1話
「ーーーーーって言う夢だったんだけどどう?」
「ふぅん、あなたが死ねばよかったじゃない。死んだ彼女が哀れだわ」
「はぁ……」
俺に対して辛辣な言葉を投げかけるのはこの学校の美少女の代表格である浅見結奈。
そして俺はクラス内……いや、学校内ヒエラルキーぶっちぎりの最下位である。
そんな俺がどうして彼女と話をしているのか、それは席が隣というのもあるが、やはり俺たちが幼馴染だからである。昔は仲も良かったのだが最近はもうあんな感じだ。話の返事は「死ね」とかばっかだし。何をしたわけでもないのに蔑みの表情を向けられる。
それでも俺が彼女と話す理由は、実のところ彼女は友達が少ないのだ。もともと持っていた美貌や俺に対する蔑みの表情によって、すっかり女王様ポジが確定してしまったのだ。哀れな……
「何よ、気持ち悪い」
「少しでもお前を思いやった俺が間違ってたよ!ちくしょう!」
本当にどうしてこうなった?
「お〜い、お前ら席につけ〜」
ガラガラと音を立てて担任が入って来た。それを合図に全員が席に着く。
「今日はお前たちにいい知らせがある。入ってくれ」
「はいっ!失礼します!」
担任の呼び掛けで入って来たのはとてつもないほどの美少女だった。しかも、俺のストライクゾーンど真ん中。……ってこれはいらないか。
突然のことにクラス内がざわざわし始める。
「彼女は親の都合でしばらくの間この学校に通うことになった。みんな、仲良くしてくれ」
「えっと、王野魔夜です。よろしくお願いします」
「それじゃあそこの空いている席に座ってくれ」
「わかりました」
そう言って彼女がやって来たのは俺の隣の席。クラス内の嫉妬の目が俺に向けられる。文句があるなら先生に言ってくれ。マジで。
その後は軽く今日の予定を伝えて担任が出て行く。そして彼女の周りに殺到する人たち。俺と結奈は端っこの方へ避難した。
「彼女、すごい人気ね」
「まあ、編入生でしかもあんだけの美少女だ。そりゃ人気のない方が………って痛え!何しやがる!」
結奈は俺の脛を蹴る。あの弁慶が泣くほど痛いところなんだからな!?
「ふんっ、知らないわよ」
「お前なぁ……まあ、いいや。それはそうと今度勉強教えてくれないか?ほら、そろそろテストだろ?」
「いやよ、めんどくさい。あんたなんかロクな点も取れずに終わればいいのよ」
「はいはい、そうですか。お前に聞いた俺がバカだったよ」
「ええ、そうね」
そこは否定して欲しかった……もしくは何も言わないとかさ?俺がため息をついていると奥の人だかりから1人の生徒がこっちに来た。いや、こっちに来ると思っているのは俺の傲慢か。うん、そうだよな、うん。今話題になっている美少女が来るなんて。
「あの、すみません」
うん、幻覚に加えて幻聴まで聞こえて来た。
「なぁ、結奈。今度いい精神科を紹介してくれよ」
「ええ、いいわよ。どうせなら今からでも行ってくれば?」
よかった。俺の頭がおかしかっただけみたいだ。
「ただし、その子の用事を済ませてからね」
「もう!ひどいじゃないですか!なんで無視するんですか!?」
「はぁ……やっぱり現実か。それで、一体なんの御用でしょうか?」
はぁ、なんでよりにもよって俺みたいな底辺野郎の所に来るのだろうか……
「えっと、あとでこの学校を案内して欲しいんだけど……」
「………すまん、聞こえなかった。もう1度言ってくれ」
おかしい、やっぱり精神になんらかの異常があるに違いない。今度マジで行ってこよう。
「だから、私にこの学校を案内してって言ってるの!」
聞き間違えだったらどんなに楽か……クラスの人たちのヘイトも溜まりつつある。めんどくさいけどここは素直に受けておくか……めんどくさいけど。
「わかった。あとでな」
「うん!」
はぁ……あえてもう1度言おう。めんどくさい。
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