超覚醒(3)
「オイ! こいつら天然ものだぞ! 見ろよ! 奴隷の刻印がないぞ!」
魔人たちはざわめき立った。
「養殖ものじゃないんだ! 天然か! 久しぶりだな天然もの!」
「兄貴! と言うことは、この黄金の弓も、俺が貰っていいんだよな! だって、そいつら食べちゃうんだから!」
3人目の魔人は一番下っ端なのだろうか。
大岩の上の黄金弓を手に持ち、エメラルダを掴む長兄魔人に嬉しそうに声をかけた。
「ああ! いいとも! その代わり、お前が食うのは、あのひょろっとした男だからな!」
「ちぇっ! いいよな。兄貴たちはいっつもおいしいところばかり持って行って。俺も女のやわ肉の方がいいよ」
「その代わり、お前はその黄金の弓を持って行くんだろうが!」
「うん……でも、人間の女の肉の方がいいなぁ……」
「このデカい女は俺のだからな! 分かったな!」
「分かったよ……」
残る二人の魔人はうなだれた。
「ちょっと待て! その巨乳は俺のだ!」
――だれだ! 俺たちに喧嘩を売るのは!
その声の主へとに3人の魔人たちの視線が集まった。
そこには、偉そうに胸を張るタカトの姿。
カッコいいぞ! タカト君!
ただ、下半身はガクガク! ブルブル!
今にも、腰が砕けてしまいそうな雰囲気だ。
カッコ悪いぞ……タカト君……
「なんだと、小僧! お前から先に食ってやろうか!」
エメラルダを掴む長兄魔人の緑の目が、タカトをにらむ。
ひっ!
その威勢に、ひるむタカト。
だが、おびえながらも小剣の剣先を長兄魔人に向けた。
「は……はなせ! エメラルダの姉ちゃんを放せよ!」
長兄魔人は鼻で笑うと、立てた指先を軽く動かし指示を出す。
それに応じるかのように、三匹のゴリラの魔物が、ゆっくりとタカトに体を向けた。
――あかん! あかん奴や!
既に、震えは、下半身から全身へと感染し、顔面は涙で完全崩壊していた。
だが、それでも剣先は降ろさない。
タダ……剣先が、小刻みどころか、ガタガタと音を立てながら揺れているため、うっとおしいったらありゃしない。
そんなタカトを見かねたのか、半魔犬のハヤテが、タカトの前に躍り出た。
牙をむき、頭を低く下げ、ゴリラたちを威嚇する。
低いうなり声をあげるその鼻すじには、何本ものしわが渓谷のように深く刻まれていた。
しかし、ゴリラたちの歩みは止まらない。
まるで、半魔の犬など、眼中にないかのように、そのスピードは変わらなかった。
そこからゴリラたちが加速する。
それに応じるかのようにハヤテもまた、先頭のゴリラへと突進する。
一方、タカトは、腰が砕けた。




