お誘い
2月に入った。
あの時またね、とは言ったものの、俺はあれは社交辞令だと思っていたので、勿論自分からご飯食べに行きたいなんて一言も言い出してはいない。
いつもの生活に戻っただけだ。
ウチの会社は…
あー、会社と使うのは、外で会話をしている時に警察官とバレない様に使う隠語だ。
ウチの会社は仕事中は携帯電話を取り上げられている。
調べ物がある時はスマホがないと本当に困る。
交番に道を聞きに来る人は、自分の行きたい場所なのに調べて来ない事が多い。
この間もオッサンが、
「この辺で美味しいパン屋さんがあるってテレビでやってたんだけど、知らない?」
「さぁ…そのテレビ見てないですし、制服でこの辺の店とか食べ歩きとか出来ないんで。
番地が判ればお教え出来ますが。」
「何だよ、交番に行けば判ると思ったのに!
使えねぇなぁ!」
えぇー…自分の行きたい店も調べて来ない人に言われたくない…。
しかも何とか調べられたと思ったら、実は隣街だったというオチ。
隣街のパン屋の味まで判るハズ無いわー。
仕事が終わってスマホの電源を入れるとSNSのトークに着信があった。
有『唐揚げ作り過ぎちゃったんで来てください。』
遠『今から!?』
有『嘘ですw
次はいつ来れますか?
何作りましょう。』
遠『じゃあ唐揚げで…。』
有『じゃあ今から来てください。』
遠『今日は本当に唐揚げだったんだ。』
有『嘘ですw』
遠『絶対俺で遊んでるよね!?』
有『だって友達いないんだモンw』
うっ…それを言われるとな…
遠『じゃあ次の金曜日の夜に行くよ。』
有『やった、じゃあ何処かに遊びに連れてってください。』
遠『えー…それって土曜日って事?
何処に行きたいの?』
有『何処でもいいけど、そのスポーツカーに乗ってみたい。』
遠『足周りが硬くて脳みそシャッフルされるからオススメしないよ?』
有『よく解らないけどオモシロそうw』
遠『遊園地のアトラクションじゃないからね(笑)』
イヤ、でも考え様によってはアトラクションかも…
そういう走りをするには春になってタイヤをノーマルにしてからでないと。
以前冬の山中湖に行った時、夜中に気温がマイナス15℃になり道路が凍結していてスタッドレスタイヤを履いていてもスリップしてカーブを曲がりきれず、危うく事故るところだったからな。
遠『じゃあいくつかプランを考えておくよ。』
有『うん、楽しみ。
あとお婆ちゃんが、お主のオススメの酒があれば買って来てくれ、って。』
遠『了解、じゃあ金曜日に。』
有『はーい、唐揚げ沢山作って待ってるね。』
ふむ…ハッ……!?
はわわわわわわっ…!!
これって、俺の初デートじゃね!?




