思いもかけず特技があった
『わ、奈々香めっちゃ歌うまいやん!』
『え、そんなん初めて言われた~、ありがとう』
今日は大学のゼミの第1回飲み会、二次会のカラオケで思いもかけず褒められた。
三年から始まるゼミでは少人数のゆるいゼミに入った。みんないい人そう。私は一年から、なんとなく授業を受けて、なんとなく単位を取って、空き時間にバイトをして、というごく普通の大学生活を送っていた。
『奈々香は、何かサークルとか入ってるの?』
実は、人間関係とかめんどくさいのが大の苦手でサークルには入らなかった。
『ううん、何にもはいってないよ』
隣で曲を選んでいるめぐみに答える。
『え、めずらしーねー、高校時代は何やってたの?』
『帰宅部』
つまんない人間だなあと思われるんだろうなあ。
『無趣味?』
うーん、そういえばこれといった趣味なんてないかも、かなしい。
『もし、良かったらさ、うちの音楽サークル入んない?』
『へ?』
もはや三年だし、さすがにそれはなあ。
『もう私三年だよ。ピチピチの一年にまざって新歓されるのなんか気が引けるよ。図々しくない?』
断るのなんか気が引ける。
『全然学年とか年とか関係ないよ!奈々美歌うまいし、すごい戦力になると思う、うち歌い手少ないんだよね。試しに遊びに来てみない?』
『いやいやいやいや』
『三年や四年で入る人結構いるよ!』
うーん、ちょっとなあ。
『ね、お願い!お願い!』
腕を引っ張って離さないので、とりあえず一度見学だけということにしていってみることにした。満面の笑みをうかべてはしゃがれた。
『わーい、やったあ!!幹事長に頼んでいれてもらおー!
』
さっそく明日、めぐみのいるサークルへ行くことになった。