表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

482/637

拷問

「貴様! そこで何をしている!」

 ガンエンをはじめ、数人の万命寺の僧がネコミミのオッサンを取り囲んだ。


 この時のオッサンは、魔の国から逃げ帰ってきたところ。

 もはや、仲間は誰もいない。


 だが、それでもレモノワの暗殺部隊の一員だ。

 こぶしを構えて万命寺の僧たちを威嚇した。


 しかし、相手は万命拳を極めた僧たち。

 不意打ちでなければ、そうそう簡単にくたばってくれそうでもない。

 しかも、圧倒的な人数差。


「ぶへぇ!」

 いつしか、ネコミミオッサンの顔は地面に押し付けら泥にまみれていた。


 ここは、大空洞からのびる側洞に即席で作った粗末な牢獄。

 そんな牢の中に縄でぐるぐる巻きにされたネコミミのオッサンが転がっていた。


 オッサンの顔の前に一対の足が伸びた。

 その足の上では仁王立ちしたガンエンが憤怒の表情を浮かべている。

 その姿は、かつて万命寺の門を守護していた鬼神そのものと言っても過言ではない。


「エメラルダ様はどこだ! しゃべらんともっとひどい目にあうぞ!」


 ゆっくりと芋虫のように転がる頭を上げるネコミミのオッサン。

 だが、すでに視点が定まらない様子でフ~ラフラ。


「お前! 坊主だろうが! こんなことしてもいいとでも思っているのか!」


 しゃがみこんだガンエンは、そんなオッサンの顎をグイっと掴みあげて顔を近づけた。

「今はただの無職のジジイじゃ!」


 鼻で笑うガンエンは、そのままにネコミミのオッサンを突き放す。

 突き放されたオッサンの体が壁にぶつかると、再びその場にごろりと転がった。


「クソがっ!」

 上目づかいでガンエンを睨み付けるおっさんは、悪態をつくのが精一杯。


 だが次の瞬間、オッサンの体はギクリと硬直した。


 なぜなら、見上げる先には気色の悪い笑みを浮かべるガンエンの目があったのだ。

 ――コイツ……何をかんがえていやがる……

 恐怖と言うより寒気が襲う……


「おぬし……レモノワの暗殺部隊だそうだな……」

「だから、どうした……」


「そんなお主が、簡単に口を割るとは思ってはおらん……」

「フン! 拷問など何度も経験しておるわ!」


「じゃろうな……」

「無駄なことはやめておけ! 体力の無駄だぞ! ジジイ!」


 ガンエンは、懐にゴソゴソと手を突っ込んだ。

「じゃが……これでもまだ、そんな態度を取れるかな?」


 !?

 ふにゃ?


 ネコミミオッサンの視線がピタリとガンエンの手元で止まった。

 それどころか左右に振るガンエンの腕の動きに従って、オッサンの猫目もまた左右に行き来しはじめた。


 ――くっ! それは……

 いつしかオッサンの口からはヨダレがボテボテと垂れ落ちていた。


 ガンエンの手に握られた一本の枝。

 オッサンの目の前で、その枝をゆっくりと左右に振っているのだ。

 それはまるで女を焦らすかのようにゆっくりと……ゆっくりと……


「ほれ! マタタビだぞ! 欲しいか?」


 オッサンが、コクりコクりと何度もうなずいた。


「なら、エメラルダ様の居場所を言え!」


 おっさんは恐怖する。

 ――何なんだ! この拷問!


 刺客の中の刺客であるはずのネコミミのオッサン。

 こう見えても、今までに何度もひどい拷問には耐え抜いてきた。

 口を割るぐらいなら死を選ぶ。

 それぐらい強い信念の持ち主であったのだ。

 そのため、オッサン自身、万命寺のぬるい拷問などクソみたいなものだと甘く見ていた。


 だが……


 だが……これは……


 初めての経験……


 こんな拷問は受けたことが無い……


 先ほどから本能がうずくのだ……


 あの枝が欲しいと!


 体の中が熱く焦れるのだ……


 何か薬でも打たれたのだろうか?

 いや、そんな痛みはない。

 まぁ、たとえ自白剤であったとしても、それに耐える自信はあった……


 だが……


 だが……これは……


 これは……無理……


 にゃぁ~ん!


「……エメラルダは……魔の国に入った……」

 ついに口を割る猫耳のおっさん。


「生きておるのか?」

「分からん……魔物に襲われていたからな……」


「その場所はどこだ!」

「魔の国に出たすぐのところ……もう、いいだろ!」


「よくぞ話してくれた!」

「なら、それをくれ! 早くくれ! 約束だろ!」

「うむ!」


 ごろにゃぁ~♪


 ガンエンは万命寺の僧を連れて、おっさんに教えられた魔の国側の小門の入り口を伺っていた。


 そこには、おびただしいほど大量のカエルの死体が転がっている。

 しかし、その死体は既に、他の魔物に食い散らかされたのか骨だけになっていた。


 どうやら、ココでエメラルダ達が魔物と戦ったことは事実のようである。


 ガンエンの視線が、地面の上に転がる一つの塊にピタリと止まった。

 ――まさか!


 どうやら、それは人間の頭の様である。

 しかも、それは一つだけではなかった。

 その周りには、頭の骨だけでなく、体の骨らしきものも散らばっているではないか。

 

 その骨に近づき膝を折るガンエン。

 ――まさか……エメラルダ様のものではあるまいな……


 震える手でその骨を恐る恐るつかみ取る。

 それは男の骨。

 ――タカトや……


 だが、ガンエンはすぐさま安堵した。

 なぜなら、その骨は、成人男性の骨であったのだ。


 医者であるガンエンにはすぐに分かった。

 ということは、少年であるタカトのものではない。

 まして、女であるエメラルダやビン子のものでもない。

 おおかた、暗殺者の仲間たちのモノだろう。

 という事は、エメラルダやタカトたちは、ココでは食い殺されていないという事に。


「ガンエンさま!」

 一人の僧が大岩の隙間を指さしていた。

 その先には何かが風にたなびいているのが見えた。


 それは、まぎれもないエメラルダが身に着けていた服の破れ切れ端。

 それが、破れてそこに挟まっていたのだ。

 この切れ端……エメラルダの身に何か起こったことつぶさに暗示していた。


 ――エメラルダ様……

 ガンエンは切れ端を握りしめながら焦った。


 今すぐにでも、エメラルダを捜索しに走りたい。

 だが、ココは魔の国。

 いかにガンエンたちが万命拳を極めていようとも、これより先に深く入り込むことは死を意味する。

 ここで、万命寺の僧たちを無駄死にさせるわけにはいかない。


「……とりあえず、今は撤退じゃ……」

 苦虫を潰すガンエンの口は、やっとのことで声を絞り出した。


「無事に逃げてくれていてくれればいいのじゃが……」

 ガンエンたちは、小門の中へと戻っていったのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ