決戦⑥
「オマエ、俺の事をワザと惚れさせて貶めてやろうっていう罰ゲーム的な事をさせられてるんじゃないか?
ヤケに俺の個人情報とか先輩方から聞いてるみたいだし。」
「先輩、私を見縊らないでください!
私は自分の意思で好きなものは好きって言います。
それに社会人にもなって、そんな事する訳無いでしょう。」
「…俺、オマエに好きとか付き合ってくれとか言われた事無いんだけど…
やっぱり俺の事を騙してるんじゃ…?」
「えーっ、と…
そうでしたっけ?
記憶にございません…テヘッ。
とにかく、私は先輩の事を諦めませんから!」
ここまで黙って聞いていた有希が両手を大きく広げて俺と菅野の間に立ち塞がり、涙目になりながら菅野に向かって、
「ダメーっ!!
私はもうお兄ちゃんの家に一緒に住むんだからーっ!
もう来ちゃダメーっ!」
「…先輩の家に行かなければそれ以外は何をしてもいいの?」
「それ以外もダメーっ!」
「…プッ…。
貴女、可愛いわね…
ホント、敵わないわ…。
解った、じゃあこうしましょう。
私は暫く貴女達の事を静観します。
でも貴女達の仲が上手くいかなかったり、暫く待っても私の前にいい男が現れない場合は、また先輩に付き纏うわよ。
それでどう?」
有希は猫の様に、フーッ…と菅野を威嚇しながら考えている。
「コラコラ、勝手に自分の都合のいい方向に持って行くのは止めてくれ。」
俺はそう言いながら有希の背後に回り、ソッと覆い被さる様に抱き付いて、
「もうこれ以上有希をイジメないでくれよ、俺の可愛い婚約者なんだから。
モテない俺に女の子が好意を寄せてくれるのはスゴく有り難いんだが、俺は有希が好きなんだ。
もう俺の事は諦めてくれ。」
「先輩、顔を真っ赤にして何こっぱずかしい台詞を吐いてるんですか。
そんなのはイケメンが使う言葉ですよ、先輩には似合いません。」
俺は真っ赤になった顔を両手で隠しイヤイヤをしながら、
「俺だって、こんなセリフ死ぬまでに1度は言ってみたかったんだよ、似合わないだなんて、そんなこたぁー俺が1番解っとるわっ!
ブサイクにだって、人権はあるんだ!
もう、帰れ!アッチ行け!」
「あーっはっはっはっはっはっ!」
菅野が腹を抱えて涙を流しながら大笑いしている。
暫くして、
「あっ…貴方達、子供染みていて、とってもお似合いね、お腹がよじれそう…。
初々しいカップルの誕生ね、これからは貴方達の行く末を、比較的近くから生温かい目で見守っていてあげるわ。
…じゃあ、先輩…また。」
そう言い残して菅野は立ち去った。
アイツとは職場が一緒だからな、会いたくなくても仕方ない。




