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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 4章 ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編

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ぞ〜さん♪ ぞ〜さん♪

 だが、それぐらいのことで──オオボラの心が躊躇するはずもない!

 目の前に転がった万毛の上に、容赦なく足を振り下ろし始めた。

「くたばれ!」

「このクソビッチがぁああ!」


 そのたびに「ブシュゥッ!」という湿った破裂音が響き、腐りきったヨーグルトのような異臭が周囲に立ち込める。まるで地獄のゴミ箱をひっくり返したような臭気だ。

 オオボラは、「やるべきことは徹底的に」を信条としている。善悪など関係ない。ただ、自分の中の「筋」を通すだけの存在だ。


 さすがにその無慈悲な行動に、タカトが声を荒げた。

「オオボラ! やめろって!」


 万毛は魔物とはいえ、生きて動いている生物だ。

 珍毛をかばっていた、あのけなげな姿を思えば、蹂躙には心が痛む──と思いきや、どうやら違った。


「アホかお前! ここは洞窟の中だぞ! 空気が流れねぇんだよ!」

 タカトはゴシゴシと目をこすりながら、しかめっ面で叫んだ。


「お前のせいで、目がシバシバするし……喉までイガイガすんだよ!」

 腐臭が洞窟内にこもり、まるで毒ガス室のような有様になっていたのだ。


 どうやら、オオボラの目もシバシバしてきたらしい。

 鼻をひくつかせながら、振り上げかけた足を渋々と下ろす。


「なぁ、タカト。こいつらって、どれくらいここにいたと思う?」

「この数だもんな……完全に住みついてる。数年、いや、十年単位かもな」


 オオボラは無言のまま、うごめく万毛たちがうず高く積みあがった山を睨みつけた。

 それはすでに、小山のように通路を塞ぎ、行く手を完全にふさいでいる。


「──ったく。まずはこの山をどうにかしねぇと、先に進めねぇな……」


 足元には、すでに絶命した数体の万毛の亡骸。潰された体からは、腐臭混じりの体液が岩肌に広がっていた。

 その匂いに誘われたのか、あるいは仲間を惜しんでか──万毛の山の奥から、珍毛の触手がひときわぬらりと現れた。

 カリ頭を震わせながら、名残惜しげに、ぬるぬると這い出てくる。


「ブスリッ!」


 オオボラは情け容赦なく、刃をその頭に突き立てる。

 白濁の体液がドビュッと噴き上がり、なおも痙攣するカリ頭に、彼は軽蔑の唾を吐き捨てた。


 その時だった。

 唾を吐かれたことへの怒りか、それとも仲間たちを殺されたことへの報復か──

 ねばついた液体をしたたらせながら、カリ頭が静かに立ち上がった。

 それはまるで──蛇が鎌首をもたげるかのよう。


 いや、動いていたのは触手だけではない。

 目の前の万毛たちの山全体が、むくむくと蠢き始めたのだ。


 みるみるうちに、毛と肉がうねりながら形を変えていく。

 巨大な山から生える四本の脚。

 そして、その先端からぶら下がるは、カリ頭のついた触手!


 ──もしや、これは……!


 オオボラは目を見張った。

 そう、目の前に立ちふさがったのは──


 洞窟の天井に届かんばかりの巨体を誇る、

 毛と肉で構成された、もふもふでヌルヌルの──


 ……“ぞ〜さん”であった!


 ──って、しんのすけかよ!!


 オオボラの自分ツッコミも束の間、背後からタカトの叫び声が飛ぶ。

「オオボラ、気をつけろ! そいつは合体魔獣──『ハナゲ』(制圧指標38)だ!」


「象じゃなくてハナゲかよッ!」

 言った瞬間、自分でもツッコミがすべった気がして、オオボラは内心で後悔した。

 ──くそっ、こいつのせいでテンポが崩れた。


 というのも。


 切れかけていたはずの触手が、いつの間にか元の勢いを取り戻していたのだ。

 よく見ると、裂けた触手の断面に、無数の万毛たちがワラワラと群がっている。

 彼女たちは、手足のようなヒダヒダを器用に使い、断面を必死に押さえていた。

 まるで──傷口に殺到する白血球のように。


 オオボラは、その再生しかけた触手……いや、鼻……毛を、間一髪でかわした。


 というか……彼の足が滑っていたのだ。

 ツッコミじゃなくて。


「──来るぞ!」


 タカトの声と同時に、ハナゲのカリ頭がビュッと伸びた!

 ヌル光をまとった触手が空気を裂く──「ビュルビュルッ!」という効果音が、もはや卑猥以外の何物でもない。


「クソがァ!」


 オオボラは、腕ほどもある触手をギリギリで回避。

 横っ飛びに地を転がりながら、すかさず跳ね起きる。


「喰らいやがれッ──万命拳・裏奥義ッ!」


 気を一点に集中、抜刀と同時に雄叫びが響いた。


「『仏の顔も三度斬り』ィィッ!!」


 ズバンッ! ズバンッ! ズバンッ!


 三連撃が一瞬のうちに繰り出され、カリ頭の先端が短冊のように裂け飛ぶ。

 白濁の体液がドロドロと火山のごとく噴き上がった!


 ──だが。


「効いてねぇ!? てか、すぐ再生してやがる!」


 切り裂かれたはずのカリ頭が、万毛どもによって即座に補修されていく。

 ヒダのような小さな手足がわらわらと伸び、断面を接着剤のごとく塞いでいく様は、まるで肉の工場。

 見ていて気持ち悪いことこの上ない。


「おいタカト! どうやって倒すんだコイツ!」

「言ったろ!? あいつは“合体魔獣”なんだって! パーツが全部、万毛でできてんだよ!」

「知ってるわッ!!」


 次の瞬間、ズズズ……と地響き。

 ハナゲの巨体が四本脚でバウンドしながら迫ってくる!


「でけぇ! しかも跳ねるなッ!!」


 その場を転がって回避したオオボラの目の前で、カリ頭の先端からズルリと“鼻水”が滴った。

 ねっとりと糸を引き、酸っぱいような刺激臭を放つ謎の粘液だ。


「うっ……くっせえぇぇぇ!!」

「あれ、猛毒『スルメドリップ』だぞ! 一度浴びたら──“男でも妊娠する”からな!」

「なんだそのバフでもデバフでもない忌々しい効果はァ!!」


 状況は最悪。

 切っても切っても無限再生、臭気は毒ガス級。まさにジリ貧。


「なあタカト、弱点はないのか? 鼻の穴か? それとも乳首かッ!?」

「違う! 本体は──“珍毛の金玉”だ!!」


「どこだよそれ!! この象に金玉なんてねぇぞ!」

「まあ、万毛の集合体だし、おそらく“メス”なんだろ……」


「今! そんな生物学的分析いらねぇわァ!!」


「いいから聞け! あの巨体の中心、最奥に本体の金玉があるはずだ! あいつが命令出してるんだよ!」

「つまり、そいつだけをぶっ叩けば……!」


 オオボラは周囲を睨みつけた。だが、どこだ──どこにある?

 巨体のどこかに、本体の“金玉”があるはずだ。

 だが、この肉と毛の山を前にして、それを狙える術が──ない。


 ──どうやって、あの珍毛の金玉を叩けっていうんだよ!

 オオボラは悩んだ。









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