俺はな、冗談が嫌いなんだよ。
昨晩はお楽しみでしたね。
今日は犬助に起こされることもなく、自分から起きれた。
奴らが酒に女に浮かれている間に実は俺もやることはやってたんだ。
いや、下ネタ的な意味じゃなくてね。
ボス達が魔物狩りをしないとゴールドやポイントが入らない。
魔石も同様に。
だから夜中にズズとゼゼを外に出させて森の中でスライム達と合流させた。
ズズとゼゼは簡単に外に出してくれた。てか、ほとんどフリーパスだ。
見張りの盗賊もアジトの中で糞なんかされたくないだろうしな。
だから夜のハンティングを計画したのだ。
朝までに戻ってさえいれば特に怪しまれないだろう。
成果はゴブリン3匹と鳥の魔物1匹。
狩り方としてはズズとゼゼが獲物を追い回し、スライムが待機している場所まで誘い込む。
誘い込まれた獲物にスライムが巻きつき、そこをズズとゼゼがトドメを刺す。
お肉はズズとゼゼとスライムたちのお腹に、魔石はアイテムボックスで回収した。
そう、距離は関係なくアイテムボックスで回収できたのだ。
最初はスライムに屋根裏越しから運んでもらうつもりだった。ズズかゼゼに持たせて朝に犬助に持ってこさせるのも考えたが出来れば知られたくない。
だけど、なんとなくズズが口に咥えた魔石を取り込めないかなってやってみたら出来た。
何事も挑戦だな。
それからあれこれ試したけど使い魔が持っている物なら取り込めるらしい。
この発見は偉大だ。
この牢屋の鍵だってスライムに触れてもらうだけで回収できるし、物だって盗み放題。
アイテムボックスに収納できる条件は体などで触れていることなのだろう。
俺の場合、使い魔も体の一部判定になるということか。
試しに倉庫にあるものをアイテムボックスに収納しようとしたけど、手が届かなかったから無理だった。
見つめて、そこにあると認識するだけでは収納できない。
現在の所持金は46ゴールド。
赤が6ポイントに緑が3ポイント。
鳥の魔物は5ゴールドと緑3ポイントということだ。
「ふぁ〜」
確認するだけ確認したら眠くなってきた。
昨日は悶々としてなかなか寝れなかったし、しょうがないか。
犬助たちもまだ寝ているみたいだし、飯も来ない。
二度寝としますかな。
***
なんだかこの生活も慣れてきた。
そう感じる自分に腹が立つ。
大丈夫、奴らへの怒りは忘れていない。
ジョブメニューの契約獣を見るたんびにギギの名前が目に入るのだ。
嫌でも思い出す。
「ほら、魔石だ」
「また追加か?」
今回は5個。
今日、お昼頃に起き始めた盗賊どもは4人ずつに分かれて、それぞれズズとゼゼを連れてゴブリン狩りをしていた。
「てめーのグレイウルフはなかなか優秀だったぜ。これならもっと大きな山も出来るかもしれねぇ」
目の前で笑うのはボス。
「あんがとよ」
いつかお前に牙を剥くのを楽しみに待ってろよ。
「もし2匹呼べたら今日の飯には肉をつけてやる」
「肉!?」
「ああ。干し肉なんかじゃねぇ、血の滴る奴だ」
「うひぇー」
ここしばらく食べていなかった魔性の言葉に俺の意思が揺らぐ。
捕まってから硬いパンと薄いスープだからな。
肉が食いたい。
肉が食いたい。
肉が食いたい。
俺は頭の中で回る肉をぐっと振り払って魔石を握る。
「山狼召喚」
しかし何も起こらない。
「山狼召喚」
しかし何も起こらない。
「山狼召喚」
しかし何も起こらない。
「山狼召喚」
ここでやっとグレイウルフを召喚する。
「ちっ、もっと気合入れろ」
「俺だって肉食いてぇよ!」
俺は初めて本心でボスに言葉を投げかけた気がする。
「山狼召喚!」
呼ばないんだけどね。
魔石4個ごちっす。
「ふん。肉は無しだ」
少し残念だ。
でもね、魔石(小)って10ゴールドなんですよ。
10ゴールドもあればショップでステーキが交換できることに気づいてしまってね。
それからは魔石を優先している。
お前ら全員殺した暁にはそのゴールドでうまいもん食ってやるぜ!
「へへっ。残念だったな」
笑う犬助に腹が立つ。
いつかぶん殴ってやる。
「クソ……」
俺は落ち込んだふりをして新しく召喚したグレイウルフを見た。
「あれ?」
いつもと違うことに気づく。
「あ?」
俺が不思議がったことが気になったのか、立ち去ろうとしていたボスが睨んでくる。
どうせなら巨乳のお姉さんに睨まれたいものだ。
「こいつメスだ」
目の前で座るグレイウルフにはアレが付いてない。
「なんだそんなことかよ」
犬助ががっかりする。
いや、個人的には結構衝撃的なんだぞ。
今まで個体差があったのは知ってた。戦闘力や総合力が違うからな。
でもみんなオスだった。
あくまでテンプレートの中の範疇で、誤差は少ないと思っていたのだが、案外何回も召喚したら10年に1度の逸材なんて存在も呼べるのかも。
そんな可能性を彼女は秘めている気がする。
「名前はそうだな……テテにするか」
前足がキュートだ。
「使えんのか、こいつ」
「たぶん……。他の奴と変わらないはずだ」
「だといいがな」
ボスが突然檻を蹴った。
「うおっ」
揺れる檻にバランスを崩して片手をつく。
「次はもっと呼べよ、マヌケが」
罵倒と共に唾まで吐いて行きやがった。
クソが……。
今に見てろよ。
***
「おい、グッチ」
「へい兄貴。おらはダッチっす」
「ちっ。似たようなもんだろうが」
「へへっ。さーせん」
「名前なんかどうでもいいだよ」
「そ、そっすね」
「てめーはあいつの事どーおもってんだ?」
「あいつですかい?」
「あのマヌケ野郎だよ」
「あいつですかい。そりゃあ、悪くないとおもってやすぜ」
「けっ。お前もとんだマヌケ野郎だな」
「どーいうことですかい?」
「あいつはな、腹ん中じゃ何考えてるかわかんねぇぞ」
「はぁ……」
「きっと近いうちに俺たちを襲うだろう」
「ほ、本気でいってやす?」
「本気に決まってんだろ。俺は冗談が嫌いなんだ。知ってるだろ」
「そ、そりゃあもう」
「きっと狼が増えたら牙を剥くのさ。今はまだ数が少ないから大人しくしてるがな、10匹や20匹になったらどうなるかわかったもんじゃねぇ」
「でもあいつらは良い子ですぜ? 言うこともちゃんと聞きやすし、俺たちには敵対したことがねぇ」
「そりゃあわかってんだよ」
「は、はぁ」
「だからこうして対策を練ろうとしてるんだろうが」
「さすが兄貴っすね」
「と、いうわけでだ」
「あい、どこまでも付いて行きやすぜ」
「奴を殺せ。あと1匹召喚させたら用済みだ」
「なっ。本気ですかい?」
「おいグッチ」
「ダッチっす」
「さっきも言っただろうが……俺はな、冗談が嫌いなんだよ」
こんにちは。この作品で初感想貰って舞い上がってもう一話投稿しちゃったお調子者です。
基本的にモチベが筆のスピードに比例します(笑)




