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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 4章 ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編

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ミズイ再び……いや、三度!

 そこは──かつてタカトが魔豚・ダンクロールと死闘を繰り広げた、あの場所だった。


 広場の中央には、かつてダンクロールが崖にぶつかって崩れ落ちた巨大な岩が、今もそのまま転がっている。

 その岩に──黒いローブの人影が、ゆっくりと腰を下ろした。


 ローブの裾が風に揺れ、草の音すら吸い込むような静けさが、辺りを包む。


「おぉ……お主、久しぶりじゃの……」


 しゃがれた、しかしどこか艶のある声が響いた。


 ローブの隙間から、金色の瞳がのぞく。

 それはまるで、夜闇の中でも獲物を見逃さぬ猛禽の目──

 じっとタカトを射抜くように、見つめていた。


挿絵(By みてみん)


 しかし、タカトは──この顔、いや、この圧の強さにどこか覚えがあった。


 ……しばしの沈黙。


 眉をひそめ、目を細め、首をかしげて……そして──

「あっ! あの時のババァ!」


「ババァではないわぁあああッ!!」


 ローブの人影──ミズイが立ち上がって大絶叫。


「ミズイじゃ! ミズイ! “鑑定の神”ミズイさまじゃ! というか! さっさと思い出さんかい、このスットコドッコイがぁああッ!」


 その迫力に、あたりの木々がびくんと震えた……ような気がした。

 ──だが、タカトは完全スルー。

 むしろ隣のビン子と顔を見合わせ、

「あーあ、また出たよ」「またあのババァだよ」

 と、まるで幽霊か害獣が現れたかのようにヒソヒソと話し出す始末。


 だが、オオボラがとっさにミズイの前で膝をついた。

 ……この所作、どこかで見覚えがある。

 そう、ヨークと同じだ。

 すなわち、神に対する畏敬の念を示す正式な礼法なのである。


「神様でしたか。ご無礼、深くお詫びいたします」


 オオボラの低い声に、ミズイは満足そうに頷いた。


「よいよい……礼儀正しき者には、こちらも穏やかになれるものじゃ」


 ――おい、さっきまで「ババァではないわ!」と叫んでたよな! お前!。

 そんなツッコミを心で飲み込みつつ、オオボラは表情を崩さずに尋ねる。


「それにしても、神様。こんな森の奥地に、何のご用でしょう?」


 そう、ここは人の気配など皆無の森の中。

 神がわざわざこんな場所に現れる理由とは──

 一瞬、オオボラの頭に「人目を避けていたのでは?」という疑念が浮かぶ。

 だが、それはすぐに打ち消された。


 ──もし本当に隠れていたのなら、自分たちの気配を察した時点で、すでに姿を消していたにちがいない。


 それなのに、この神は──

 あたかも“待っていた”かのように、ここに立っていたのだ。


 ミズイはローブの隙間から、鋭い金色の目でタカトをにらみつけたまま言った。

「なに、そこのガキが──あの邪魔なダンクロールを倒してくれた礼をしようと思ってな」


「……なんでババァがそのこと知ってんだよ!」


 ミズイはニヤリと口元をゆがめ、からかうように続けた。

「お前──神様に“求愛の舞”を捧げたであろうが? 『チンチンコロコロ〜〜〜〜! ちんころろ〜〜〜〜〜!』となwww」


 ぐっ……!

 た、確かに……


 タカトはダンクロールの死体のまわりで、喜びを爆発させる“謎の舞”を踊っていた。

 だが、それはあくまで、勝利の喜びを表現しただけ──のはずだった。


「あの舞、マジで“求愛の儀式”だったのかよ……」


 タカトの顔から、みるみる血の気が引いていく。

 知らなかった。

 いや──知りたくもなかった!


「でな、お前の求愛を……受け入れてやってもよいと思ってな♡」


 そう言って、ミズイの頬がほんのり紅に染まる。

 褐色の肌に浮かぶその色は、どこか乙女のようで──


 ……ちょっとだけ、かわいい♡


 だが。


「いやだッ!!!」


 タカトは即答、というより即絶叫した。


 ──アホか! 頬が染まろうが、関係ねぇ!!

 見た目はどう見積もっても、八十オーバーのババア!

 腰は曲がってるし、顔はしわっしわ、魔女どころか“干からびたレディーカーネーション”じゃねーか!

 もし、こんなのと一緒に寝たりしたら、俺の『立チンぼ』が魔の生気に侵されてイボガエルに変わっていたりとか……

 笑えねぇ! マジで!


 そんな魔女系ババアに

 「付き合ってあ・げ・る♡」とか言われて

 「うれピィ♡」なんて返す男がいたとしたら……


 ……そいつはもう、“勇者”でも“男”でもない。

 ただのベロベロチューリップ以下の存在である。


 だが、ミズイは話を変えた。

「まぁ、それはそれとしてな……実はちょっと、また生気が切れてきたもんでな……」

 物欲しそうな目で、じっとタカトを見つめる。


 ──あの顔は……またおねだりか?


 コンビニの前で倒れていたミズイに、タカトは気の毒に思い、有り金はたいて命の石を買ってやった。


 ――だが、あのババア──礼も言わずにとんずらこきやがった。


 いや、礼は来たのか……第一の門に向かう途中で、鑑定スキルを授けに現れたのだ。

 だが、タカトはすでに上位スキルを二つ持っていたらしく、何ももらえなかった。

 結局、何も渡さず、何ももらわず、そのまま消えた。


 今にして思えば……

 ──いったいあのババア、あの時何しに来たんだよ!?


 それなのに、また三度もタカトの前に立ちふさがる。

 しかも、物欲しそうな顔で。


 思わず後ずさりしながら、タカトはズボンのポケットを押さえた。

「俺、今、金ねぇぞ。もう命の石なんて買えるほど持ってないって!」


 ビン子にはすぐにわかった。いや、ビン子じゃなくてもわかるけどwww


 タカトのズボンの中には明らかにお金が入っている。

 ただ、どんなに多めに見積もっても、大銅貨2、3枚(200円、300円)程度が関の山だろう。

 それでもタカトにとって、そのわずかな大銅貨は命に匹敵するほど重いものだった。


「ないないない! 絶対に持ってない!」

 必死で後ずさりしながらそう抵抗するタカト。


 そんな彼を、ミズイは鼻で笑う。

「お前の小遣いなど、期待しておらんわ!」


 そして怪しく笑みを浮かべ、一つの提案を差し出した。

「お前たち、小門を探しておるのだろう。その場所、教えてやってもいいぞ」


 ミズイの言葉を聞いた瞬間、タカトの顔がぱっと明るくなった。

「本当かよ、ババァ!」と思わず口にする。

 これまでの苦労(?)が一気に報われるかもしれないのだ。

 もし小門が見つかれば、伝説のキーストーンを手に入れて、一攫千金の夢が叶う――そう信じて疑わなかった。


「だから言っておるだろう! ババァじゃない! ミズイじゃ! ミ・ズ・イ!」

 ミズイは少し甲高い声で言い返す。

 まるで幼女が甘えているように手をバタバタさせるその姿は、どこか可愛くも見えた。

 ──だが、見た目は明らかにババアである。

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