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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部3章3~体臭クンクン美女発見! 美女の香りにむせカエル編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 三章② タカト!大ピンチ! ~ 正体見たり!盗撮カメラ!モモクリ発見!禍機断ちねん!編
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貴様にはあの死兆星が見えるか!

 タカトは、練習着に着替える。

 胸をわざと腹けだし、偉そうにノッシノッシと広場に歩み出た。

 その様子はまるでラオウ。


 その広場ではすでにオオボラが一人で練習を始めている。

 激しく打ち出される拳が風を切る。

 まるでその様子はケンシロウ。


 そんなオオボラの前に立つタカトはわざとらしく天を指さした。

「貴様にはあの死兆星が見えるか!」

 だが、オオボラはあきれたように言う。

「お前……まだ太陽が明るいのに星なんて見えるわけないだろ」

 それを聞くタカトは高らかに笑う。

「わははは! そうか、ならば貴様はまだ死すべきとではないということだ! さらばだ!」

 と、身をひるがえして、帰ろうとした。


 のだが……その肩がガシッと掴まれた。

「タカトや……どこに行くんじゃ」

 そこにはマジモードになったガンエン。

 練習着から覗く胸板は、爺さんのものとは思えないほどたくましく引き絞られていた。

 こんなジジイを、ボッコボコのボコボコにする?

 いや……無理だろ……

 ――ということで、ボッコボコのボコボコにするのはまた今度にしておいてやろう

 しかし、肩を掴まれたままでは動けない。

 逃げようと思っても逃げられないのだ。

 ならば、ガンエンの気をそらすまで。

 タカトはオオボラにしたようにガンエンにも尋ねる。

「貴様にはあの死兆星が見えるか!」

「ああ……ワシには見えるとも!」

 だが、ガンエンは鼻をつまんでいた。

「タカトや……お前が漏らした屁兆星がな!」

 そう……あの瞬間、タカトはまたもや屁を漏らしていたのだ。

 ぷぅ~

 ……またかよ。


 屁の音を聞かれたと知ったタカトは顔を赤らめた。

 ここで逃げたらウ〇コしに行ったとバレバレだ。

 ならば、とりあえず、誤魔化すのみ。

 ということで、タカトはガンエンにお辞儀した。

「よろしくお願いします☆ テヘペロ!」


 ガンエンはそんなタカトを見透かしているかのように、命令する。

「よし! タカトや、オオボラと試合をしてみい」

 その瞬間、タカトの顔に驚きが走った。

「な、何言ってんの!? 俺、受け身しかできねえんだよ!? ってかこいつ、めちゃめちゃ経験者じゃん!」

 と、オオボラを指さし抵抗する。


 オオボラはあきれた声でタカトを見つめ、広場の中央へと手招きをする。

「手加減してやるから安心してボこられろ」

 

 ガンエンも腰に手を当て、あきれた様子でタカトを見下ろした。

「この前教えた『至恭至順(しきょうしじゅん)』を使ってみい」

 その目は完全に冷めきっている。まるで──『お前にできるのはそれくらいじゃろ』と言わんばかりだった。


 “至恭至順”とは、このうえなく謙虚で従順という言葉である。

 その名のとおり、相手の攻撃に逆らわず、ただただ受け流す構えだ。

 一通り受け身が取れるようになったタカトに、ガンエンが最初に教えた型でもある。


 ──名前はカッコいいけど、中身は“ひたすら耐えるだけ”じゃねぇか!

「痛いのは! いやだーーーー!」


 嫌がるタカトの首根っこを、オオボラが無言でつかみ、そのままズルズルと広場の中央へと引きずっていく。


 そんな二人に、ピンクの声援が飛ぶ。

「タカト、がんばれぇ~♪」

「オオボラ、手加減してあげなよ~」

 ビン子とコウエンが、まるでプロレスのリングサイドにいるかのように、境内の階段に腰かけていた。


 ──ビン子の前でこれ以上、みっともない姿は見せられねぇ!

 タカトは観念し、意を決して広場の中央に立つ。


 そして──おもむろに、天を見上げた。


 空に、一輪の星が瞬いている。

 ──あゝ……あれは、死兆星……

 己の人生を静かにあきらめたタカトは、どこか晴れやかな表情を浮かべ、オオボラと向き合った。

 そして、二人は軽く礼を交わし、静かに構えを取る。


 ガンエンは開始の合図をすると同時に、タカトへ忠告した。

「タカトや、『至恭至順』じゃぞ。流れに逆らわず、気の流れに乗るんじゃ。いいな!」

 一応、心配はしているらしい。


 次の瞬間!

 オオボラの上段蹴りが、タカトの頭めがけて振り下ろされた。


 だが──

 タカトの体は柳の枝のようにしんなりと揺れ、その蹴りをひらりと回避!

 それこそまさに『至恭至順』のなせる業!

 やればできるじゃん、タカト君! 


 ……だが、オオボラの攻撃は終わらない。

 すかさず、後ろ回し蹴りを繰り出す!


 ──しかし、今や『至恭至順』を極めた俺にそんな技は通用しない……!


 タカトの脳内スパコン腐岳の演算では、完璧に回避可能。

 むしろ、あの蹴りに合わせて優雅にイナバウアーを決める予定だった。

 ――ビン子ちゃんwww 見てるぅ~!?www

 もう、荒川静香もびっくりである。

 ……だが現実のタカトは、氷上のプリンセスどころか──

 事件現場の古畑任三郎。

 ピタリと止まって動かない!

 ――あれ? 動けねぇ!? さっきは感覚でいけたのに……!

 どうやら、頭では回避できていても、貧弱な体がついていかなかったらしい。


 結果──

 蹴りの一撃がモロに腹に突き刺さる!


「うごっ!」


 息ができない。

 悲鳴すら出ない。

 タカトは腹を抱え、その場に膝をついた。


 だが、オオボラは一切油断しない。

 距離をとってステップを刻み、いつでも次を狙っている。

 そう、獅子はウサギを狩る時も全力を尽くす──

 まあ、今のタカトはウサギじゃなくて……ただのカエルですけどね。


「こ、この嘘つき……手ぇ抜くって言ったじゃないかっ!」

 涙目で見上げるタカト。


「十分抜いてるぜ。これ以上、どう抜けってんだよ……」

 両手を上げ、あきれたようにため息をつくオオボラ。


 だが──その瞬間。

 先ほどまで刻まれていたオオボラのステップが、ふと止まった。


「隙ありっ!」

 タカトがいきなり立ち上がり、オオボラめがけて猛突進!

 右こぶしを高く振り上げ、そのまま渾身の力で突き出した──!


 ボコォッ!


 めり込む顔面!

 してやったり! 勝った! 勝ったどぉぉ!


 ……と思いきや。


 タカトは鼻血をまき散らし、きりもみしながら宙を舞い──

「ボゲヒょぉぉぉぉぉ!」

 と奇声を上げて吹っ飛んでいた。


 そう──あの瞬間。

 タカトがこぶしを振り上げた、そのわずか一拍前!


 にやりと笑ったオオボラの拳が、光のような速さで閃いたのだ。

 カウンター技『光芒一閃(こうぼういっせん)』──

 それはまさに、正確無比に、タカトの顔面を打ち抜いていたのである。


 しかも、無慈悲に!

 力いっぱい!

 これでもか! と!


「まぁ……“本気”なら、こんなもんじゃすまなかったけどな」

 そう笑うオオボラの横顔は、ほんのりと鬼だった。



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