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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 4章 ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編

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新宿ホーム


 いつもなら雑然と人の流れが途切れない新宿駅。

 血球のように、せわしなく人々が行き来する場所。

 酒と排泄物、そして人の体臭がわずかに混じる、そんな街。


 だが今、駅のホームには人影がない。

 耳をつんざくのは、幾重にも重なる爆発音と、EBE(地球外生命体)の咆哮だけ──。

 そして今、鼻をつくのは、肉の焦げた異臭と、硝煙の刺激臭だった。


 五年前、東京のど真ん中に突如出現した巨大な門。

 スカイタワーに匹敵する高さのその門には、重厚な扉と八つの鍵穴が刻まれていた。

 そして今、最後の八つ目の鍵が回り、門がゆっくりと開かれつつある……。


 高斗(タカト)は、静かにフットペダルを踏み込んだ。

 低く唸る駆動音とともに、青く輝くディスプレイの両側に、駅のホームが滑り込んでくる。


「アイナの話では……その門から現れるのが、アダム……EBE(地球外生命体)の親玉だと……」


 (……ん? アイナちゃん?)


 タカトの知るアイナは、聖人世界のトップアイドル。

 タカト自身も、アイナ親衛隊の“補欠の補欠”を名乗る熱狂的なファンである。


 だが、思い出す。──以前、“つながった”ときのことを。


(……たしか、あの時も、アイナちゃんに──)


 それは、この記憶よりも、もっと昔のことだった。


 高斗(タカト)が“ガイア”(※顔が一堂礼っぽいデカ顔)を追ってビルの屋上へと駆け上がったとき──

 そこで彼が再会したのは、まぎれもなく“あの”アイナだった。


 だが、アイナの口から飛び出したのは──


 「臭いんだよ!」


 再会の喜びなど、微塵もない声。

 そして、さらに容赦のない追撃が続く。


 「触るな! お前からはアダムの匂いがするんだよ!」

 そのまま高斗(タカト)は、ビルの屋上から蹴り落とされたのだった。


(ていうか……あの高さから落ちて、生きてたのかよ、コイツ)


 ──そう、あの時。


 地上では“赤虎”が膝をついていた。

 人型装甲騎兵“白虎”のレッドカスタム──指揮官・敏子の機体である。


 だがその“赤虎”は、ゲルゲの放った高出力サン(息子)レーザーをまともに浴び、胸部から上、装甲ごと吹き飛ばされていた。

 砕けた外装、焦げた内部機構、炭化した支持フレーム。

 パイロットブロックの装甲が削がれ、コクピットがむき出しになる。


 火花が、断続的に散っていた。

 管制ユニットは焦げ、パネルは亀裂を走り、主電源インジケーターは完全に消灯。

 安全ベルトに吊られた敏子の体は、前のめりにうなだれ、ヘッドギアの隙間から、ぽたぽたと血を滴らせていた。


 ──その時だった。


 空から、一つの影が降ってきた。

 真っ逆さまに、こちらへ向かって。


 敏子の目が、わずかに動く。

 それが誰なのかを視認した瞬間──


「高斗……!」


 彼女は咄嗟に操縦桿を握り、上体をコクピット前方へと乗り出した。

 血に濡れた指先が、割れたコンソールに伸び──


 バン!

 拳がコンソールを叩いた。


「動いて! 赤虎……お願い、高斗を、救って!」


 その瞬間だった。

 完全に沈黙していた機体の内部で、何かがひっかかるように、かすかな反応を見せた。


 ・

 ・

 ・


 bi……

 beep……

 ……OS起動:非常モードでのブートシーケンスを開始します……


 ノイズに覆われたモニターが、乱れた走査線の奥でゆっくりと像を結び始める。

 焦げた配線の隙間から、バックアップ電源が駆動を開始し、切断寸前だった関節にわずかな通電が走る。


 ……OS:セーフモード動作確認中……

 ……血液認証:パイロットID “A-223 敏子” ……認証成功。

 ……機体損傷率:70%以上。戦闘続行不能。緊急手動モードへ移行します……


 停止していた“赤虎”の胸部深くで、微かな命のような光が脈打った。


『再起動完了』


 その瞬間、敏子はフットペダルを思いきり踏み込んだ!


「いっけぇぇぇぇぇぇ! 赤虎ぉぉぉぉぉぉおお!」


 爆音とともに、“赤虎”がパーツを撒き散らしながら加速する!

 それはまるで──

 融合加工における“開血解放”のようにも、能力の異常解放のようにも見えた。


 ──だが、そんなことを悠長に思い出している暇はない。


 高斗の前方ディスプレイに映る、その映像がおかしい。

 非常事態だ。一般市民がいないのは当然として、自衛隊の補給班も警戒部隊も……誰一人、いない。


 ――妙だ……ここは第一線だぞ。最低限の警備すら見えないなんて。


 瞬時にモードを切り替える。赤外線、サーモ、暗視、望遠。

 しかし、どのチャンネルにも、人影は映らない。まるで、都市の心臓が静かに止まったかのようだ。


 だが。


 “それ”は、静止した風景の中に紛れていた。

 左端――ディスプレイの片隅で、何かが“ガクン”と揺れた。


 落ちた広告看板が、風にあおられてカラン……と鳴る。


 ──いや、看板じゃない。

 そのすぐ横に立っていた白虎の機体だ。


 ――……動いた? いや、錯覚か……。


 否。


 もう一度、今度は明確に──その人型装甲騎兵が“膝を抜いた”。

 膝関節が異様にねじれた角度で沈む。反応遅延か、操縦ミスか、それとも──。


 ゆっくりと、ガタついた足回りで立ち上がる白虎。パイロットが操作しているにしては、挙動が不自然すぎる。脚のロール軸が逆方向にスライドし、サーボの制御が明らかに“遅れて”追随していた。


 ――なんだ……この動き……制御系が死んでるのか?


 だが、それにしては動く。

 関節がギリギリと軋む音を拾う。肩のアクチュエータが変なタイミングで跳ねる。

 右腕が、機械的でない“ねじれ方”で持ち上がり──まるで、筋肉のない死体が無理に動かされているような──


 「ッ、撃つ気か……!」


 高斗は即座に操縦桿を引き、ペダルを蹴り込んだ。玄武が左へ跳ぶ。


 直後、白虎の腕が動いた。

 銃のようなものを、しかしこちらを“見ることもなく”、ただの慣性のように──向けてきた。


 ガガガガガガッ!


 銃火が走る。火線。鋼の雨。


 センサーが悲鳴を上げる。視界の端がチカつく。高斗の玄武は側面をすり抜けるように回避しつつ、敵機の動きをモニタリングする。


 ――おかしい、絶対おかしい。人間の動きじゃない。反応速度が合ってない……目的が感じられねえ。


 だが、それでも動いている。いや、動かされている。


 その異様な動きが、周囲の他の白虎にも波及する。

 今度は2機、3機、4機──次々に、同じような“妙な動き”を見せ始める。


 同じ機体。だが、動きだけが異常だった。

 脚部がぎこちなくねじれ、肩の制御がわずかに遅れる。挙動に、“ズレ”がある。


 ――まるで、操縦を“誰か”が模倣しているみたいだ……


 ならば、あの中にいるべき仲間は、どこへ消えた?


 嫌な予感が、頭の奥をかすめる。

 ――ならば、確かめるのみ!


 


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