ふとんがぶっとんだ!
「・・・え、君だれ。」
旅行から帰ってきたら、部屋に黒髪ロングの着物美少女がいた。ヤバい、どうしよう、いつの間にか誘拐してしまったのだろうか。
「・・・・うわき者・・・。」
「え?」
部屋間違えたかな?と、一旦外に出て部屋番号を確認してみるも、やっぱり合ってる。あ、もしかして大家さん部屋私に黙って売った?許さんぞあのハゲ大家!夜中だけど、押しかけてやる!!
「どこいくの・・・?もしかして、またアイツのところいくの・・・・?そんなの、許さない。」
「ひぃっ・・・・!!!!」
外に出て駆け出そうとしたら、がしっと服の袖を掴まれた。さっきまで部屋の隅にいたのに!とんでもねぇスピードだぜ!!
「えっと・・・・迷子、かな・・・?」
「なにいってるの?ずっとまえから、あそこにいたよ・・・・。」
そういって指さす先にはなにも入っていない押し入れ。え、もしかしてこの子・・・。いや、これまで怖くてあんまりその可能性は考えないようにしてたんだけど・・・。黒髪ロングに着物とか・・・しかも目元見えないって・・・どう見ても・・・
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・・・!!!」
「ずっと、いっしょにいたのに・・・わすれるなんて・・・ひどい・・・。」
どうしようこの幽霊、成仏してくれない。霊媒師とかよべばいいのかな?え、でもこんな夜中ってきてくれるもんなの?
「許さない・・・・・・。」
うひょおっ!!!なんか近寄ってきた!!!なんか威圧感と謎の安心感があって逃げられねぇ!!安心感ってなんだ!!私は恐怖のあまりついに・・・・!!!
「お、お、お、お、お前は私になんの恨みがあるんだぁっ!!!!!」
ひえっ!!抱き着かれた!!!やっぱりなんか安心感がある!!!どうしてだ!!!?
「くさい・・・・。」
し、失礼な!!!悪かったな酒を浴びるほど飲んで!!!
「いつも、いつも・・・・長期間でかけるたびに他の奴に抱かれて帰ってくる・・・・。」
ほえぁ!!!?いやいやいやいや!!私、小学生以降彼氏とかいないよ!!?彼女もね!!!
「こんど、こんなことしたら・・・・ほんとうに許さない・・・・。」
・・・・・・いや、ちょっと待てよ。
「お前は私の彼氏かなにかか!」
幽霊だろ?お前。それに私、思いっきりストレートだよ。ビアンでもなければバイでもないよ。
「きみの布団・・・・。」
「ヤバいどうしようなんか言ってる・・・・。」
幽霊のくせになんか適当なこといいだしたよ。
「きみが、赤ちゃんのころからきみをあたためてきた布団・・・・。かけ布団・・・・。」
・・・・・よーく見てみると、服の柄が・・・私の・・・掛け布団だ・・・。え、マジで。こんなことってあり?いや、幽霊がありならありか・・・・?
「百年使われたから・・・・この度、九十九神になったよ・・・。」
嘘だろ!!って、あのばあちゃん、私にそんな古いもん使わせてたのか!!!
「これから、よろしくね・・・。今回のことは、許す・・・・。だから、はやく・・・僕のなかに入って・・・・。」
そういいながら、敷き布団に倒れてこちらを上目遣いで見やる。
うわぁ・・・なんか・・・なんか・・・・。
「いっしょに、ねよ?」
私は今日からロリコンの仲間入りです・・・。これから毎日ロリと同じお布団で眠ります・・・。いつか大家さんに見つかって通報です・・・・。だってこんな美人めったにいないもの・・・私が誘拐してきたようにしか見えないに違いない・・・。ああ、新しい布団明日買いにいこ・・・。そうすりゃ万事解決?だ・・・・。
そんなこんなで私のお布団の九十九神との同居生活(もともと同居してたけどね!そんな意識を持ったことはなかったよ!!)が始まった。
* * * *
「おはよう。」
あー!爽やかな朝だ!!・・・・・鶴がいなけりゃね。あ、鶴というのはあの布団の名前。せっかく人間の姿になったので名前が欲しいというのでつけてあげた。由来は布団の模様からだ。ちなみに最初に私がつけようとしたふったんと二番目につけようとしたふっちょという名前は拒否られた。残念だ。いい名前だったのに。ついでに、衝撃事実が判明した。あの布団、実は男だったらしい。いや、精神的にはどちらでもないらしいが・・・・肉体的にたまたまそうだったらしい。なんだよたまたまって!やりにくくなるだろ!女の子の方がまだよかったよ!!色んな意味で!!
「ん・・・まだ、だめ・・・。」
布団の温度に体温が影響されるのか、丁度布団と同じくらいの体温で私にぎゅーっと抱き着いてくる。ああ、ヤバい。マジ可愛い・・・・!!!私、ロリコンかもしれない・・・・。いや、ショタコンか・・・。
・・・・・・って、いけないいけない。今日は・・・・
「お買い物にいくからさー、ねー!」
え?なにを買うかって?布団に決まってるだろ。夜は布団の姿でいてくれるからいいけど、朝起きると人間の姿になってることが多いんだよ!寒いわ!!
「そうなの?じゃあ、僕もいく・・・・。」
いや結構です。
「今日はこなくていいよ。お家で待っててね。」
「僕もいく。」
「お家でまっててね?」
「ついてく。」
「ははは。」
どうせ、買おうとしてることがバレたらキレるんだろ。ヤンデレるんだろ。
「・・・・・・・。」
そうだ。騙そう。
「じゃあ、また寝よっか。」
「・・・・・うん。」
* * * *
「うーん、どれにしようかなー。」
鶴は寝てる間においてきた。しばらく起きない・・・と信じたい。
「・・・・・赤でいくか。」
青とか選んだら、僕の色が気に入らなかったんだね?絵具ぶっかけて変えてやる!!・・・・とか言い出しそうだしなぁ・・・・。
「ねぇ、」
うーん、鶴デザインにするかぁ?
「ねぇ・・・なに、やってるの?」
うーん・・・・
「きこえてるでしょ?」
・・・・・・・・・。
「・・・・そこの布団、やぶっちゃおうかな・・・・。」
「ひぇえええ!!ごめんよぉ!!!!!」
頼むから!頼むからやめろぉ!!!我が家の経済状況はそこまでよくないんだよぉ!!
「僕をだまそうなんておもっちゃだめ。」
「はぃぃい・・・・・・・。」
「わかったら・・・・かえろ?」
「ははは・・・・。」
ふとんって、つよい。
* * * *
「ところで、どうして私の居場所がわかったの?」
「愛。」
・・・・ごめんなさい、さきほどの言葉は間違いだったようです。正しくは・・・
やんでれって、つよい。
『花園』新シリーズの「不運だけど、生きているので幸せです!」もよろしくお願いします。