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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 4章 ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編

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タカトの眠気

 オオボラの背を追い、洞穴を進むタカト。

 背中では、相変わらずビン子がすやすやと眠っている。


 ──おい、こいつ、いい加減にしろよ……


 イライラとした感情が、じわじわと胸に湧いてくる。

 それもそのはずだった。タカトは、自分の視界が徐々にぼやけていくのを感じていたのだ。

 目は開いているはずなのに、景色の輪郭が、どこか曖昧になっていく。


 ──なんか……目の奥が痛ぇ……


 足を動かしているはずなのに、意識が身体に追いつかない。

 まるで眠気の底に引きずりこまれるように、ふらりふらりと重心が揺れる。


 「……うおっと」


 ビン子を落としかけ、慌てて背を正す。

 上を向いて目を見開き、何とか眠気を追い払おうとするが、それでもまぶたは勝手に降りてくる。


 ──いつから、こんなに眠かったんだ……?


 思い返せば、すでに洞窟に入る前から、眠気は忍び寄っていた。

 本当は、木の上で少しだけでも横になりたかったのだ。

 だが、それを冗談めかして口にしてみても、オオボラは鼻で笑っただけだった。

 いや、冗談に聞こえたのかもしれない。……だが、あれは本気だった。


 ──でも、朝は普通に元気だったよな。

 別に寝不足ってわけでもなかったし。

 なのに、どうしてこんなに、体が重い……?


 そう考えたとき、脳裏によぎったのは──あの瞬間だった。

 

 ミズイが、あのシワッシワの唇(※この時点ではまだババア)を、俺の首筋にぐいっと寄せてきた、あのとき。


 ──グワッと、何かを持っていかれるような感覚。


 ……あれからだ。おかしくなったのは。


 タカト自身は、まだ気づいていない。

 だが──あれは間違いなく、生気を吸われた証だ。

 生気。それは、命を動かす源──燃えるような、生きる力そのもの。


 あの時、ミズイはババアから美魔女へと若返った。

 それは、タカトの生気が彼女に移った証拠でもある。

 しかも、相手は神。

 神が喰らう生気の量は、人間が扱える範囲をとうに超えている。


 もし相手がタカトでなければ──

 そう、これが普通の人間なら、その瞬間に干からびて、ミイラになっていたかもしれない。


 だが、タカトは、かろうじて生き延びていた。

 けれど、奪われた生気の痕はまだ癒えず、今も静かに身体を蝕ばみ続けている。

 眠気はその最もわかりやすい兆候だった。

 それは、生きる力が、ゆっくりと尽きていくという──静かな警告。


 そんな時だった。

 前を歩くオオボラの動きが、ぴたりと止まる。

 そして腕を伸ばし、タカトの胸を押さえて静かに制止した。


 ……だが、睡魔に侵されたタカトの反応は一拍遅れる。

 制止された意味すら、すぐには理解できなかった。


「どうした、オオボラ……」

 あくびを噛み殺しながら、ぼんやりと問いかける。


 その声に応じて、オオボラが低くつぶやいた。

「……タカト、動くな」


 松明の明かりが、ゆっくりと左右へ振られる。

 湿った岩肌に、ぼんやりと浮かび上がるものがあった。


 ──何かが、うごめいている。


 モフモフした塊のようなものが、壁一面に……数十匹。いや、それ以上か……


 ──というか……もふもふ……?


 次の瞬間、そのうちの一体がタカトの頭上から落下してきた。


 オオボラが即座に反応し、反射的に鉈を振るう。

 一閃──落下したそれが岩肌に叩きつけられ、ずるりと滑り落ちた。


「……こいつは!」

 その姿を見て、タカトの目が見開かれる。

 そう、タカトは知っていた。こう見えても、魔物の知識にはちょっとうるさい。


「これは……『万毛(まんげ)』だな……」


 体はヤスデのように細長く、脚の代わりに無数の毛。

 もふもふしているようで、実際はおぞましい。

 毒こそないが──問題は、その体臭。

 腐ったヨーグルトを煮詰めたような悪臭を、常に撒き散らしている。

 噛まれても致命傷にはならないが、万が一人魔症を発症すれば命取りだ。


「オオボラ、こいつは平気! 制圧指標1だ。俺でも勝てるwww」


 ……しかし、タカトはすぐに嫌な予感を覚えた。

 『万毛』はムカデと同じで、雌雄で行動する。

 一匹見たら、もう一匹──いや、もっとヤバい奴がいる。


「オオボラ、気をつけろ……」

「ん?」

「こいつらが群れてるってことは──近くに『珍毛(ちんげ)』がいる!」

「なにっ、『珍毛(ちんげ)』だと!?」


 そう、『万毛』はメス。

 そして、『珍毛』はオスだ。


「しかも、この数の『万毛』を連れてるってことは──かなりデカい個体のはずだ」


 『珍毛』は一夫多妻制。

 多数の『万毛』を従えて移動する。つまり、王のような存在。

 さらに厄介なのは──やつが一本の“触手”を持っていることだ。

 その触手は、鞭のようにしなり、最大速度は音速を超える。

 しかも、表面には毒。少しでも触れれば、ただでは済まない。


 そしてここは、狭くて逃げ場のない洞窟の中。

 そんな化け物に襲われたら──冗談抜きで詰む。


「よけろ!」

 オオボラの怒声と同時に、タカトの頭が強引に押さえつけられる。


 次の瞬間──

 背後の岩肌が爆ぜるように砕け散った!


 ヒュンッ、ヒュンッ……

 暗闇の奥から、風を切る鋭い音がこだまする。


「オオボラ……奥にいる。『珍毛』(制圧指標23)だ……」

「なあ……タカト、その名前、どうにかならないのか」


 松明を振りかざしつつ、オオボラがぼそりとツッコむ。

 こんな状況でネーミングに文句をつけるあたり、余裕なのか、それとも緊張の裏返しか。


「そんなの俺に言うなよ。名付けたの俺じゃねぇし」

 タカトの反論は、至極まっとうである。


 だって──名前をつけたのは、何を隠そう……

 作者だwwww


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