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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 第五章 胸糞・・・胸糞・・・クソ!クソ!クソ!

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凋落のエメラルダ(9)

 その頃――

 第六の門外にある駐屯地では、カリアが数人の男たちに連れられ、地下の食料貯蔵庫へと押し込められていた。


 壁の上部に穿たれた、わずかな換気孔。

 そこから吹き込む風だけが、かろうじて外界との繋がりを保っている。

 部屋は薄暗く、湿り気を帯びた空気が淀み、施錠された空間はもはや逃げ場など存在しない。


 荒く混じる男たちの呼吸。

 鼻を突くのは、酒の匂いと、汗と、そして生々しい体液の臭い。

 閉ざされた空間に充満したそれらすべてが、カリアの喉を静かに締めつけていた。


 カリアやアルテラをはじめとする緑女(りょくめ)たちは、総じて容姿に恵まれた者が多かった。

 緑を帯びた髪という異形性さえなければ、人目を引く美貌の持ち主ばかりである。


 本来であれば、その「緑の髪」こそが忌避の対象だった。

 だからこそ、人魔症を恐れる者たちは、進んで緑女に近づこうとはしない。

 しかし、その常識は今、この駐屯地において崩れ果てていた。


 先の魔人騎士ガメル襲来。

 その爪痕は深く、数か月を経た今もなお、人魔症の治療が続けられている状況だ。


 本来、人魔症の治療は高価なものであり、神民にのみ施されるものである。

 だが、エメラルダの命により、この第六では奴隷兵に至るまで治療が施されることになったのだ。


 ――その「例外」が、確実に歪みを生んだ。


 治療によって恐怖が薄れたことで、

 これまで人魔症を理由に緑女へ手を出さなかった無頼者たちが、

 今や彼女たちを「安全な慰みもの」と見なすようになってしまったのである。


 しかし、本来、この第六でそのような無法が許されるはずはない。

 エメラルダが知れば、即座に極刑。

 それほどまでに、彼女の統治は苛烈であり、同時に公平でもあった。


 だが――男たちは知っていた。


 エメラルダは今、内地へ戻っており、この駐屯地にはいないこと。

 そして、彼女に絶対の忠誠を誓っていたカルロスもまた、

 事態を受けて慌ただしく内地へ引き返したという事実を。


 すなわち――


 今、この第六駐屯地には、

 無法を咎める者が、誰一人として存在しないかった。


 地下貯蔵庫にたむろする奴隷男たちの数は、時間とともに増えていった。

 その中には、いつの間にか一般兵の姿さえ混じっている。

 もはや歯止めは存在しない。


 貯蔵庫の中には、外から酒や食料が持ち込まれ、

 空気は次第に、歪んだ宴の様相を帯びていた。

 笑い声。

 酒瓶の触れ合う音。

 下卑た視線が、一点へと集まっている。


 粗末な机の先。

 そこに、カリアは四つん這いにさせられていた。

 背後には、順番を待つ男たちの列。

 次々と入れ替わり、カリアの腰に重みが押しつけられるていく。

 そのたびに、カリアは歯を食いしばり、ただ耐え続けるしかなかった。


 床の石畳に、爪を食い込ませる。

 声を殺す。

 叫びも、嗚咽も、彼らにとっては「ご馳走」に過ぎないと知っているからだ。

 ――ぜったいに屈するものか!

 それが、今のカリアにできる、せめてもの抵抗であった。


 永遠にも思える時間の中で、意識は何度も遠のく。

 だが、完全に落ちることは許されない。


 意識を失いかけたその瞬間、

 容赦なく冷水が浴びせられる。

 貯蔵庫の奥に掘られた井戸から汲み上げられた水は、骨に染みるほど冷たかった。


 一瞬で、カリアの意識は無理やり現実に引き戻される。

 そして、冷え切った体は、再び飽きることなく弄ばれるはじめるのだ。


 外のテントで男たちに襲われて以来、

 緑女たちは、眠る間もなく、入れ替わり立ち替わり相手を強いられてきた。

 だが、五人ほど残っていたその数も、時間とともに確実に減っていく。


 ある者は、

 心が壊れたと決めつけられて、夜のうちに草原へと捨てられた。

 魔物が徘徊する餓鬼地獄。


 ある者は、

 慰みものとして使われ尽くし、病に侵され、やがて息を止められた。

 火にくべられるためだけの焼却炉。


 ある者は、

 度重なる責め苦に耐えかねて、夜明けを迎える前に、自ら命を閉じられた。

 いらなくなったものが捨てられるゴミ捨て場。


 そして、ある者は、

 最後まで抵抗をやめなかったという理由だけで、笑いながら弄ばれ、殺された。

 血と悲鳴が染みついた見世物台。


 もはや今、この貯蔵庫に残されているのは――

 カリア、ただ一人。


 つまり彼女は、

 この閉ざされた空間にいる男たちの欲情のすべてを、

 たった一人で受け止め続けなければならなかったのだ。


 貯蔵庫へ食料を取りに、地下へ降りてきた数人の奴隷女がいた。

 その視線が、床に崩れるように転がるカリアを捉える。


 無様なその姿を見て、女たちは声を上げて笑った。


「まだ、このオモチャ、壊れてないじゃない」

「私たちが相手するのは、もう少しお預けみたいね」


 嘲るような声音。


 奴隷女たちにとって、容姿の優れた緑女は、かねてより嫉妬の対象であった。

 魔物の類として卑下し、同じ土俵に立つことすら拒んできた存在。

 だが今、その緑女が――

 性の対象として消費されている。


 すなわち、それは、

 自分たちと「同じ人間」として扱われているということ。


 ――緑女のくせに。


 そんなものは、早々に壊れてしまえばいい。

 その感情に、ためらいはなかった。


「ええ……そんなぁ」


 そばで酒を煽っていた奴隷男が、気の抜けた声で口を挟む。

 つまらなさそうに、女たちを見上げながら。


「だってさ、この緑女の穴、もう……ガバガバなんだよ」


 奴隷女は、フンと鼻で笑った。

 そして、力なく揺れているカリアのお尻を、ぴしゃりと叩く。


「まだ、使えそうな穴が残ってるじゃない」

「それじゃ、ちゃんと壊しておきなさいよ」


 言うだけ言って、女は背を向ける。

 必要な分の食料を抱え、何事もなかったかのように梯子へ向かう。


 やがて、その姿は階上へと消えていった。


 それを見送った奴隷男は、わざとらしくため息をついた。


「ほんと、女どもは容赦ねえよな」


 一瞬だけ、カリアに同情めいたものが湧かないでもない。

 だが、同時に思う。

 このまま、一人の女に欲の始末を任せ続けるのは、正直うんざりだと。


 例えるなら――

 一つしかない便器に、列をなして用を足しているようなもの。

 どう考えても、便器は多いほうがいい。

 男の理屈としては、実に単純だった。

 だからこそ、男子便所の小便器は一杯並んでいるものなのだ。


「仕方ねえな」


 男は、にやついた笑みを浮かべる。


「コイツの別の穴もとっとと壊しちまうかwww」


 笑いながら、男はカリアの腰を乱暴に引き上げた。

 次の瞬間、重く、鈍い衝撃が続く。


「……や、やめろ……」


 掠れた声が、ようやく漏れる。

 それに呼応するかのように、床へと赤茶色い雫が飛び散った。


 側にいた男が舌打ちし、慌てて身をひるがえした。


「おい、汚ねえだろうが!」


 その様子を見て、周囲の男たちから笑いがこぼれた。

 それは、軽く、無責任な笑い声。


 だが――

 もはや声すら上げられないカリアは、

 力を失った人形のように、為されるがまま揺れているだけだった。


 閉じかけたまぶたの裏に浮かぶのは、

 黒き虎の魔装騎兵、その姿だけ。


 ――旦那さま。

 ――旦那さま。

 ――旦那さま。


 そのとき、一人の男がカリアの正面に立ち、無遠慮に顔を覗き込んだ。

 そして、指先で鼻をつまみ上げる。


「なあ、俺たちさ」

 嘲るような声。


「全然、人魔症にかからねえよな。

 ……よっぽど、頭が足りねえんだろ」


 空気を奪われ、カリアは息を求めて口を開く。

 必死に。反射的に。


 だが、その一瞬の隙を、男は見逃さなかった。

 重く、不快な圧迫感が、容赦なく押し付けられる。


「……うぐぅ……」


 もはや声にすらならない呻き。

 カリアの瞳に、涙が滲む。


 しかし、そんな様子など意にも介さず、別の男が笑った。


「ははっ、確かにな」


「俺たち、猿か?

 ――猿なんじゃねえのかよ」


「違いねえ!」


 男たちはカリアを挟むように立ち、

 互いの顔を見合わせながら、下卑た笑い声を響かせた。

 人の尊厳を踏み潰すことを、

 ただの冗談のように楽しみながら。


 その時、駐屯地内に警鐘が鳴り響いた。


 甲高く、切迫した音。

 向かい合っていた男たちの動きが、まるで糸を切られたように止まる。

 何事かと互いに顔を見合わせ、周囲を見回した、その直後――


「敵襲!」


 階上から叩きつけられるような怒声が響いた。


 男たちは一斉に色を変え、慌ただしく梯子へ殺到する。

 怒鳴り合い、押し合いながら、我先にと階上へ駆け上がっていった。


 やがて。

 貯蔵庫には、重い沈黙だけが残された。


 床に倒れ伏したままのカリア。

 力なく、うつぶせのまま。

 ――動かない。動けない。動きたくない。


 静まり返った空間に、やがて小さな音が滲み出す。

 抑えきれずに漏れた、か細い嗚咽。

 それは、誰に届くこともなく、湿った空気に溶けていった。


 しばらくして。

 階上から、そっと覗き込む影があった。


 奴隷女だ。


 微動だにしないカリアの姿を見下ろし、口元を歪める。


「……まだ、生きてるよ。あいつ」


 うつぶせのままの無様な姿を確認すると、鼻で笑い、

 次の瞬間、扉を力任せに叩きつけた。


「逃げないように、しとかなきゃね」


 続いて、金属の擦れる音。

 ガチャガチャと、念入りに鍵が掛けられていく。


 こうして地下貯蔵庫は、再び閉ざされた。

 中に残されたのは――

 声も、力も、すべてを奪われたままのカリアだけである。

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