしまった。メアはガレとルーをリビングのソファに座らせふたりに紅茶を出した。
「変な時間にお昼食べちゃったから夕食はまだいいよね?ルー、ガレ」
「うん」
「リリーまだまだ話しがあるみたいだしあとで夜食にお菓子作るよ。お菓子食べながら話した方が楽しいし」
「ありがとう」
メアはフフっと笑ってルー達の向かいのソファに座った。ルーは一息ついてゆっくり紅茶を飲んだ。ガレは喉が乾いていたのか紅茶をイッキ飲みしていた。
そんなまったりとした時間の中、メアからとんでもない質問がとんできた。
「ねえふたりはもうエッチしたの?」
「ヴッゲホッ…ッ…ッ!!!」
ルーは盛大にむせた。
危うく紅茶を吹き出してしまうところだった。ギリギリのところで踏みとどまり吹き出さずに済んだが。
「な゛っ、なにをいきなりっ」
「ん~。だってペアになったんだしエッチな気分になることあるのかなって」
「エッッ!?な、なにいってんだ!」
「だってふたりは相性がいいんでしょ?たまに相手の心がわかっちゃったりしない?あたしはたまにリリーの心がわかるよ。心に触れてるって感じがする」
「…そ、それはまぁ、あるけど」
「心に触れるなら体にも触れてみたいって思わない?」
「心と体は別だろ!だいたい俺とガレは男同士だしそんなっ」
「あたしとリリーは女同士だけどエッチな気分になるよ?そしたらシちゃうし。それにリングスってジェムスみるとしたくなる人もいるんでしょ。そうよね?ガレ」
ガレはルーとは対照的に冷静そのものだった。むせる素振りもみせず綺麗に紅茶をイッキ飲みし終えてカップを置いた。
ガレはニヤリと笑ってからかうような顔でルーをみた。
「まあな」
「まあなって!!」
ルーは真っ赤になっていた。ガレはルーに息がかかるくらい顔を近付け見つめながら問いかけた。
「今夜シてみるか?俺はいいぜ別に」
「ッッ!!」
ルーはさらに真っ赤になった。
しかし次の瞬間、指輪から流れ込んできたガレの心に一気に熱が引いていった。
流れ込んでくるガレの心。
引き裂かれるような悲痛な痛み…
冷たくて底のない暗闇にいるような…。
ガレはルーを見つめたままポツリと呟いた。
「お前がそれを望むなら」
「えっ…」
ガレの瞳は乾いていた。夢も希望も失ったような眼差し。今までも何度かみたこの眼差し。
でも今日はいつもと違った。見つめられているとルーの頭に知らない女の子の姿がぼんやりと浮かんでくる。
ハッキリと姿はみえない。
白い髪に褐色の肌をした女の子…。
『ガレ』
女の子は優しい声でガレの名前を呼ぶ。
なんだこれ…ガレの記憶?
この女の子は誰だ?
突然のことにルーが混乱していると、ガレは笑ってルーから離れた。
「冗談だ。俺達は相棒としてやってく予定だからな。それにルーは女ともそういう経験なさそうだし」
図星をつかれてさらに顔が赤くなる。 ルーは羞恥心と混乱で腹が立ち、それを紛らわすように反論した。
「なんだよ!別に変なことじゃないだろ!ていうかお前さっきから経験あるような口振りだけど14でそんな…見栄はってるだろ!?」
「どうだろうな」
ガレはまたからかうように笑った。その表情からは余裕が伺える。まさかガレはマジにそういう経験があるのだろうか?確かにガレの容姿ならモテそうだし充分あり得る。
それに、さっき頭に浮かんだ女の子。
あの子はガレのなんなのだろう…。
「やっぱり相性いいのね、ガレとルー。ただの『相棒』じゃもったいない。もっと確かめてみればいいのに」
ルーがいろいろと思案を巡らせているのを他所にメアは無邪気に笑いながら言った。
そんなこんなで喉が乾いてしまって図々しいと思いつつルーは2杯目の紅茶を頼んだ。1杯目をイッキ飲みしたガレはなんの遠慮なく2杯目を頼み、さらにもう一杯頼んだ。
メアはにこやかに紅茶を出してくれた。
そしてふたりが紅茶を飲み終えるころリリーが沢山の資料を抱えてリビングに戻ってきた。




