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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 4章 ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編

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聖書

 いまだにビン子のケツの前で、カリ頭を垂れたままのハナゲの触手。

 ──こいつ、女にうつつを抜かしやがって!


 タカトもオオボラも、たぶん同じことを思っていた。

 というのも、この二人──どうにも女に縁がなかったのだ。


 え? ビン子は? コウエンは?

 まあ確かに女ではある。だが……問題はそこじゃない。


 怒らせたらメスゴリラ化するような女たちは、どうしても“性”の対象には見られなかったのだ。

 いやマジで、あれはちょっと違う……。


 なのにこの触手ときたら──

 女と見れば、種族も問わず即ロックオン。

 まさに見境なしのドスケベ変態野郎である。


 ──腹立つわ。


 とはいえ、無防備に近づけば今度は自分たちが狙われる気がした。

 下手を打てば、あのカリ頭がこちらに向く……そんな予感が、二人を動けなくさせていた。


 ――さてさて……どうするか……

 オオボラが真剣な面持ちで考え込んでいると、隣でタカトがパッと顔を上げた。


「……あっ! 思い出した! オオボラ、ビン子のカバンの中に“聖書”が入ってる! それを取ってくれ!」


「……聖書?」


 もちろん、この聖人世界にキリスト教なんてものは存在しない。

 強いて言えば、“異世界におけるありがたい本”といったところか。

 本来はイエスの教えに基づく悪魔祓いの儀式用の書──らしいが……目の前にいる珍毛や万毛は、あくまで“魔物”であって、悪魔じゃない。

 そんな連中に聖書が効くって……それ、マジかよ。


 ――いやいやいや。


 オオボラは、いかにも納得いかねえという顔をしていた。

 だが、ほかに手がないのも事実である。


 仕方なく、そっとタカトのそばに近づき、背中のビン子のカバンに手を突っ込んだ。


 ……が、すぐに手が止まる。


 中身は……カオスの詰め合わせ。

 まるでカバンの中は、ガラクタの宝石箱や~!(グルメリポーター・彦摩呂風www)


「なんだこれwww」


 手探りで引っ張り出したのは──

 アイドルの切り抜き写真が貼られた、一枚のうちわだった。

 裏面には、なぜか蝦夷アワビの写真がでかでかと貼られている。


 ──これは一体、どういう意味だ……?

 頭を抱えかけたオオボラだったが、


「もしかして、柄の部分を持ってグリグリ回すと──無修正画像になるとかか!?」


 ギクリッとするタカト。

 ──なんでわかった⁉


 だがオオボラに知られたら……コウエンやガンエンにチクられる可能性がある。

 特に、ガンエンなどは……


『タカトや……お前、こんなんでカリ頭を慰めておるのか……』


 などと、目頭を覆いかねない。


 ──それだけは、絶対に避けなければならない!


 焦ったタカトは、あわてて叫んだ。


「違ぇよそれ! それは“スカートまくりま扇”だっつの! 聖書! 本! 本のほう取れ!!」


 ──そうか……本、か。

 再びカバンの奥へと手を伸ばすオオボラ。

 なまめかしいポーズをとるバニーガールのフィギュアをかき分けた先、ようやく一冊の本が指先に引っかかった。


「これ……だな?」


 引っ張り出したその本は──

 どう見ても、聖書には見えなかった。


 表紙に刻まれたタイトルは……


 『アイナと縄跳び』


 そう、タカトが以前なくしたと嘆いていた、伝説のグラビア写真集のひとつ。

 この国一のトップアイドル「アイナちゃん」が、ブルマ姿で縄跳びをしているという──一見すると健全で微笑ましい内容。


 その健全さゆえ、一時は全国の学校図書館にも並べられたほどだ。


 ……だが、


 ページをめくるごとに、“縄跳び”は暴走していく。

 アイナちゃんのドジと共に、縄は絡まり、引っかかり、ほどけ、巻きつき……

 やがてその縄は、何かに目覚めたかのように、どんどんいやらしく、彼女の体へと食い込んでいく。


 そして──


 最終ページには、亀甲縛りにされたアイナちゃんの悩殺スマイル!


 ……もはや説明は不要だろう。

 これは“聖書”ではない。

 だが、マニアの間ではこう呼ばれている。


 神が地上に遺した、“性の書”──

 すなわち、“性書”。


 そして、めでたく教育委員会によって

「不健全図書」の烙印を押された、栄光の問題作である。


 ……まぁ、今はそんなこと、どうでもいい。


 というのも、どうやら、少々騒ぎすぎたらしい。

 さっきまでビン子に頭を垂れていたカリ頭が──今、こちらを向いている。


 目は無いはずなのに、まるで何かが自分の奥底まで見透かすような、ぞっとする視線を感じた。

 背筋を冷たいものが一気に走り抜け、体の芯から凍りつく思いだった。


 ──ヤバい!

 二人同時に、息を詰めた。心臓が鼓膜の裏で鳴っている。


 ドクン! ドクン!


 ――動くな、オオボラ……!

 タカトは視線だけで、そっと合図を送る。口は、動かせない。今、一音でも発したら……その瞬間、奴ははぜる。


 オオボラも察していた。

 ――わかってる……ここで動いたら、終わる……


 音を殺し、気配を絞り、まるで空気の一部になろうとする。

 だが、それでも伝わってくる。カリ頭からの“何か”が。

 ──“視られている”……明らかに。


 オオボラはそろりそろりと、一歩、また一歩と距離を取る。

 しかし、もはや距離の問題ではなかった。


 奴との間合いは手を伸ばせば届く範囲。

 いや──もはや空気ごと、奴の射程だ。


 オオボラのこめかみを、汗が伝う。

 熱い。痛い。肌の上を焼きつけるような恐怖の滴。

 やがて、その汗が──


 ポタリ。


 地面に落ちた。


 その瞬間だった。

 カリ頭が、ピクリ、と反応する。


 確かにオオボラの動きを“捉えた”──そんな直感が、脊髄を撃ち抜いた。


 カリ頭が、ゆっくりと向きを変える。

 頭の先端から、ねっとりとした液体がボタボタと垂れている。

 それはただの生理現象なのか、警戒のサインなのか、あるいは──喜びなのか。


 じり……じり……と前進する。

 無音で、だが確実に、オオボラへ向かっている。


 オオボラの全身が凍りつく。

 皮膚は粟立ち、背骨がきしみ、内臓が締め上げられる。

 ──終わったか……

 その思考さえ、頭の表面をなぞるようにしか浮かばない。


 だが──


 飛びかかってこない。


 なぜだ?

 殺気はある。視線もある。射程も十分。

 それでも、奴は“まだ”動かない。


 ……それが逆に、たまらなく怖かった。




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