決戦⑦ 菅野まや
有希は俺がさっき背後から抱き付いたからか、顔が真っ赤だ。
そして自分を指差して、
「可愛い…婚約者…?」
俺はもう思っていた事を心に秘めておく必要は無くなったので、ハッキリ言ってやる。
「あぁ、可愛いよ。」
すると有希は俺に近寄って来て、俺の胸に顔を埋める。
照れ隠しかな、可愛い。
頭を撫でてやる。
「俺も女の子と付き合うのは初めてだから、距離感というか、何をしたら何処までが許されて、何処までが許されないとかよく判らないから、俺が何かしようとした時にイヤだったらイヤって言ってくれ。」
そう言いながら俺は有希にそっと抱き付く。
有希も俺の背中に手を回し、
「イヤな訳、無い…。
ちょっと恥ずかしかっただけ。
お兄ちゃん…嬉しいよ…。
あー、何か私、動揺したり感情の起伏があると真之さんじゃなくて、お兄ちゃんって言っちゃうね。」
「婚約者である事に変わりは無いから、有希の好きに呼んでくれ。
あと、さっき車の中のキスの画像を消したいって言ってたけど、どういう事?」
「えっ、お兄ちゃんはもう見ちゃったんだよね?
私が寝てるお兄ちゃんに…キッ…キスした画像。」
「えーっ!?マジで!?
そんなお宝映像あるの?
山梨の時?
探さなきゃ!永久保存や!」
「見ちゃダメーっ!
私が消すって言ったでしょっ!
って、何で知らないの?
画像はもう見たんじゃないの?」
「えーっ?知らないよ?
有希の作り話かと思ってた。
じゃあその画像を見ない代わりに、同じ事してみて?」
有希は耳まで真っ赤になって、ポカポカと俺の胸を叩いて来る。
俺が画像はもう上書きされて消えてるかも、とか言ったら物凄く怒られそうだから、黙っていよう。
私は公園を背に歩いていると、涙が流れている事に気付いた。
「あれ…涙が…
まだ付き合ってもないのに泣くって、私どれだけ本気なんだか…。」
あー、先輩と付き合えたら、凄く楽しくて幸せな日々が過ごせただろうなぁー…
あんな素敵な人、私の前にまた現れるだろうか…
いや、まだ諦めない。
独り想ってる分には先輩に迷惑掛けないからいいよね、私も好きな人が出来たらグイグイ行くクセを直さなきゃ。
婚約者がいるからって、焦り過ぎたかも。
片山さんにも悪い事したな…
でも結婚する前なら、まだ私にもチャンスはある。
もし片山さんと上手くいってなかったら、またアタックしよう。
今度は可愛く、お淑やかに。
暫く自分を見つめ直そう。
今度こそ、私を好きになってもらえる様に。




