宴会②
ドラマ化か…別に誰の実話かバレなければ構わないか…
イヤ、この場合俺はどうでもいいが、有希がどう思うかだな、やはり過去の自身の話を曝されたくは無いだろう…
どうする…
「有希、ちょっといいか?」
俺は有希を廊下に呼び出すと、
「ゴメンな、何だかヘンな方に話が進んでしまっている。
俺達の事っていうのがバレなければ俺は大丈夫だが、有希はどうだ?
過去を曝されていい気はしないと思うから…
この話、断ろうか?」
「うーん…そうだね…
私としては、お兄ちゃんとの2人の物語がドラマ化されるって、一生の思い出になるからそれはそれで嬉しいんだけど…
もし私だって事が周りに判っちゃった時にはちょっとキツいかな…
特にお父さんとお母さんが出て来る所はカットして欲しい…
逆に言えば、そこだけカットしてくれればドラマ化を考えてもいいかも。」
「そうだな、そういう話に持って行こう。
後は婆さんに確認してくれるか?
有希はまだ未成年だからな、一応婆さんの意見を聞いてみてくれ。」
「うん、電話してみるね。」
…結果、婆さんも同意見で、有希の両親の部分と俺の警察官という部分を普通の会社員としてくれるならば考えてもいい、との見解になった。婆さんも俺達のラブストーリーは気になっていた様だ、ドラマでやってくれるなら見てみたいらしい。
俺はこの話をそのままオネェ様と前田さんに伝えた。
するとオネェ様方は、有希の両親の部分は有希の精神衛生上カットでいいが、出来れば俺の警察官の部分は物語が面白くなるのでそのまま使いたいとの事。
俺が体験した本当にあった事件じゃ無ければ情報漏洩にならないから、そこは創作にしてもらえればいいんじゃないかという話になり、概ねそれで双方納得した。
ならば始めから全て創作という事にすればいいのでは、と伝えたが、そこはやはり実話とすれば話題性が違うという事らしい。
そこで俺は報酬として、もしドラマ化が本格的に始動した際は、有希に謝礼か今後芸能界若しくはテレビ局等の就職の際の口利きをオネェ様にお願いした。
有希は別に芸能界やテレビ局に興味があるワケでは無さそうだが、いつ気が変わるかなんて分からないからな。
オネェ様はその内容で快諾してくれた。
ドラマが本当に作られると制作会議で決まったら、後日契約書の様なものを書いて書面に残す事になった。
誰の実話かは誰にも漏らさない、実話の部分は許可無しに勝手に改ざんしない、とかな。
後で言った言わないの話になるからな。
俺も過去の話だが、書面無しで先輩に30万貸したら、そんな金は借りてない、証拠はあるのか、とバックレられて返って来なかった事がある。
アレは先輩だけに、精神的に来るモノがあった。
やはり書面には残しておくべきだ。
そこで急に高坂さんが手を挙げた。
「ハイ!田島姉様、私、有希ちゃんの役をやりたい!」
「まぁプロデューサーに話はしておくわ、こんなステキな話を聞いたら演りたくなっちゃうものね。」
「ドラマ化するっていう事は、主人公もどうせイケメンにするんだろ?
そうじゃないと誰もテレビ見ないもんな。」
「ソコはまたドラマを作る事になったら制作会議で意見を出してみるわ、過去にブサメンが大ヒットしたドラマがあるし。知ってる?
1000回目のプロポーズって。」
「あー、昔のドラマ特集とかでなんとなく。
俺の見た目もあんな感じなの?」
「あー…真之の方が若いから、まだいい方ね。」
「俺は若さしか勝ってねーのか(泣)
でも俺は武田のテッちゃん好きだぞ。」
「イケメンで撮る時は俺がお前の役を演ってやるよ。」
突然俺達の話に日野が割り込んできた。
さっきから会話に入りたそうに付近をウロウロしてたのは知っていたが俺は無視していた。
「オマエはコッチからお断りだ。」
「何故だ!この俺が演ってやるというのに!」
「オマエ、撮影現場の時から俺の事邪険に扱ってたよな。
さっき風呂場でだって、『もう2度と会う事はあるまい、ではな。』とか言ってたじゃねーか。
プライドってモンが無いのか、プライドってモンが。」
「プッ! カッコ悪っ。」
あーぁ、高坂さんにハッキリ言われちゃったよ…ダメ押しだな…。
「しょっ…勝負だ!
俺はバンドでボーカルもやっている!
丁度そこにカラオケがあるから、カラオケの点数で俺が勝ったら俺をそのドラマの主役にしろ!」
「イヤだよ。
自分の得意分野で相手に無理矢理勝負させて、それで勝って嬉しいですか?
それに俺にそんな決定権あるワケ無いじゃん。子供か。」
「何だとっ!」
「マァマァ、これも涼真ちゃんのコミュニケーションの1つなのよ、相手してやって。」
そんな遣り取りの後、日野は何だか聴いたことの無い曲を歌っていた。
どうやら自分のバンドの曲らしいが、また聴きたいとは思えない。
まばらな拍手が起こり、点数は89点だった。
自分の曲なのにビミョーだな…。




