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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部3章3~体臭クンクン美女発見! 美女の香りにむせカエル編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 三章② タカト!大ピンチ! ~ 正体見たり!盗撮カメラ!モモクリ発見!禍機断ちねん!編
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……そして、物語は再び、ここから動き出す──

 ──で、タカトはというと。


 小門から戻ったミズイと再会──

 だが、肝心の「鑑定スキル」は手に入らずじまい。


 その後、第一の騎士の門を抜けて外へ出たものの……

 戻ってみれば──


 福引会場では、まさかの殺人(?)事件!

 ツョッカー病院では、まさかのゾンビ襲撃!

 命からがら逃げのびて──結果、はい、大・騒・動!!


 それでもくじけず、ついに! ついに!!

 あの恐るべき──

 魔豚 ダンクロール(制圧指標42)を打ち倒した?のだ!



 ……そして、物語は再び、ここから動き出す──。



 窓から差し込む朝の光が、タカトを優しく起こす。

 本日もまた、定位置──机の上での就寝であった。

 そう、これはいつものタカトの部屋、いつもの朝の光景。


 そして、当然のように、背後のベッドにも“定番”の光景がある。

 無防備なビン子が、襲われることもなく、よだれを垂らしながら高いびきをかいているのだ。


 いつもなら、ここでタカトがいたずらをしかけるところ──

 ……って、Hな事じゃないからね。

 鼻つまんだり、顔にマジックで落書きしたり、そういうやつwww


 ……だが、今日のタカトは違った。


 目を覚ますなり、勢いよく立ち上がる。

 そして、いきなり振り返ると──


 ためらいゼロで、ビン子の頭に空手チョップ!

 バキッ!

 ……え、やっぱりいつも通りじゃんwww


「いたぁいっ!」

 頭をかかえて飛び起きるビン子。


「お前まで寝坊してどうすんだよ!」

「え……!?」

 時計を見るまでもなく、オオボラとの待ち合わせ時間はとうに過ぎていた。


「今日も……背負い投げ確定じゃんか……」

「そしたら、これで六回目だね」

「アホか! ビン子、お前が代わりに投げられてこいよ!」

「やだよ……」

「あいつ、冗談通じないんだよ……マジでたち悪すぎる……」


 ぶつぶつ文句を言いながらも、二人は急いで支度を整える。

 ただ、音を立てず、そ~っと、静かに。


 というのも、タカトの部屋の向かいは、あの権蔵の部屋なのだ。

 しかも暑さのせいか、今朝はドアが開けっ放し。

 廊下越しに、ベッドで横になって眠る権蔵の姿が丸見えだった。


 ──よく寝てるな。

 タカトとビン子は顔を見合わせると、息を合わせて進み出す。

 抜き足……さし足……忍び足……

 こういう時の二人の呼吸は実に絶妙だった。

 まるでコントで演じられる泥棒のように、差し出す足がぴたりと揃っている。


 日頃から権蔵には、門の外に出ることを固く禁じられていた。

 騎士の門だけでなく、あちこちに発生する“小門”も同様である。

「タカト! 分かっとるじゃろうな! 小門の中には、魔の国とつながっとるものもあるんじゃ!」

 タカトが聞いてるのか聞いてないのか、怪しい顔をしてると──

 追い打ちのように来る、念押し。

「死にたくなかったら、門の外に出るな! 小門は絶対にくぐるな!」

 小言が止まらないのが権蔵の仕様である。

 そんな彼に気づかれぬよう、二人は慎重に足を進めた。


 そのとき──


「ごほん」


 権蔵の咳払い。でかい。タイミング良すぎ。なんか、わざとっぽくない?


 ……とでも思ったのか、廊下を進む二人の足が、ぴたりと止まった。

 まるでDVDの一時停止ボタンを押されたみたいに。ピクリとも動かない。

 しかも二人、完全に同じ姿勢。同じ顔。

 首だけがゆっくり、連動するように回っていき──

 寝ている権蔵の背中をじっと見つめる。

 ……誰も動かない。

 ……音ひとつ、しない。

 しばらくして、そっと顔を見合わせると、小さくうなずく。

 無言の合図で、再びそろそろと前進開始。


 ダイニングに抜け、ついに──目の前に外へのドアが!


 ガチャリ──

 うす暗かった二人の顔に、朝日がパァッと差し込む。


 ――やったぁ!

 ――外に出れた!

 その瞬間、タカトとビン子は、脱兎のごとく道具屋を飛び出した!


 森の木々のあいだから差し込む陽光が、道の上にまだら模様を描いていた。

 そのあぜ道を、息を切らしながら進むタカト。


 気持ちは焦るものの、体がまったくついてこない。

 そんなタカトの背中を、ビン子が「もっと早く歩いてよ!」とでも言いたげに、ぐいぐいと押している。


 その姿はまるで、学校に遅刻しそうな中学生のよう。

 幼馴染か? それともカップルか?

 ……ともかく、やけに息が合っているのは確かだった。


「もうだめだ……走れない……」


「また、オオボラに投げ飛ばされるよ?」

「フン! どうせもう遅刻確定! 今さら走ったところで、状況は変わらん!」

「それはそうだけど、努力したってことはオオボラだって分かってくれるわよ!」

 だから!──とばかりに、ビン子はさらに強く背中を押す。


 その先、道の向こう。

 イヤイヤながらも走るタカトの視界に、オオボラの姿が見えてきた。

 腕を組み、仁王立ち。

 足をトントンと地面に打ちつけている。


 ──もしかして、やっぱり怒ってる?


 遠目からでも、オオボラの怒りのオーラははっきりと感じ取れた。

 タカトは、背筋に冷たい汗がつーっと流れるのを感じた。


 ──ヤバい!


 本能的に危機を察知したタカトは、急に足をバタバタと動かしはじめた。

 背中を押していたビン子の手がスルリと外れ、バランスを崩して「おっとっと……」


 その目の前を、なぜか全力疾走をはじめるタカト。

 いや、明らかに“走ってるフリ”である。


 さっきまで普通に呼吸していたのに、急に「ハァッ、ハァッ」とオーバーな息切れ。

 汗なんか一滴もかいていないくせに、なぜか手ぬぐいで額をぬぐっている。


 ──あきらかに言ってる。


「オラ! 必死に頑張ったぞ!!」……と


 だが……演技、雑すぎ。


 オオボラのもとにたどり着いたビン子は、すぐさま深く頭を下げた。

「ごめんなさい。寝坊しました……」


 オオボラはちらっとビン子を見やると、無言でタカトをにらむ。

 何か言いたげな顔をしながらも、口は開かない。

 ただただ、ムッとしている。


 その横で──

 タカトは膝に手を当て、「ハァ、ハァ……」と大げさに息を切らせながら、

 なぜか涼しい顔で、ビン子を指さした。


「いやぁ〜ビン子がさぁ、寝坊してさぁ〜俺も大変だったんだよぉ〜」


 ――は?


 頭を下げたままのビン子は、目を見開いた。

 まさかここまでとは……まさか、”100%”の責任をこちらに擦り付けてくるとは!


 ――起きなかったの、タカト、あんたもだからね!?

 しかも、そのあとダラダラ歩いて、走りもしなかったくせに!


 遅刻の原因? それはもう8割はタカトで確定。事実だ。

 なのにこの男の表情ときたら、堂々と言い切っていた。


「オレは、悪くない!」


 それを見たビン子の脳内に、自然とひとつの言葉が浮かぶ。

 ――タカトなんて、死んじゃえ。


 その瞬間! 世界が回った……!

 いや違う──回ったのはタカトだ!!

 視界がぐるりと反転し、次の瞬間、背中にドンッと激しい衝撃。

 一本!

 オオボラの背負い投げ、見事に決まった瞬間だった!


「おおおお……」

 思わずビン子の口から感嘆の声が漏れる。

 両手は自然に拍手を始め、心の中では思い切りガッツポーズ。

 ──よくやった、オオボラ!


 一方、タカトはというと。

「いてぇぇぇぇぇぇ!!」

 背中を地面に打ちつけられた瞬間、視界がバグった。

 一瞬だけ、目の前にブロックノイズ。

 現実って、こんな風にバグるのか──と本気で思った。


 とはいえ、この背負い投げもこれで6回目。


 最初のころは見事に気絶していたが、

 回を重ねるごとに、タカトの受け身スキルも進化してきた。


 いまでは、何とか気絶だけは免れるまでにレベルアップしていた。


「遅い! この寝坊助が!」

 オオボラは開口一番、怒鳴り声を響かせた。

 タカトの腕をつかんでいた手をスッと離し、立ち上がる。


「あのさ、俺、低血圧なんだよ!」

 タカトはあおむけのまま必死に叫ぶ。


 だが、その声は完全に無視されて――

 オオボラは無言で森の中へ歩みを進める。


「今日こそ小門を見つけるぞ。早く来い!」


 そう──タカトとビン子は、よりにもよってオオボラと一緒に“小門”探索。

 え、そんなん絶対に権蔵にバレちゃダメなやつでしょ!?

 ……てことで、今朝のコソコソ劇場、開幕だったわけです。


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