俺は何もしていない
有希はキッチンで唐揚げを2度揚げしていた。
「温かい方がいいでしょー、ちょっとだけ待ってね。」
えー子やなぁー。
今日は大量の唐揚げ、アジフライ、ひじきと人参と豆腐の煮付け、サラダ、大根の味噌汁だ。
スゴイなー、どんだけレパートリーあるんだろ。
「美味いっ!
この唐揚げ、外側はカリカリしてるのに中はジュワッと肉汁が溢れて来る!
ニンニクも効いててよく醤油ダレに浸かってる。
アジフライもフワッフワだ、本当に料理上手だね!」
「そうかな、ありがとう。」
ポッと耳が赤くなる有希。
ここで、いいお嫁さんになれるね、とか普通言いそうだけど、今のご時世セクハラとか言われ兼ねないからな。
あれは本当に理不尽だ、格好いいイケメンから何か言われたりされてもセクハラにならないのに、ブサイクな俺みたいのが何か言ったものなら、鬼の首を取ったみたいにセクハラ扱いされる。
電車内だっていつも緊張する、女性が近寄って来たら、必ず両手をつり革に上げる。
痴漢に間違われないためだ、もし痴漢された女性が後ろを振り返った時にイケメンとブサイクがいたら、絶対にブサイクが疑われるからだ。
警察官は犯罪を犯しても冤罪でも捕まって起訴されたらクビになるから、こちらも全力で疑われる事の無い様に注意を払わねばならない。
イヤな世の中だよなー、全然ブサイクに優しくない。
婆さんは俺の買って来た酒を美味そうに飲んでいる。
酒を一升瓶から地炉利という冷やして飲めるガラス製容器に移し替えている様だ。
相当酒が好きなんだろう、家にあんな容器は無い。
次があればだが、次は焼酎でも買って来ようか。
では食べ終えたところで、片付けを手伝って少しマッタリしますか、行くのが早すぎて人がいたら困るからな、駐車場に寝っ転がるのに。
…ソファーに座っていたら寝てしまった様だ、夜中になっていた。
毛布が掛かってる、有希が掛けてくれたのかな…
待たせて悪い事をした、何処にいるかな隣に居たー!!
……寝てる……
同じ毛布を半分使ってたみたい。
睫毛が長いなー、爪楊枝が乗っかりそう。
…可愛い…ずっと見てられるな…
爪楊枝とか、俺は変態か。
見付かると不味いが、どうやって起こしたものか…
パチッ!
目が開いた。
…目と目が合った…。
「俺は何もしてないよ!」
「…うん、解ってる。
大丈夫だよ。」
「ごめん寝ちゃって。
これから行ける?」
「うん、寒いよね…。」
「暖かい格好してってね、膝掛け毛布しか無いから。」
「はーい。」
有希はそう返事をして自室に向かったが、顔が紅色に染まっていた。
「…寝顔…
見られちゃった…。」
それから俺達は玄関で待ち合わせして外に出た。
寒い!




