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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部3章3~体臭クンクン美女発見! 美女の香りにむせカエル編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 三章② タカト!大ピンチ! ~ 正体見たり!盗撮カメラ!モモクリ発見!禍機断ちねん!編
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俺は!トイレに行きたいんだよ!

 ビン子は、持参した干し肉の袋をガンエンに手渡した。

「これ、権蔵じいちゃんからです」

 ガンエンは袋を受け取ると、脇に挟み、両手を合わせる。

「おお、さっそく届けてくれたか。ありがたい、ナムナム……」

 目を閉じて何やら念仏のようなものを唱えはじめたが──声が小さすぎて、何を言っているのかさっぱりわからない。


 それを横目に、タカトはというと──

 ヨシ! 任務完了!

 と、言わんばかりに、そっと門の方へ足を忍ばせた。

 どうやら、ガンエンが目をつぶっている隙に、この場を離れようという魂胆らしい。


 ……とはいえ、ビン子に任せてお使いをすっぽかす、という選択肢もあったのだ。

 それでも、ちゃんと万命寺まで来たのだから、えらいものである。


 実際、何度か考えたの。

 途中の森で石に腰かけ、

 「ビン子! あとはヨロピク~♪」

 なんて言って帰りを待つ──そんなズルも。


 だが、それをしたら最後……

 ビン子のチクりによって、権蔵の激高を買うのは目に見えている。


 まぁ、「ドアホっ!」と怒鳴られるのは、慣れっこだ。

 けれど──

 飯抜きだけは、マジで困る。

 ――だって俺、成長期だもん♪


 万命寺の門へと向かって歩くタカトの足は──

 抜き足……差し足……忍び足……ブッ!

 ケツから、茶色い音がもれた。

 ──そういえば、今朝の朝ごはんも芋だったな……というか、芋しか食ってねぇ! だいたい俺は成長期だっちゅーの!


 などと本人は呑気に思っていたが、当然ながらその音に反応した者が一名。

 ガンエンの片目が、ぱちんと開く。

 そして、逃げ行くタカトを、蛇のような鋭い眼差しでにらみつけていた。


 その瞬間、タカトの成長、いや整腸、とにかく動きが止まった。

 ……いや、止まったのではない。動けないのだ。

 それはまるで、直腸でかろうじてせき止められている茶色い衝動!


 全身に悪寒が走る。

 先程からヒリヒリと本能が告げている。

 ──動いたら、死ぬ!


 ガンエンの眼光は、まるでとぐろを巻いた大蛇。

 対するタカトは、ただの震える青カエルである。

 もしかしたら、さっき地面に投げ捨てた『美女の香りにむせカエル』の祟りかもしれない。

 とにかく、今のタカトは小刻みに震え、衝動を耐えるしかできなかった。


 ──見つかってもうた……どないしよう……

 逃げるか? このままダッシュで門の外まで走り抜けるか?


 ……いや、それは過去にやった。

 その瞬間、ガンエンの肘が背骨にめり込んだのだ。

 ゴキッ!

 ──あの時は、マジで死ぬかと思った……。

 だが、今それをやれば、死ぬどころの騒ぎではない……ビン子の前で茶色い醜態をさらさなければならなくなるのだ……

 ――それだけは嫌だ


 案の定、ガンエンがタカトを呼び止めた。

「タカトや……これを、タダでもらうわけにはいかんのぉ……」

 獲物を見つけた蛇のような目が、うっすらと笑みをたたえている。

 それは、喜びすら滲ませた、狩人の目。

 どうやら──

 タカトに万命拳の修行をつけたくて、うずうずしているようである。


 だが、タカトはどうにも万命拳の修行をやりたくない様子だった。


 たしかに──最初の一回目だけは、”タダで万命拳が習える!”と聞いて、めちゃくちゃ喜んでいたのだ。

「ラッキー! タダ! 無料! 費用ゼロ! 最高ぉぉぉおおッ!」

 貧乏なタカトにとって、“無料で習い事”は夢のような響きだった。


 ──が、実際やってみると、めちゃくちゃ痛い。


 いや、痛いというより……マジで死ぬ。


 石畳の上で受け身の練習。

 受け損ねれば、後頭部にダイレクトアタック!

 柔道だって畳の上でやるだろうが!

 なぜ石畳!? ここ万命寺だぞ!? 道場はないのか!?

 頭がグワングワンして、星が見える。

 ──こんなん続けてたら、身が持たんわ!


 こんな修行、やめてやるッ!!


 ……と言いたいのだが、さすがにガンエンが怖すぎる。


 言おうとした瞬間、しわくちゃの拳が、ぐいっと口にねじ込まれるのだ。

「うん? タカトや、何か言いたげだったが……何かな?」


 拳一個分だぞ!?

 今ラジオ体操なんて、喉奥と言えどもちくわ程度!まだ可愛いもんだ。


「フガフガフガ……!」

 顎が外れかける痛み。もうこれは……SMプレイとして楽しめるレベルを超えている。


 かといって、また石畳に後頭部を打ちつけるのはイヤだ。

 これ以上、頭をやられたら、このタカト様の天才頭脳に支障をきたしかねない。

 それは即ち、融合加工国の未来に関わる重大な損失なのだ!


 ……だが、そんな理屈をガンエンに語ったところで、

「ふーん」

 と鼻くそでもほじられて終わりだ。


 ならば……ここは、ゆっくり、自然に──

 フェードアウトするしかない。

 まるで最初からタカトなどいなかったかのように……。

 ――というか、俺は!トイレに行きたいんだよ!


 タカトは、顔中から噴き出す変な汗を手で必死にぬぐい、作り笑いで言った。

「いえいえ! ただで差し上げますとも! 見返りなんか求めたら、仏様に罰当たりますから!」

 そのまま、上半身を一切動かさず──

 足だけを、横にカニのようにすりすりと移動。

 まるで、スローモーションのベルトコンベアーに乗っているかのように、

 タカトの体は門の方へとスライドしていった。


「仏様がなんぼのもんじゃ!」

 仏のことなど微塵も気にしないガンエンは、ずかずかとタカトににじり寄ってくる。


 ──お前、この寺の住職だろうが……。


「約束は約束じゃ!」

 ガンエンは、タカトの襟首をガシッとつかみ上げると、そのまま容赦なくズルズルと引きずっていった。


 もがくタカトの体は、足をバタつかせながら、地面を引きずられ後方へ。

 完全に廃棄物の回収である。


「ビン子ちゃぁぁん! たすげでぇぇぇぇぇ!!」


 一縷の望みにすがって、ビン子に手を伸ばすタカト。

 だが──


 その手は、すっと避けられた。


 ……だって、タカトの顔面はすでに崩壊状態。

 目・鼻・口、あらゆる穴という穴から液体が噴き出し、

 ぬぐった手とのあいだには、なんとも言えないネバネバの糸が引かれていたのだから。


 ──いや無理、汚い。


 それでもビン子ちゃんは、心優しい少女である。

 引きずられていくタカトを見送りながら、

 にっこり笑ってこう言った。


「がんばってねww」


 ──笑ってるし。


 まぁ、万命拳の修行を見ていれば、日頃のタカトに対するちょっとしたうっぷんも晴れるというもの。


 というわけで──


 今日もしっかり観戦させていただきます!

 タカトさん、がんばってください!


「くそっ! ビン子の奴……全ッ然役に立たねぇ!」

 最後に信じられるのは──そう、自分だけだ!

 観念したタカトは、もう完全にヤケ糞だった。


 ──やってやるよッ!!


 この天才・タカト様が、万命拳の奥義を秒で極めてくれるわ!

 (というか! 秒しか持たねぇ!)

 そして奥義を極めた暁には……

 あのガンエンのジジイを、ボッコボコのボコボコにしてやる!!

 覚悟しとけよジジイ!

 あとで泣いても知らねぇからな!

 ……ついでに、ビン子にはデコピン百連発決定ッ!!

 アタタタタタタ!

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