ボンッ♡ ボボーンッ♡
半泣きになったビン子は考えた。
――こんな時、タカトならどうする?
そうだ。あのバカはいつも、くだらない道具で何とかしてきた。
アホなネーミング!
エロ目的の制作理念!
一見ただのガラクタなのに、ピンチになると意外と役に立つのだ。
――なら……カバンの中を探せば!
そこには「捨てるに捨てられないタカト製ガラクタ」がぎっしり。
普段は邪魔でしかない。正直、ほぼゴミ。
けれど今は――宝の山!
ビン子は必死に手を突っ込み、次々に引っ張り出す。
片足を上げてお尻をプリッと突き出すバニーフィギュア「スカート覗きマッスル君」。
試作途中の「ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!」。
そして――手のひらに収まったのは、一匹のカエルだった。
「げろ」
つぶらな瞳と目が合う。
「あっ……カエルさん!」
カエルは思い出してもらえたのが嬉しいのか、勢いよく鳴いた。
「ゲロ! ゲロ! ゲロ!」
そう――このカエルこそ、タカトが「巨乳美女探知用」に作った道具。
美女特有の香りを嗅ぎ分け、見つけたら“ゲコッ!”と鳴いて方向を教えてくれる……はずだった。
しかも、今は裏モード発動中。
その名も――
「象さんPOモード!」
特定の匂いを覚えさせれば、警察犬ならぬ警察象のように発信源を探し出せるという代物だ。
……もっとも、ビン子はそんなこと全く知らない。
少なくとも「巨乳美女は絶対に見つけられない」という時点で失敗作だと完全に安心しきっていたくらいだ。
だが――胸の奥で、不思議な“お告げ”を感じた。
『信じなさい……あの人を、信じなさい……』
ビン子は迷わず、カエルを開血解放する。
次の瞬間!
カエルは泣きべそ顔のビン子を励ますように、激しく鳴きまくった。
「ゲロゲロ! ゲロゲロ! ゲロゲロ! ゲロゲロ!
ゲロゲロ! ゲロゲロ! ゲロゲロ! ゲロゲロ!」
洞窟の闇を切り裂くように、鳴き声が響き渡る。
――まるで出口の方角を示しているかのように。
おそらくこのカエル、権蔵の匂いを覚えていたのだろう。
オヤジ臭を嗅ぎ分け、その流れを追って鳴いている。
ならば、この鳴き声の先に――権蔵が、そして出口がある!
ビン子は涙で潤んだ目を輝かせ、ぱっと顔を上げた。
次の瞬間、全力で駆け出す。
「タカト! 待っててね! 今すぐじいちゃんを連れてくるから!」
***********
そのころ――タカトはドーム内を必死に逃げ惑っていた。
だが、ついに壁際へと追い詰められてしまう。
背中を岩壁にぴたりと押しつけ、わなわなと震えるタカト。
視線の先――地面をじわじわと這い寄ってくるのは、クロダイショウとオオヒャクテの黒い群れだった。
その牙には強烈な毒。
噛まれれば神経がやられ、頭がアホになる。
タカト、絶体絶命!
……だが、もしビン子がいればきっと言うだろう。
「タカトは最初からアホだから大丈夫じゃない?ww」
(そんなわけあるかい! タカト怒りのツッコミ!)
だが、相手の数は万を超えている。
一匹くらいなら耐えられるかもしれないが、この大群に噛まれたら――
アホがアッポォ!になること間違いなし!
ジャイアント馬場もギックリ腰レベルである。
しかも、その長くクネクネした体……まるで触手。
想像してしまう。体にまとわりつく感触。
目や口、鼻の穴――あらゆる穴から侵入してくるビジュアル。
もし、アイナちゃんの写真集「アイナと縄跳び」に続編があるなら、きっとそんなエロチックな世界観に違いない。
「やめてぇ!」
亀甲縛りにされたアイナに迫る触手の数々!
「許してぇ!」
涙で崩れた顔に白濁液が垂れ落ちる――。
……そんな妄想に浸るタカトの目は、少し緩んでいた。
「ゲヘ、ゲヘ、ゲヘ」
だが現実は残酷だ。魔物の群れはさらに迫り、状況は悪化していた。
タカトははっきりと理解する。
――今、緊縛されようとしているのはアイナちゃんではなく、俺自身だ!!
だいたい、亀甲縛りされたタカトなど、誰が見たい?
はっきり言って!見るに堪えない!
いかにカラーの写真集であったとしても、販売数ゼロは確実だ。
(いや、私は買ってあげるわよ♡ by ビン子)
タカトは瞬時に自分の尻の穴を右手で押さえた。
「俺の初めてが蛇だなんて……絶対にありえねぇ!」
……というか。
穴なら他にもあるだろうに、なぜ真っ先にそこを押さえた?
そう突っ込みたいのは筆者だけだろうか。
いや、もしかすると――タカト君、そっち系だったのかもしれない……
(マジか♡ by コウスケ)
それにしても……タカト君……
その手に持つ剣は、お飾りなんですか!?
せっかく権蔵に打ち直してもらった剣なんだから、その剣を振って戦えよ!
と、ふがいないタカトを見ていたら誰もが言いたくなるだろう。
だが、タカトにも言い分があるのだ。
――アホか! あの大群相手に剣なんか振っても意味あるかい!
まぁ、確かにそうだ。
一匹や二匹、切り伏せたところで、迫りくる万の群れの前では無力。
おのずと魔物の海に飲み込まれるのは明らかであった。
そうなると……タカトの穴という穴にクロダイショウたちの長い身体が……
いや、それどころか……体ごと食い荒らされて――
白骨化、確定演出www!
そんな恐怖に、タカトの背中は壁面にぴたりと張りつく。
足はつま先立ち、背筋ピーン。
少しでも、その群れから遠ざかろうと必死のあがきをしていた。
だが、クロダイショウの群れはついに足先へ到達!
「あかん! もうダメや!」
タカトは最期を覚悟した。
――ああ……俺の人生、女っけゼロやったな……せめて一度でいい、オッパイ揉んでから死にたかった……。
脳裏に浮かぶのはビン子の姿。
――いや、あいつの胸はまな板やろ! もっとこう、ふくよかで! 柔らかくて! 温かくて!
そう妄想した瞬間――
ボンッ♡ ボボーンッ♡
二つの巨乳が、タカトの目の前に降臨したwww




