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3、ラブコメ不可の学校


「俺がこのクラスの担任になった、詩理穴右画津(しりあなうがつ)だ。詩理穴先生と呼ぶように!」


 あれから、ところ変わり。

 現在は自身のクラス1ーHだ。既に全員が席についており、今は担任の先生が自己紹介をしていた。


 ん? おかしいところがあった? HaHaHa! ドコガオカシインダロウ?


  とにかく! これからの流れはある程度予想がつく。担任が自己紹介を終えたのだ、となると次は__


「うしっ! 次はお前らの番だぞ。出席番号順に一人ずつ自己紹介だ」


 __と、なる訳だ。


 こうなる事は予想がついていたので驚きは無い。

 自己紹介で喋る内容もある程度考えているしな。


「じゃあ……亜鳴からだな!」


 担任の詩理穴先生が示したのは、その長すぎる前髪で目が完全に隠れているのが特徴的な細身の男子だった。

 その男子生徒はその場で起立し、綺麗なお辞儀を一つ。


「はい。皆さん初めまして。亜鳴星(あなるスター)です。好きなプレイはア○ルで『Pi————』を『Pi————』することです。これから1年間よろしくお願いします」


 亜鳴はぺこりとお辞儀して席に座った。

 

 あらま、礼儀正しい__じゃなくてっ!!

 あれは確実にアウトだろう! 初日からキャラを作ろうと頑張ったのかもしれないが、可哀想に。ソッチの方向に、それも先生がいる目の前で頑張るとは……。


 これは、確実に怒られるだろう、と担任の詩理穴先生の様子を伺う。


「そうかそうか! その年でア○ルか……若いな。先生も昔はブイブイ言わせていたんだがなぁ……」


 えっ!? 怒らないの? アレは流石にアウトだと思ったんだが……。


 うちのクラスには女子だっているんだぞ! 

 と、そこで女子が嫌がっているのではと思い至った俺は、女子の反応を見るために後ろを振り返った(因みに俺の席は真ん中の列で前から3番目だぞ)。



「へぇ、スターなんて名前、実際にいるんだ……キラキラネーム? って言うんだっけ?」


「……zzz」


「フフフ。アァ、やはり私は今日も美しいな」


「あっ、あの子可愛いなぁ…………食べちゃいたいくらい……ジュルッ」


「…………」



 アレっ? 反応薄くねっ!!? てか、みんな興味無さすぎだろ! 


 その調子で自己紹介は順調? に進み、遂に倫太郎の番となった。


「初めまして。工藤倫太郎って言います。好きな体位は騎乗位です。これからヨロシク!」


 クラスの反応は殆ど無かった。強いて挙げるなら、詩理穴先生がウンウンと頷いていた事くらいか。


「騎乗位、か……若いな。先生も昔は__」


 よーし! 次は明美の番だな! 


 えっ? 突っ込まないのか、って? HaHaHa! ちょっと何言ってるか分からないですね。



「えーと。皆さん初めまして。西園寺明美です。趣味はSMプレイです! これから1年間よろしくお願いします」


「SMプレイ、か……若いな。実は先生はM__」


 ハイっ! サクサク行きましょう。


 遂に次は俺の番だ。言う事は決まってあるとは言え流石に緊張するな。


「__一年間よろしく〜」


 俺の前の席に座っている、幸薄そうな女子が自己紹介を終え着席した。


「えー、次は、っと。田原直也」


「はい。皆さん初めまして、田原直也です。突然ですが、皆さんに一つだけ言いたいことがあります。それは__」



 俺が言いたい事は決まっている。



 素晴らしい学校設備に、学校生活に彩りを与えてくれる友の存在。素晴らしい環境と言って差し支えないだろう。



 だからこそ……だからこそ、俺が言いたい事は一つだけ。




「__この学校、ヤバくね? 退学したいんですが、どこで申請すればいいですか?」



 以上だ。これにて本編は完結__



「? ハッハッハッ、退学なんて出来る訳無いじゃないか。入学する時に、誓約書にサインした筈なんだが……」


 誓約書? そんな物、サインした覚えは……ある。


 ……そうだ、思い出した。あの時は確か__



 ------------------------------------------------------


『直也ー。学校から何か書類が来てるわよ』


『ホントだ。え〜何々、〝田原直也 様。おめでとう御座います。厳正な審査の結果、貴方様は当校に入学する資格を得ました。つきましては、入学する意思がある場合におきましては、本書に同封されている誓約書に署名した後に下記の住所までお送り下さい〟か。へぇ、面接通ったんだ……って、ええぇえぇえぇぇえぇ。通ってる〜!? えっと、この書類にサインすればいいのか? 田原直也、っと。これで良し!』


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 これで良し! じゃ、無ぇよ!!?


 えっ、じゃあ何か。俺は既にこの異常な学校に3年間通います、って書類にサインしてるから退学は出来ない、と?


 あるぇ? なんだか目にゴミが突き刺さったゾ〜。


「おっ! なんだなんだ。このクラスで過ごすのが泣くほど嬉しいのか? そうかそうか! それは上々だな。先生も楽しみだぞ〜! はははははっ!」


「……はは。ワーイ、トッテモタノシミダナァ。コレカラヨロシクネ」



 何だろう。この胸いっぱいに広がる虚無感は……



 あっ、飛行機雲だぁ。平和だなぁ、ウン。やっぱり平和が一番だよね。


「よしっ。これで全員分終わったな。来週からは授業が始まるからな〜。教科書を忘れるなよ」


 どうやら、自己紹介が終わったようだ。

 今日は金曜日で、土・日が準備期間となる。この学校では、全ての生徒が部活動に所属しなければならない。この土・日は所属する部活動を決めたり、月曜日から始まる学校生活に向けて準備するための時間という訳だ。


「じゃあ、また月曜日に会おう! 解散!」


 その言葉をキッカケに、クラス内が一斉に喧騒に包まれた。

 聞こえてくる声からは、これからの学校生活に対する期待からか、喜びの感情が読み取れた。


 ……はぁ、ラブコメも真っ青な美少女と過ごす学園生活は一体何処(いずこ)へ。



「おーい、直也。今から、部活の見学に行かね? 俺的に、卓球部とか良さげだと思うんだけど」


「直也くん。これから暇かな? 一緒に部活動見学に行かない? 私的にはバレー部とか一押しなんだけど!」


 

 ……ラブコメ学園生活も楽しそうだけど、今はこの友達(アホ)共と過ごす学園生活で妥協しておくとしよう。



「卓球とかマイナーな球技は却下。バレー部は……そもそもこの学校に男子バレー部が無かったはずだから論外」



 この時の、俺は知る由も無かった。()()()()()、この学校では挨拶程度でしか無いことを。

 それを知らなかった俺は、この学校の()()の洗礼を受けることになる。


「まっ、まずはどんな部があるか見て回るとするか」





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