色の無い友情
「サッカーめちゃくちゃ上手いじゃん!」
転校してすぐの頃、クラスに馴染めないでいた自分に声をかけてきたのは、歩だった。その日の体育の授業で、偶然あいつと同じチームになってサッカーをした後のことだ。
当時、親の仕事の都合で転校が多かった自分は、どうせ友達を作ってもすぐに離ればなれになるだろうと思い、クラスメイトと関わることは極力避けていた。
そのせいか、初日から冷たい態度を取ってしまった自分は、クラスのボスみたいな男子に目をつけられてしまい、誰も話しかけてこようとはしなかった。
そんな中でも歩だけはよく声をかけてきた。その度にあいつは、「一緒にサッカーやろうぜ」と自分が通っていたサッカークラブを紹介してきたのだ。
最初は断っていた。もともとサッカーは好きで休みの日には一人で練習もしていたが、誰かと一緒にやろうなんて発想はまったくなかった。
それでも結局、彼の熱意に押された自分は歩と同じサッカークラブに入る事になり、そこで初めてチームでスポーツをする楽しさを知った。
ちょうどその頃、親の仕事が変わって転校することも無くなった自分は、歩と関わることでクラスのみんなとも馴染んでいくようになった。自分のことを嫌っていたクラスメイトたちも、歩が声をかけては関わるようになり、気がつけば一緒によく遊ぶようになっていた。
たぶん自分はあの時から、心のどこかで歩に憧れてたんだと思う。
サッカーが上手くて、人をまとめることができるあいつのことを。歩が最初に声をかけてくれることが無かったら、今の自分はなかった。汗水垂らしてボールを追いかけることもなかったし、勝つ喜びや、負ける悔しさを誰かと分かち合うこともなかった。
だからこそ歩がサッカー部を辞めると言ってきた時、本当は何としてでも止めたかった。
それはもちろん友として、そして同じチームの仲間としてというのもあったけど、それ以上にあの時の歩の目を見て、あいつがもう二度と前を向いて進めないんじゃないかと思ったからだ。
でも結局、歩の選択を変えることはできなかった。
共に走り続けた仲間は、それから変わってしまった。一人孤独の世界に閉じこもっていた、かつての自分のように。




