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悪魔は囁き心を握りしめてくる。



「カゲフミってあいつらのこと?」


 ユイカさんが口にした言葉に俺は頷く。

 彼女の言うところの《あいつら》というのは恐らくシロが倒した銀の騎士と部下だろうから。

 それ以外に彼女と共有している敵対勢力はない。


「ああ。シロが倒した銀の騎士。俺もこの街で一人倒しているんだ」


「この館が荒れてるのってもしかしてそのせいだったり?」


「ああ、あんな化物を館の中で暴れさせたからな」


 俺は人を簡単に丸呑みにできるほど大きな顎を有したダイナを親指で示した。

 召喚したバイタードラゴン3匹の内、近くに待機させているダイナは街の人に見られないよう裏庭で丸くなっている。


「よく崩れなかったね……」


「敵がバカみたいに突っ込んでくれるやつで良かったよ、ほんと」


 バイタードラゴンの突進なんかを誘って避けるような敵だったら屋敷がいくつあってもたりなかっただろう。


「アマンを倒したの、フラフィーだから」


 突然フラフィーが自己主張してきた。


「そうなの?」


 ドヤ顔のフラフィーを見てユイカさんがこちらに聞いてくる。


「まあ、そうだな。フラフィーが倒したといってもいいかもなぁ」


 ずっとアマンの気を引いてくれていたのも確かだし、とどめを刺したのもフラフィーだし。


「フラフィーちゃん強いねー」


 ユイカさんが優しい声でフラフィーの頭を撫でる。

 本当に優しい声だった。もう俺と話しているときと声音が違うもん。


「フラフィー、さいきょーだから」


 まんざらでもなさそうなフラフィーは兎耳を揺らしながら頭を揺らす。


 ぐっ、トモにはあまり撫でてもらおうとしないから、俺のことが好きで俺に撫でてもらっているのだとばかり思っていたけど、実は俺を気に入っているのではなく、トモを警戒しているだけなのではないだろうか。

 

 ふ、深く考えるのはやめよう。

 使い魔の好感度は最高。そうに決まっている。


「それでカゲフミってなんなのかな?」


 フラフィーの頭を撫で終わったユイカさんが聞いてきた。


「盗賊団の名前らしい。元々はミルって街の軍隊だったらしいんだけど、勇者ってのに聖国軍から街を守っていた城壁を壊された後、統率が取れなくなってしまったところをイチヤって転生者にまとめられて作られたって話だ」


「元が軍……?」


 俺の話を聞いてユイカさんが顎に指を付けた。


「それって可能なのかな?」


 うん、ユイカさんの疑問はもっともだと思う。

 普通に考えて統率の失ったからといっても軍は軍。

 食料や給料がもらえなくなったからと言っても、見ず知らずの人間についていくような奴らではない。


 普通ならね?


「可能なんだよ。俺たちみたいなのなら」


「あっ。スキル」


 ユイカさんが納得いったとばかりに手をたたいた。


「そう。イチヤってのステータスだけど、こんなスキルをもってるんだよ」


 俺はスマホを取り出してフレンド一覧からイチヤの名前を探す。

 調べてみてびっくりなのだが、イチヤの戦闘力ランキングは下位だ。下から数えたほうが早いレベル。


 ちなみにこのフレンド一覧。最近これに物凄い嫌味がこもってるような気がしてならない。

 

「っと、これだな」


 見つけ出したイチヤのステータスが表示されたスマホをユイカさんへと渡した。




 名前:イチヤ

 種族:人間

 職業:誘悪の囁き人

 所属:カゲフミ団

 加護:悪神フィドーゼの喉

 字名:悪魔の代弁者

 称号:転生者


 戦闘:142

 資金:804ゴールド

 支配:12032


 総合:18909




 ユイカさんはイチヤのステータスを一度見て、再度上から読み直し、考えてから口を開いた。


「この職業って……」


「恐らく人を支配する能力だと思う」


「やっぱり」


 正確には人を悪に誘うための能力。

 

 それをうまく使って人を支配して、自分のかわりに戦わせたりしてゴールドやポイントを集めるのだ。

 俺の能力とは案外近いものなのかもしれない。


 召喚しているか人を騙しているかの違いだ。


 同じにされたくはないけど。


「イチヤはこれで軍の人達を騙して従わせている?」


「恐らくそうだとおもう。いろいろと調べるためにカゲフミの部下を一人捕まえたりもしたんだけど……」


「何も分からなかった?」


「というか、あいつが新参者らしくてイチヤってのと直接会ってないらしいんだ」


「つまりスキルは直接会っている人間にしか使えない?」


「だぶん」


 ユイカさんと話すとちゃんと意見も言ってくれるしでやりやすいな。


「現在アルゼッドの街を中心に周辺の街を調べている。カゲフミ団のアジトにされているらしい西にある城塞都市ラルカスにも何羽か鴉を送った」


「近くの町なんかは? それと……」


 彼女が言おうとして飲み込んだ言葉を俺はなんとなく感じることができた。


「クロの報告では森の奥にあった村には誰もいなかったらしい。近くの森に死体がいくかだけ」


「そう……」


 影の差す顔をしたユイカさんにどう声をかけるべきか分からず、先ほどの話の続きをする。


「アルゼッド周辺の町にはカゲフミの盗賊が何人かいて、この街同様に支配されていたらしいけど村人は無事だったらしい。ただラルカスに近づくにつれてもぬけの殻の町が増えてきてる」


「……もぬけの殻?」


「ああ。誰もいないし何もない。人も家畜も食料も」


「どういうことかな?」


「分からない。分からないけどなんとなく予想はついてるんだ」


 俺の言葉を聞いてユイカさんは一度間を開けてから訪ねてきた。


「予想って?」


 だから俺も間をおいてから答える。


「支配されてるんだよ」



投稿に間が空いてしまいました。

明日からはまた毎日投稿できる……と思います!

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