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俺たちは惹かれ結ばれ、別れを告げる。  作者: ゆ〜た
現代日本(?)編
4/23

3話

あれから校内の色んな場所を探し回った。そして、屋上に出る扉の前で見つけた。


「おい、大丈夫か?」

「ひゃっ!にゃ、にゃんでここが!?」


彼女は真っ赤になっている顔をこちらに向けて尋ねる。あと噛みながら……


「行きそうな場所を全部回っただけだ。んで、ここにいた」

「ふぇ?わ、私を探すために全部回ったの?」

「ん?ああ、そうだけど?」


なんで聞き返したんだ?ちゃんと聞こえてたはずなのに……まあ、いいや。俺は彼女に弁当を渡す。


「はい、これ。置いてっただろ?」

「あ、ありがと……でも、あなたの分は?」


言われてから気づいた。やべ、机に置きっ放しだ。でも取りに帰って、食べるような時間はもうない。今日は昼飯抜きだな……


「その、よかったら食べる?」

「いや、いいよ。人のものを取ってまで食べるようなものじゃないからな」

「作ってくれた親御さんに失礼だよ」

「大丈夫だ。作ったのは俺だからな」


高校に入ってから弁当を作るのは俺の仕事になった。なんでも今から料理を作れるようになっときなさい。だ、そうだ。作るのが面倒になっただけだろうに……


「そ、そうなんだ……」

「そうだ。それはそうと早く食えよ、もうあんまし時間ないぞ?」

「う、嘘っ!?い、いただきます!」


彼女の口はパンパンに膨れ上がった。そんなことしたら喉が詰まるぞ……あぁ、言わんこっちゃない。


「そんなに詰め込むからだ。ほら、階段を降りたら冷水機があるから。飲んでこい。少しは楽になる」


彼女はこくこくと頷き、下に降りて行った。はぁ、今更だけどなんで俺がこんなことしてるんだ?本当なら今頃は教室で寝ているはずなのに……

そんなことを考えているとポケットに入っていたスマホが震える。どうやら電話のようだ。誰だよ……


「って、結奈じゃねぇか。はい、もしもしなんだ?」

『あんた今どこにいるのよ』

「屋上の前だけど?」

『あんた弁当置いて行ったでしょ?捨てられそうになってたわよ?』

「はぁ?」


なんで、んなこと……って十中八九嫉妬によるものだろう。全く、被害に遭っているのはこっちだと言うのに……


「まあいい、それで?どこに捨てられたんだ?あとで回収してくる」

『言ったでしょ、捨てられそうになった(・・・・・・・・・・)って。そうなる前に回収してあげたわ。感謝しなさいよね』


なん、だと?あの冷酷卑劣な残念系美少女の結奈が俺の弁当を守っただと?そうだ、きっと何か裏があるに違いない。


「言え、一体何が目的なんだ?」

『はぁ?ばっかじゃないの?それとも何?捨てて欲しかったの?それだったら今すぐにでも捨ててくるわよ?』

「ごめんなさい。謝るんで捨てないでください」


どうやら俺の考えすぎだったようだ。あっ、編入生の子が帰ってきた。


「ありがとう、んじゃ」

『あっ、ちょっと待ちなsーーー』


俺は通話を切った。最後に何か言いかけてたけど無視でいいだろう。


「大丈夫だったか?」

「う、うん。ありがとう」


別に礼を言われるようなことはしてないのだが?彼女は再び弁当を食べ始める。

そう言えば何であの時何で逃げるように出て行ったんだ?


「なぁ、何であの時逃げたんだ?別に逃げるようなことをした覚えはないぞ?もしあったら謝るが」

「ごほっ、ごほっ!」


彼女は突然咳き込んだ。どうやら気管にご飯が入ったようだ。俺は優しく背中をさする。


「大丈夫か?」

「う、うん。ごめんねさっきから」

「いや、別に大丈夫だ。それで、何でさっきは逃げたんだ?まあ、言いづらかったら別に言わなくてもいいが……」


彼女の顔は見えないが、背中にある手から彼女の体温が上がっていくのはわかる。


「か、可愛いって言われたから」

「は?」


気のせいだろうか?ものすごくちっぽけな理由な気がするのは。


「だ、だから、可愛いって言ってくれたから!」


どうやら聞き間違いではないようだ。何でそれで逃げることになる……?

俺は首を傾げざるを得なかった。

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