おかえり。
金曜日の夜。
この俺が…初デートかー…
俺の人生に、まさかデート出来る日が来るとは…
でもまぁそうは言っても俺はこのまま30歳で魔法使いになり、その後大魔道士とか大賢者とかになって人生を終えると思うし、彼女もデートとは思ってないだろう。
あんまり意識しない様にしないと。
そして俺は彼女を何処に連れて行くかを考えながら車を走らせた。
1、今日の夜に大涌谷に星を
見に行く。
明日は湖畔でブラブラす
る。
2、明日箱根全域で行きたい
所に行く。
3、明日御殿場のショッピン
グモールに買い物に行く。
4、今日の夜か明日何処かド
ライブに遠出する。
取り敢えず1と言われた時のためにキャンプ用マットと、いつも車に積んである仮眠時に被る膝掛け毛布が2枚あるので大丈夫だろう。
何で2枚あるのかというと、夜中に爆走するとどうしても眠たくなる時があるんだよ、もう1枚は友人のためだ、残念ながら…。
片山家に着いたのでピンポンして門を開けてもらって入る。
婆さんの出迎えだ。
「お主、もっと早く来れんのか、少し遅いぞ。」
「今日は夜勤明けなんだから寝てからじゃねーと居眠り運転で事故っちまうわ、そんな事言うと酒やらんぞ。」
「おぉ、それを待っとったんじゃ、早よぅ。」
「やっぱり…これは宿泊代だ。」
俺は1本の緑色の一升瓶を婆さんに渡した。
これは東京のとある場所で造っている地酒、『奥の神』だ。
このシリーズで俺が1番好きなのが純米吟醸生だ。
俺が住んでいる多摩市には日本中から美味い地酒を集めて売っている有名な店があり、この酒もその店で手に入る。
本当はこの酒はこの時期もう売り切れているのだが、俺の冷蔵庫に寝かしていた奴を持って来た。
「生酒だから冷やした方が美味いと思うけど、地炉利とかあんの?
冬だから寒いかも知れないけど。
もう飲みたいんだろう?」
「あぁ、ある。
唐揚げも出来とるぞ、有希も待っておる。」
「お邪魔します。」
「ただいまでええわぃ。」
「…ただいま。」
「お帰り、真之。」
…くっ、まさかの婆さんからの名前呼び…だ…と…。
仕方ねえ、我慢してやるぜ…。
何か俺も本当の婆さんの様な気がしてきた(笑)
俺の本当の爺さん婆さんは既に全員他界している。
そう考えると俺ってほぼ親戚いないのな、今更だが…。
婆さんは先に酒を持って家に入っていったが、代わりに彼女が出て来た。
「おかえり。」
あぁ、聞いてたのね。
「…ただいま、有希ちゃん。」
「何か、ちゃんが付くと小さな子供扱いされてるみたいだから、有希って呼んで。
あと私も遠山さんって呼ぶの止めるね、代わりに何て呼ぼうかな…
…お兄ちゃん?」
…ふぉぉぉぉーーっ!!
おにぃーちゅわーーんっ!!
……ハッ…!
何て破壊力のある言葉だ、今何か禁断の扉が開きかけた気がする…
でもイヤ、待てよ、お兄ちゃん呼びが確定すると、最早お兄ちゃんから抜け出せなくてそのまま親族と同列に考えられてしまう…
しかし真之と名前呼びも恥ずかしいな、呼ばれ慣れないし…
どっちがいいんだろう…
うーん…
「真之さん?」
「はいっ!」
「どうしたの?
呼び方どっちがいいかな?」
「…任せるよ。」
「じゃあ、取り敢えずお兄ちゃんで。」
「…はーい。」
嬉しいんだか哀しいんだか…
まぁいいか。




