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新しい仲間にはいつだってワクワクする。



「ガァー」

「クァ?」

「カァー」


 屋敷の一角にある立木の枝に、日常生活の中で見かけたら絶対にビビるであろうサイズの鴉が10羽止まっていた。

 漆黒の羽毛に包まれていて、光を吸い込む嘴は美しいとすら言える。


 そんなカラスが一匹庭に降りてきた。

 ぴょこぴょこと跳ねながらこちらに向かってくるその姿は可愛さすら覚えるが、羽を広げれば1メートル程もあるカラスなだけに少し怖い気もする。


 あの嘴に突かれたら冗談抜きで肉を抉られそうだ。


 そんなことを考えていた俺の前で止まる一羽のカラスへ庭に集まった全員の視線が集まった。


 俺は再度カラスの様子を伺ってからスマホを操作する。


 黒い体が光に包まれ、光が収まっていくと同時にシルエットがグイグイと変化していく。

 気づけば俺よりも長身の男が立っていた。


「せ、センパイ」


 トモが顔を赤くしながら目をそらすも、チラリと視線がソレを覗き見る。


 トモの意思を汲み取ってか俺の意思を汲み取ってか、それとも場の空気を読んだだけなのか、テテがすかさずタオルを長身の男の腰に巻いた。


「改めましてご主人様。あなたの目となり羽となり、日差し強き時は影となり、雨降りし時は傘となりましょう。何かありましたら何なりとお申し付けを。あなたの良き(しもべ)でございます」


 目の前で下半身にタオルを巻いただけの変態が優雅に腰を折った。


 いや、変態ではない。


 俺が呼び出した新しい使い魔だ。


 種族名はウィスパーレイヴン。


 200ゴールドで交換したスキルで召喚した渡鴉の使い魔に白を40ポイント使用したのだ。


 渡鴉人間ってところかな。

 種族名はウィスパーレイヴンスロープ。


 体は濡羽色の羽毛に覆われていて、鳥人間というよりも人の形をした鳥と言った方が正確だろう。


 腕は翼で出来ているが先端にはちゃんと手があり指がある。

 翼は動かすたんびに揺れ動くので、なんだか派手な衣装を着ているだけのようにも思えた。


 ヒラヒラで派手派手な奴。

 それにしては色が暗すぎるけど。

 暗すぎるっていうか、黒一色。


 比喩表現なしで夜に溶けてしまいそうだ。


 彼を召喚した理由は簡単。

 渡鴉には偵察をさせるつもりだ。

 そのまとめ役として彼にポイントを使った。


「とりあえずツツ。彼の服がないか屋敷に聞きに言ってくれ」


「もうすでにご用意しております」


「なら最初から出しとけよ!」


「お母様が照れる姿を見たいのやもしれぬと気を回したのですが」


「余計すぎるお世話!」


 気がきくようで全くきいてない普段通りのやり取りをしながらツツがウィスパーレイヴンへと執事服を渡した。


「名前はどうしようか。トモがつけるか?」


「センパイがつけていいですよ。男性の名前はピンときません」


 まだ顔が少し赤いトモは結を揺らしながら着替えるウィスパーレイヴンから顔を反らしながら答えた。


「え、あー、そうだなー」


 てっきりトモが決めてくれるものだと思って考えていなかった。


「セバスとかスミスでいいんじゃねーの?」


「流石にテキトーすぎません?」


「でも執事だし……」


 俺は改めてウィスパーレイヴンの姿を見た。


 すでに執事服を完璧に着こなしている。

 背中はまっすぐと伸びバランスがいい。体の軸が真っ直ぐ入ってるみたいな。


 しかし、嘴もついたままだから仮面を被っている仮装人みたいだ。


 鎌とか持ったら似合いそう。


 ウェスパーレイヴンってあまり戦闘力は高くなかったんだよな。


「ご主人様。私めのことはクロとお呼びください」


「クロ? そんなんでいいの?」


 悩んでいると名付けを待っていたウェスパーレイヴン自ら名前を提案してきた。


 このパターンは初めてだ。


「はい。我々ウェスパーレイヴンは群れを1つの単体と考えています。故に我々を分けるのはシロかクロしかありませんから」


 よくわからん。


「本当にクロでいいんだな?」


「はい、ご主人様」


 俺の言葉に丁寧に頷くウィスパーレイヴンスロープ。


 よくわからないが本人がそれで良いって言ってるから多分良いんだろう。


「よし、お前は今日からクロだ。これから他にもウェスパーレイヴンを召喚していくから、そいつらの集めた情報の整理とリアの手伝いは任せた」


「しかと承りました、ご主人様。昏き空に舞う一点の白に誓い必ずや良き囀りを致しましょう」


 俺の命令にクロが恭しく礼をする。

 その姿は長い間ずっとお慕いする姫君に向けられるような、完璧すぎるほどに完璧な立ち振る舞いだった。


「それじゃあトモ」


「んー? なんですか、センパイ」


 俺に呼ばれた理由がわからないのか首を傾げるトモに笑って次の予定を話す。


「せっかくクロを呼んでウィスパーレイヴンの命令系統やら収集した情報の整理なんかは押し付けることが決まったわけだし、やることは決まってるだろ?」


「はい?」


 まだ俺が言いたいことが分からないのか、傾げた首の角度をさらに深くするトモ。


 俺がウィスパーレイヴンを召喚した理由は彼らを使って情報収集をしたいからだ。

 空から偵察をすることができる彼らなら地上からでは得られない情報も収集できるだろう。


 ラピッドラビットも優秀なんだけどね。

 基本的に聞くことしかできないから。


 具体的な数やら編成やらを調べることができないんだよね。


 敵に気づくことはできるが、気づいた後調べることが難しい。

 その点、ウィスパーレイヴンならお手の物だ。

 空に鳥が飛んでいても怪しむ奴なんていないはずだし。


 「あと40体」


 ならば数が必要だ。

 索敵範囲も全方位にしたいし。


 「う、嘘ですよね……」


 「召喚するぞー」


 俺は絶望的な顔をするトモに笑顔を向けた後にスキル名を唱えた。



次回はアレやります。第一章で思わせぶりに伏線だけ振ってあったアレです。覚えている方いるのかな?

今回の話しと伏線だけで次回の話しを予想できる方ってどのくらいいるんでしょう……。

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