殲滅すると言っているんだ。
「え?」
俺は思わずスライムを見た後、フラフィーの顔を見てしまう。
「ますたー」
すると、再度スライムが喋った。
フラフィーの口は当たり前だが動いていない。
彼女が腹話術を覚えたなんてことがない限り、これはスライムが喋っていることになる。
ただ黒いスライムは喋っているが人型ということはない。
大きくはなっているが見た目は黒いスライムだ。
「なんで驚いているのかな?」
俺が驚いている理由が分からなかったのか、ユイカさんが訪ねてきた。
「なんだろう。なんて言えばいいんだろうな……。ちょっと予想外なことが起きてて」
「このスライムがおかしい?」
「そうだな……うーん、どうなんだろ」
黒ポイントを使えば何かしら変化が起きるのが分かっていたが、喋るとは思っていなかった。
確かに白ポイントを使えば人化したから真逆のポイントを使っても人化できるかもと連想しても良かったけど……。
「でも、フラフィーちゃんだって元々はウサギだったんでしょ?」
「確かにそうだけど、こいつらは白ポイントを使ってるんだよ」
俺とユイカさんがフラフィーと黒スライムを取り囲むように周りをまわる。
「白?」
「そう、白」
ジロジロとスライムを観察しながらあれこれ理由を考えるも思いつかない。
「ウチも魔巧機化したものにはポイントを振れるけど、白はいまいち使い方が分からいかな」
「そうなの?」
俺は彼女の言葉が気になって顔を向ける。
「銃なら射出される魔力が白くなることが分かっているんだけど、差異はないかな。赤なら熱く、青なら冷たく、緑なら鋭くってそれぞれ特徴があるはずなのに」
「ふーん、そうなのか」
ちなみにトモのスキルだと使い魔ごとにポイントを振る感じではなく、自分の刻印自体にポイントを振る感じらしい。
絆刻印だけしかないのでポイントは極振りすることになる。
持っているだけ振らせたが結果として1匹あたり2上昇していた戦闘力が1匹あたり3上がるようになった。
小さな違いだが、これが100、200と重なっていけばかなり大きくなる。
それだけでもかなりの戦力増加につながるだろう。
アマンと戦う前に気づきたかった……。
「このスライムには黒ポイントを振ったの?」
「そうだな」
「それで喋る様になったと。ほかのポイントを振っても人化するの?」
「しない。赤を振ったスライムは熱くなって、緑を振ったグレイウルフは風を纏った」
それを聞いたユイカさんは少しだけ考えるそぶりをみせてからこう言った。
「まるでゲームみたい」
「それは……時たま俺も思う」
俺は思考共有でフラフィーにスライムを地面に下ろさせる。
黒スライムは地面で下りた後はプルプルと震えていたが、しばらくするとお腹のあたりから二本の腕を伸ばしてきた。
腕だ。
50センチほどのスライムの腕はフラフィーよりも細かったが、しっかりと5本の指があり、人間のそれにそっくりである。
「みゃすたー」
まっすぐにのばされてきた腕を恐る恐るながらも握ってやると、黒スライムが震えた。
「ましゅたー」
どこから出しているのか分からないが舌っ足らずな声。
特に害があるようには思えない。
やはり他のポイントとそこらへんは同じらしい。
「もうちょっと振ってみるか……」
「格物致知かな。分からないことはしっかりと突き詰めるべき」
「だな」
俺はユイカさんに促されるように黒ポイントをさらにスライムに割り振った。
光に包まれたスライムはさらに大きくなり、1.5倍ほどで止まる。
そしてシルエットが人型に近づいていく……。
「ますたー?」
拙い言葉遣いはフラフィーに似ているが、フラフィーとは違い、この子の場合は人工音声的な拙さだ。
流暢ではないというか音を無理やり作っている感じ。
「名前は……ダークでいいかな」
闇色だし。
「だーく?」
「そう。お前の名前だ」
「だーく! だーく!」
名前を貰いポヨンポヨンと飛び跳ねるダーク。
ちょっとかわいいかも。癒される。
今までいなかったタイプだ。
「それにしても黒も人化になっちゃうかー」
俺は目の前のスライム。いや、元スライムを見て言った。
もうただのスライムとは言えない。
アニメなんかに出てくる水の精霊なんかがイメージとしては近いかも。
半透明な黒色の人型液体生命体。
体に触れてみるとタプタプとスライム独自の触感を残しているが、フォルムは丸ではなく人型。それも女性っぽい。
胸もあり、腰は引き締まり、お尻は膨らんでいる。
なんだか女性像みたいにも見える姿だ。
「まあいいか」
よく考えたら白ポイントを振ったらなぜ人化するかもよくわかってないわけだし、黒ポイントを振って人化する理由を考えたって分かりっこない。
正直喋る使い魔はこれ以上増えないでほしいと思い始めていたりするから人化はしないでほしかったけど、どうしようもない。
それよりも今は他に考えることがある。
「話がそれたみたいで悪かった」
「別にいいかな。面白いものが見れたし」
「じゃあ、さっきの続きなんだけど……」
俺は改めてユイカさんに向き直って今後の第一歩を語る。
「まずはカゲフミを潰す。皆殺しだ」
3話目!400ブックマーク本当にありがとうございます!
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最近忙しくなかなか執筆時間が取れなくなってきていますが、それでも毎日投稿し続けられるのはみんなの期待のおかげですっ。