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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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迷った?(1)

 ミーキアンが、側に控えるリンの様子を伺った。

「その方がミーアも安心すると思うしな」

 先ほどからリンの表情が明るい。

 ――お姉さまのところに行ける!

 ミーキアンが皆の同意を確認するよりも早く、リンはスカートを広げお辞儀をとった。

「では! 行ってまいります!」

 そう言い終わると、すたすたと歩いていくではないか。

「オイ! まだ話は終わっておらんぞ!」

 ミーキアンが呼び止めるが、リンは我かんせず!

 というか、すでにミーアのことで頭がいっぱいになって聞こえていないのだ。


「タカトさん! 早く行きますよ!」

 リンはケツを突き出すタカトの耳を引っ張ると、広間の奥へと引きずった。

 その後を追うビン子。

「ちょっと! タカト! その汚い尻しまいなさいよ!」


「ミーアとリンの事を頼む……」

 ミーキアンは去り行くリンを見ながら、エメラルダにつぶやいた。

「頼まれなくとも分かっております」

 エメラルダはにこりと微笑むと、急いでタカトたちの後を追った。


 聖人世界へとつながる小門。

 ココは、エメラルダ達が魔の融合国に入るときに使った小門である。

 その細き洞穴の中を、スタスタとリンが歩いていく。

 それに続くタカトたち。

「えーと……リンさん、ご主人様の私の前を歩くのはいかがなものなのでしょうか? せめて、こう私の横について腕を組むなりいたしませんかね?」

「バカ!」

 手をこすり合わせるタカトをビン子がつねる。

 イタタタタ!

 リンは振り向くことなくタカトに忠告した。

「何を勘違いしているのか知りませんが、私の主人はミーキアン様です。タカトさんアナタではございません」

「えっ! 奴隷の交換じゃなかったの!」

「そのようなことは、ミーキアンさまは申しておられません」

「それなら、俺、あの人たちをミーキアンにとられただけじゃん!」

 さすがにその言葉が頭に来たのか、リンは立ち止まって振り向いた。

「タカトさん! そこまで言うなら、奴隷たちを引き取りに戻ります? ミーキアン様の好意でわざわざ預かっていただいたのに……だけど、確実に奴隷たち死にますよ! それでもいいんですか!」

 腰に手を当てるリンの言葉は強い。

 もう既に言い返せないタカト君。

 シュンとして、頭を下げるだけだった。


 最後についてくるエメラルダが笑いながら辺りを見回す。

「ところで、ココどこ?」

 ビン子も、慌ててきょろきょろと。

「ねぇタカト……来るとき、こんな道、通ったっけ?」

 タカトはリンに尋ねた。

「お前、聖人国につながる道知ってるんだよな?」

「知りません!」

 リンは自信満々に答えた。

「はあぁ! 何言ってんだこいつ!」

 頭に来たタカトは怒りが収まらない。

「さっきから、お前、我先に先頭を歩いていたんだろ。しかも、なんの迷いもなく、分かれ道選んでいたよな!」

「それがどうかしました?」

「いやいや……道が分からないのに、勝手に進んだらココがどのあたりかわからんだろうが!」

「分かりませんけど。なにか?」

「何かじゃねぇよ! それを道に迷ったって言うんだよ!」

「私は迷ってなどおりません! 常にミーア姉さま一筋です!」

「バカかぁァァァァ! お前のミーアの気持なんかどうでもいいわ! というか、このままだとそのミーアの元にもたどり着けんのだぞ! それでもいいのか!」

 リンの顔が青くなった。

 初めて事の重大さに気づいたようである。

「ど……どうしましょう……タカトさん!」

「どうしましょ……っていまさら……」

「何とかしてください! タカトさん! タカトさんの道具でパパッと解決してください!」

 そんな無茶ぶりをいいなさんな……

 こんな洞穴の中で道具なんか作れるかいな……

「ジャーン!」

 うすら笑いをうかべるビン子が、カバンの中から道具を取り出す。

「『恋バナナの耳』! これはオッサンの声が聞こえてくるのだ!」

「ちが―ウ! それは、女の子の恋のささやきが聞こえるんだ!」

 タカトが懸命に修正するがビン子はかんせず。

 バナナを耳に押し当てて、周囲の音を伺った。

「何か聞こえる?」

 エメラルダは、心配そうにビン子に尋ねた。

 ビン子はただ黙って首を振るだけ。

 どうやら、オッサンたちの声はここには届かなかったようである。

 なら!

「『美女の香りにむせカエル』! これはオッサンの体臭に反応するのだ!」

「ちが―ウ! それは、美女の臭いをかぎ分けるの!」

 再びタカトが懸命に修正するがビン子は相変わらず我かんせず。

 カエルを優しくなでて手のひらに置く。

 しかし、カエルはビン子の目を見つめるのみ。

 目と目が通じ合う。

 ……

「何か分かった?」

 エメラルダも何だか不安そう……

 ビン子はただ黙って首を振るだけ。

 どうやら、カエルの声が聞こえなかったようである。

 目と目が通じ合ったのは気のせいだったのかもしれない。


「どうしよう! タカト!」

 ビン子は泣き顔になっていた。




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