召喚師の可能性。
ジョブのスキル欄に液体召喚が追加されていることを確認して、アイテムボックスから魔石を一個取り出した。
「液体召喚」
スキル名を唱えると山狼召喚と同じく魔法陣が現れる。
牢屋に満たされた闇が魔力の光によって遠ざけられたのもつかの間、光はすぐに収まって目の前にはスライムが現れた。
名前:スライム
種族:ブルースライム
属性:水
所属:ケイ
称号:召喚獣
戦闘:23
支配:0
総合:51
うん、スライムだ。
戦闘力は低めだが、総合力はグレイウルフとあまり変わらない。
育成は青が10だった。
属性に関係してるのか?
液体っぽい。ほとんど水。
バブルなスライムって感じ。
色は……青っぽいかな?
透明度が高くてわかりづらい。
ほとんど透明で体の中心部分にコアが透けて見えた。
触ってみるとそこそこ弾力がある。
おっと、指が溶けないかな。
触れるだけならセーフっぽい。危なかった。
体の中が酸性なのかな?
床も溶けてないし。
「壁には登れる?」
俺の言葉にスライムは地面をネバリネバリと移動した。
ポヨンポヨンではない。ナメクジみたいな。移動速度は思ったより結構早いけど。
スライムが通過した後が湿ってるなんてことはなかったから、体から粘液が出たりはしないらしい。
壁際までのっそりと移動したスライムはそのまんま壁へと登り始める。地面を移動してきたようにネバリネバリと体を波打つように。
問題ないらしい。
「天井に貼り付けるか?」
俺の言葉にスライムが天井まで移動する。
うわ、わからねー。
色が半透明な青色だから、天井に張り付かれるとわからない。スマホの明かりを使っても見えづらい。そこにいると分かってないと気づけないだろう。
「よし、もう降りていいぞ」
なかなか悪くない感じだ。
俺は天井からそのまま地面に落ちてきたスライムを見て実感した。
こいつらを量産すれば奴らを殺せる。
こんなネバネバが頭に張り付いたら息も出来ずまともに行動できないだろう。スライムが行動を止め、グレイウルフでトドメを刺す。
奴らに復讐する時も近い。
あとは力を蓄え、機を待つだけ。
俺は残り3個の魔石を全部スライムにした。
4匹のスライムを目の前にしてほくそ笑む。
自分のステータスを見ると戦闘力が127になっていた。
ランキングと支配値も少し上がっている。
周りの奴もそこそこ強くなっているから俺が飛び抜けて強くなったわけでもない。他の奴も同様に強くなっている。
てか、俺以上に強くなってる。
それでも、それでもだ。
この力の可能性はすごい。
他の戦闘力ランキングの上位の奴らは個人の強さだ。
でも俺は違う。
群れとして大きくなり、いずれは軍にもなれるだろう。
どんなに一騎当千の勇者が来ようとも、万の軍勢には勝てないのだ。
「戦いは数だよ、兄貴」
俺は名言を口にしてから3匹のスライムを盗賊アジト内へと忍び込むように命令した。
目の前に残ったのは最初に呼び出した1匹。こいつが一番戦闘力も総合力も高かった。
ジョブメニューから召喚獣を選び、スライムを選択する。
ちなみに4匹とも名前はスライムになっている。名付けてないからな。
スライムのステータスから育成を選ぶ。
ゴブリンは合計5匹倒したから、赤のポイントが10も溜まっているのだ。
さてはて、どうなることやら。
***
俺はスライムに赤のポイントを1ずつ割り振っていく。
赤0から始まり、1ポイント、2ポイントと増やす。
変化はない。
3、4、5、6、7、8、9ポイントと相変わらず何も変わらない。
1ポイント毎にステータスをチェックしているが戦力値も変わらない。
最後の1ポイントを割り振り、赤10になった瞬間、変化は起きた。
スライムの体が光り始める。
これは召喚時と同じだ。魔力の光。
少しずつ光が収まっていき、やがて闇が牢屋に戻ってくる。
変化はすぐに気づいた。
スライムの色が変わっているのだ。
青色から紫色になった。
ステータスを見てみる。
名前:スライム
種族:パープルスライム
属性:水、火
所属:ケイ
称号:召喚獣
戦闘:33
支配:0
総合:62
属性が増えたのか。
その影響で色も変わった。
成る程な。
ゴブリンは炎属性なのだろう。
俺が茶色に3ポイント振り分けられるのはギギの分だ。
グレイウルフは土だった。
炎属性のポイントを10振ることでスライムは属性が追加された。
おそらく風や土なんかも追加できるし、さらに炎のポイントを振り割ったら燃えるスライムなんかが生まれるんじゃないだろうか。
これはグレイウルフも一緒だ。
赤に振れば火を操る狼、緑に振れば風を纏う狼なんかも作れるかも。
土をさらに振り割ったら100ポイントで交換できる黒狼になるのだろうか?
これは要検証だな。
それまで迂闊に高額召喚スキルは買えなくなる。
「悪くねぇ」
俺は笑いながら改めてパープルスライムを見た。
透明度が少し無くなった紫色の体。
手を近づけてみると熱を感じた。
結構熱いな。表面は40度くらい?
こんなのいきなり顔に張り付かれたら発狂しそう。
「よし、お前に名前を与えよう。そうだな……」
パープルスライムか。
熱のモンスター。
「ヒートだ。お前はヒート! 燃え盛るように熱くなれ!」
俺は満足げに頷いた。
次の赤ポイントもヒートに割り振ろう。
20ポイントでさらに進化するのかどうかも知りたい。
もしかしたら次は30かもしれない。
知識を得るためでもあり、ヒートのこの先の姿を見たい気持ちもある。
楽しくなってきたぜ。