学園祭⑩
調理実習室に行って有希に声を掛けると、あと1時間くらい待ってくれとの事だったので、時間を潰しに校内をブラついた。
俺は有希より食べる量が多いから、先に少し食べておこうかな…
中庭に出ていた屋台のたこ焼きを1つ注文する。
8個で1パックらしい。
代金を支払う時、生徒が
「…殿…4個オマケしておきました…どうぞ。」
と小声で12個入りのたこ焼きを渡して来たので、
「おっ…おぉ、ありがとう。」
と受け取った、多分有希ファンクラブの会員だな。
付近にあったベンチで座って食べる。
ふむ、なかなか美味い。
次は飲み物を探そう。
周りを見回すと、たこ焼き屋の直近にタピオカの店があったので、あまり飲み慣れないがタピオカミルクティーでも飲んでみようか。
Mサイズを1つ注文すると、代金を支払う時、生徒が
「…殿…タピオカ増量しておきました…どうぞ。」
と小声でタピオカがたっぷり入ったカップを渡して来たので、
「おっ…おぉ、ありがとう。」
と受け取った、またもや有希ファンクラブの会員だな。
…たこ焼き屋と同じ子じゃ無いよね?
しかし、タピオカすげー量だな…
ひかりよ、俺は邪険に扱うなと言っただけで、サービスしろと言った覚えは無いのだが…
なんか俺、みかじめ料を取って回ってるヤクザみたいに悪目立ちしてんじゃね?
アイツうちの店に来やがったよ、手配書にあったヤツじゃん!みたいな…。
…もう独りで店を回るのは止めよう…。
時間になったので、有希を迎えに行く。
調理実習室からエプロンを外しながら出て来る有希に、
「ちょっと待った!
エプロンをしてる写真撮らせて。」
と再度エプロンをした有希の写真を撮る。
はにかんだ笑顔、可愛い。
エプロンを有希の教室のロッカーまで仕舞いに行くと、行列に並んでいる生徒から
「有希せんぱーい。」
「お姉さまー。」
と声が掛けられ手が振られると有希は手を振り返す。
「キャーッ!」
と黄色い声が帰って来る。
本当にスゴい人気だな…
アイドルみたい。
こりゃ学校内で有希とイチャイチャしていられないぞ…
ファンクラブ会員に殺されてしまう…。
教室から離れたところで有希に話し掛ける。
「そろそろお昼だけど、何か食べたい物はある?」
「えーっとね、家ではあまり食べられない物が食べたい、たこ焼きとか。」
「た…たこ焼きか、よし行こう。」
俺は中庭のたこ焼き屋まで真っ直ぐ案内する。
「お兄ちゃん凄いね、場所知ってたんだ。」
「えっ?うっ、うん。
たこ焼き2つください。」
「姫…姫が私の作ったたこ焼きを召し上がってくださる…
うぅっ…殿…姫を連れてきてくださって、ありがとうございます…
一生の思い出になります…。」
「泣くな泣くな、まぁ…なんだ、良かったな。」
何か視線を感じる…うっ…!
直近のタピオカ屋からさっきの生徒がコチラを恨めしそうにガン見しているっ…!
…解った解った、さっきのサービスのお礼だ、そっちにも行ってやるよ。
「有希、飲み物はタピオカでもいいか?
俺、タピオカ飲みたい。」
「えっ?うん、いいよ。」
俺は有希をタピオカ屋まで誘導すると、たこ焼き屋の生徒と似ているタピオカ屋の生徒に注文をする。
「タピオカミルクティー2つください…増量無しで…。」
「姫…姫が私の作ったタピオカを召し上がってくださる…
ううっ…(以下同文)。」
「泣くな泣くな、まぁ…なんだ、良かったな。」
んー?言っている事が商品名以外一言一句同じって、君達双子?双子なの?
たこ焼きのパックを開けたところ、ひとパック12個くらい入ってた、もうサービスはいいのに…。
有希は美味しそうにたこ焼きを食べていた。
この後、有希ファンクラブのグループトークではウワサが流れ始める。
『殿にサービスすれば、シアワセが訪れる』
と…。
そして事情を知らない会員達はこうも思うのであった、
サービスとはなんぞや、
と…。




