ちよこれいと
「あの…お兄ちゃんのお父さんとお母さんの事を聞いてもいい…?」
「あぁ、いいよ。
何が聞きたいの?」
「どんな人だった?
どうして亡くなったの?」
「そうだな…。
父親は山形出身で上京して有名な会社に勤めていた。
結構厳しい人だったな、よく拳骨を喰らった。
俺の顔は父親似だよ。
母親は東京出身で、まぁ優しかったかな、怒ると怖いけど。
2人は同じ職場で、恋愛結婚したみたい。
2人とも趣味でダンスをやっていたんだけど、指導者の資格を持っていて、ボランティアで土日に老人に教えていて。
2人供、家に殆ど居なかったな。
土日は家で独りでテレビを見ながらご飯を食べていた。
ご飯が無い時はお金が置いてあってね、小学生なのにラーメンを独りで食べに行く様な子供だったな。
小学生でパスタとかも独りで茹でて食べてた。
誕生日とかもあんまり祝って貰った覚えは無いかな、いつもより多くお金が置いてあって、好きな物買いなさい、みたいな感じだった。
俺が社会人になってから父親が脳内出血で倒れて手術して、命は助かったけど言語障害になって。
俺はその時寮に入ってたんだけど、介護があるからって実家に戻って俺が病院によく連れて行ってた。
病院の先生と会話がうまく出来ないんだ、筆談もうまく出来なくてね、通訳じゃないけど何となく父親の言いたい事が解る時は代わりに喋って。
その後今度は母親が子宮ガンになって、子宮摘出手術をした翌日に病院内で脳内出血になって。
手術時のリスクとして言われていた事ではあったんだけど、まさか本当になるとは思っていなくて。
その病院には脳外科が無くて、転院したけど間に合わなくてそのまま脳死認定。
今日死ぬか、1年後に死ぬか判らないと医者に言われたけど、その11日後に死んだ。
父親もその後更に肝臓ガンになって。
発覚した時には既に末期で、余命半年って言われたんだけど、3ヶ月で死んだ。
そして俺は今、独りで暮らしてる。
…そんな感じかな。」
「…お兄ちゃんも色々大変だったんだね…。」
「まぁ、有希程では無いけど、それなりに。」
「今度遊びに行っていい?」
「えーっ!!っと…
どうだろう…
俺はいいけど、婆さんは駄目って言うんじゃないかな。」
「そうかな、じゃあ聞いてみる。」
「…寒いし、そろそろ帰ろうか。」
「うん、その前にお兄ちゃん、車の鍵開いてる?」
「今開けるね、はい。」
「ちょっと待ってて。」
有希は車の中に置いてあったバッグの中から包装紙に包まれてリボンの付いた箱を取り出して、俺に差し出した。
「バレンタイン過ぎちゃったけど、チョコレート。
お兄ちゃんと出逢ったこの場所で渡そうと思って。
私もお兄ちゃんと出逢えて、本当に良かった。
助けてくれて、ありがとう。」
…人生初の、女の子からの、ちよこれいとといふもの…
チョコレートが俺に向かって両手で差し出されている。
「えっ…これは現実?
ちょっと両手でほっぺた掴んでくれる?」
俺はチョコレートを受け取りながら頬を差し出した。
「えっ…いいけど…」
「じゃんけんブルドックって知ってる?
タテタテヨコヨコまるかいてチョン、て引っ張ってくれる?」
「あー、懐かしいねー。
タテタテヨコヨコまるかいてwww」
「いっ…痛い…現実だ、夢じゃない…
ありがとう、一生大事にするから!
もう二度と貰えないかもしれないから、何処かに飾っておかないと…」
「食べ物だから、一生大事にしなくていいからw
何度でもまた作るから、食べて。
あー、面白かったw」
「手作りなんだ、やっぱり一生大事に…」
「www」
そして俺達は片山家に帰った。




