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1話 たき火の怪

突然の告白だが・・・


俺は子供の頃から俗に言う『見える』体質だ。


『何が?』って?


そりゃあ、アレに決まってる。


所謂『幽霊』ってモノにだ。

ん?人達った言った方が良いかな?


要するに霊感があるのだ。


でも全部が全部見える訳じゃない。


(たま)に見えちゃったりするのだ。


だから、例えば墓地の前を通りかかっても基本的には何も見えないし、なんて事は無い。


けれど、調子が良い時、いや、悪い時か・・・とにかく何かの巡り合わせがピッタリとハマる時には・・・『見える』のだ。


しかも、ただ『見える』だけじゃない。


『遭遇』するのだ。


ただ見えるだけなら、知らんぷりしておけば別にどうと言う事は無いだろう。

そのうち慣れるし。


けれど、俺はとにかく『遭遇』する。


つまり、向こうとの接触が多いのだ。霊な方から来る時もあれば、偶然関わってしまう時もある。


そして、まるで宝くじが連続で当たったかのように、そういうシチュエーションに良く『遭遇』してしまうのだ。


それが偶然なのか、俺には分からない。


しかし、まるで名探偵の行く先々で何故か殺人事件が起きてしまうかのような・・・そんな有り得ない確率で遭遇してしまう異様さは理解している。


以前、友達が『芸能人に会ったぜ!』と自慢して来た事があった。

けれど、詳しく聞いてみると、会ったのでは無く、ただ『遠くから見かけた』だけだった。


「それって『会った』じゃなくて『見た』だろ?」


友達にはそう突っ込んだが、俺と幽霊との関係はまさにその逆だった。


幽霊を『見た』じゃなくて『会った』、つまり『遭遇』なのだ。


友達の自慢話は、『見た』って所で完結した。

そりゃそうだ。


ただ『見た』だけなら、話はそこで終了なのだ。


けれど『遭遇』なら、そこから話が始まってしまう。


遭遇してどうなったのか?


つまり、『怪談』が始まるのだ。


俺が初めて『彼ら』に遭遇した話をしよう。


まだ小学校に入る前の出来事だ。


俺の家はごく普通のどこにでもある一軒家だった。

適度な田舎で、近くに山あり、川あり、田んぼもあった。


当然、空き地も多くて、俺は良く近所の子供達と空き地で遊んでいた。


その頃はまだ小学校へ入る前だったので、近所の子供は年上の小学生が殆どだった。


ある日、小学校で育てていたサツマイモの収穫があったらしく、近所の子達が貰ってきたサツマイモを持ち寄って『焼き芋をしよう!』って事になった。


俺も参加したが、サツマイモを持って無いし、ただみんなが準備するのを見ていただけだった。


宅地予定で雑草が綺麗に刈り取られた空き地で、たき火が始まった。


今考えると『人が家を建てる場所で何やってんだ!』って話だが、子供がそんな事を気にする訳がない。


空き地は遊び場なのだ。


誰かが枯葉の山にサツマイモを埋めて火をつけた。


火はメラメラと燃え上がり、その熱気がモワッと俺の顔を包み込む。


すると、

1人の子供(と言っても俺の方が小さいが)が、1匹の大きなトノサマバッタを捕まえて来た。


確か11月頃だった。


その時は何も思わなかったが、後々考えてみると、よくそんな季節にトノサマバッタが居たものだ。


みんなのテンションは上がった。

だって集まっているのは男子ばかりだったから。


自然と、


「すげえ!」


とか


「大きい!」


とか、ちょっとした騒ぎになった。


それ程、大きくて立派なトノサマバッタだったのだ。


俺はてっきり、その子が飼うものだと思っていた。


子供ってのはそんなものだ。

珍しい物を捕まえたなら、素直に逃がしてやる程甘くはない。


しかし、その子はどういう訳か、いきなりそのバッタを、たき火の中に放り込んだのだ。


「え?」


俺はあまりの事にただ見ているだけしか出来なかった。


周りの子もそうだ。

みんな一瞬、固まっていた。


『なにやってんだよ!』

口には出さなかったが、みんなもドン引きしたのが分かった。


すると次の瞬間、


「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」


凄まじい絶叫が上がったのだ。


声の出所は・・・たき火の中だった。


そのあまりの異様さに猛烈に恐怖を掻き立てられ、俺は尻餅をついてしまった。


周囲の子も驚いてはいた。

けれど、俺の驚きと比べるとかなりリアクションが薄い。


「うわぁ」


「かわいそう」


そんな事を言っている。


・・・え?みんな反応薄すぎない?


今の絶叫・・・あれって・・・


人間の声だよね?


明らかに人間の絶叫、しかも、女性の金切り声だった。


いくら俺が小さな子供と言っても、人間の声かそうでないかくらい聞き分けられる。


その声は、人間の本能の叫び、つまり、断末魔の声みたいに聞こえた。


当然、俺はみんなに確認した。


すると、どうやらみんなには、


「ギギギギ・・・」


という、虫の声しか聞こえなかったようなのだ。


そして俺は、


「あははは!ビビりすぎだよ!」


そう言って笑われた。


俺は混乱して頭が真っ白だった。


・・・あの声は一体何だったのか?


やがてたき火は終わり、みんなで火を消した。


俺は怖くて見る気がしなかったが、バッタは跡形も見つからなかったらしい。


そして焼け跡から取り出したサツマイモは、見事な焼き芋になっていた。


みんなその場で皮を剥き、半分に割ってホクホクしながら食べ始めた。


・・・美味しそう!


既にさっきの出来事は記憶の片隅へと追いやられていた。


俺はサツマイモを1つだけ分けてもらった。


・・・やった!


俺は嬉しくて、貰った芋を早速、半分に割った。


次の瞬間・・・


「・・・・・・・・!!」


俺は息を飲んだ。


割れた芋の断面が、真っ赤に染まっていたのだ。


その色はまるで『血』そのもののように見えた。


そして(したた)った血が一滴、ポトリと落ちた。


その瞬間、


「ぎゃあああああああああ!!!」


俺は思わず叫んでいた。

そして驚きと恐怖で再び尻餅をついてしまったのだった。


「どうした?!大丈夫か!!」


みんなは驚いて起こしてくれたが、


俺は芋の血を見せようとしたが、その時には既に血は跡形もなく消えていて、ごく普通の焼き芋いもの断片に戻っていた。


勿論、その芋を食べる事なんてとても出来なかった。


そして家に帰って靴を脱いだ時、あの時にポトリと落ちた一滴の雫が、靴の上に落ちているのを発見した。


真っ白の靴に、真っ赤な丸い点がハッキリと・・・


そんな体験だ。


あれは果たして何だったのだろうか?


不思議な体験がこれだけならば、小さい頃の出来事でもあるし、スッカリ忘れ去っていただろう。


しかし、これを境に俺は不思議な出来事と度々『遭遇』するようになるのだ。


・・・そりゃ嫌でも忘れられなくなるに決まってる。

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