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宴会③

 ヨシ、俺は最近有料チャンネルで見た昔のバスケットアニメの『世界が終わるときに』という曲を歌うか。

 どうやら俺の声はそのバンドのボーカルの声に似ているらしい。


 「ーーー♪」


 気持ち良く歌い終わった。


 あ…れ…スゴイ静かだけど…

 俺…何かやらかしちゃった…?

 皆ポカンと口を開けてコチラを見ている。

 点数は100点だった。

 俺は普段点数を気にしないので、いつもはまばらな点数だが、今日は丁寧に歌ったので満点だった。

 アイツに勝ったぞ、ざまぁ見ろ。

 そう思っていたら、急に宴会場が割れんばかりの拍手に包まれた。

 オネェ様がゆっくりと近寄って来る。


 「ネェ…何でプロじゃ無いの?

 ホントはオマワリじゃ無くてプロの歌手なの?

 この曲は実は真之の曲なの?」


 何か目が怖い…イッてしまわれている…

 他にも前田さんや高坂さんがゾンビの様に両手を前方に挙げてゆっくり近寄って来ていた。

 何だ?俺の歌には催眠効果でもあったのか?

 んなこたー無いだろ…マジ?

 他の美術さんや音声さんやカメラさんなんかもカラオケ本を俺に突き付けながら、


 「次を入れてくれ、次を聴かせろ…」


 とブツブツ言って来る。

 有希は皆を見ながらアタフタしていた。

 そういえば、俺の歌を有希が初めて聴いた時も急にポンコツになってたな。

 有希はきっと過去に沢山俺の歌を聴いているから耐性があるんだろう。

 前田さんは俺の両肩をガッシリと掴み、


 「私、アンタの事、惚れ直したよ!」


 とか言って来るし…今日が初対面ですよね?

 アレ?なんかデジャヴ。

 高坂さんは俺の右腕に抱き付いて来て、


 「私…あんな素敵な話を聞いた後に遠山さんの歌声を聴いたら…もう何だか色々とガマン出来なくなって…」

 

 『ダメーーーっ!!!キーン』


 有希がマイクを使って大声を出したところ、皆は我に返った。


 「ちょ…ちょっと…

 コレって…真之…

 アタシの一存じゃ決められないけど、アンタ、ドラマのオープニングかエンディング歌ってみない?」


 「えっ?無理無理、俺公務員だから副業は禁止されてるし。」


 「じゃあ、真之がお金を受け取らなければいいんじゃない?

 正体も一切合切全てをシークレットにして。

 ドラマの歌を1度だけ録音したらそれでオシマイにすれば。

 真之が歌ってるって事は会社ぐるみで絶対に秘密にするから。」


 「ちょっと調べさせて。」


 俺はスマホで軽く公務員の副業禁止を調べてみたところ、信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念の義務、営利目的企業の経営・事務の禁止を守って許可を得ればいい、と書いてあった。

 副業として収入を得るなら許可が必要だが、自分の休みで金を貰わず公務員としての信用を失わず仕事で知り得た秘密を守って仕事に影響が出なければ問題無いってワケか…


 「問題無さそう。

 やらせていただきます。」

 


 「マジで!?やったわ!

 このドラマ、もし作れる事になれば、スゴいヒットしそうな予感!」

 


 「但し、いくつかお願いがあります。」


 「えっ…?

 何よ、また改まって…。」


 「ひとつは、俺は自分の休みの日しか活動出来ないので、日程は俺の休みに合わせてください。」


 「モチロンよ、他には?」


 「素人なのにこんな事言って申し訳無いですが、俺が納得して歌える素晴らしい曲を提供してください、自分が歌ってみていい曲だなと思えないと、上手く歌えないんです。」


 「それもモチロンよ、レコード会社を抱き込んで、何人もの作詞作曲家に複数作ってもらって、その中でコレというモノを選びましょう。

 他には?他になければ、今から真之が自分で上手く歌える曲を何曲かカラオケで歌って欲しいの。

 それをサンプルとして録音して持ち帰らせて欲しい。

 うちの会社とレコード会社の人間を納得させるためにね。

 今から真之の時間をアタシにもらえるかしら?」


 「イエス、マム!」


 そういえば、日野は?

 周りの人に日野が何処に行ったか聞いたところ、俺が歌い始めて直ぐに、敵わないと思ったのかマネージャーと部屋まで逃げ帰った様だ。


 有希が自分のスマホを取り出して、


 「お兄ちゃん、録音させて。

 私、ずーっと保存して聴いていたい。」


 「私も!」


 誰かと思ったら、高坂さんだった。


 「あー、別にいいけど、ネットにあげたり正体をバラしたりしないでくれよ?」

 

 「「はーい。」」


 俺はその後5曲くらい歌ったが、皆ライブを見に来た客の様な笑顔で聴いていて、誰も止めてくれない。

 いつまで歌えばいいんだーっ!!

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