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復讐するには新たな仲間が必要です。

 


「起きろマヌケ。それともまた飯を食わねぇのか?」


 翌日、またしても最悪な起こされ方をした。


 それでも飯は食べたい。俺は反抗的な態度はとらないように気を付けて犬助から飯をもらう。


 飯にはパンにスープがついていた。

 盗賊共の朝飯の余りなのか、もう冷めていたけど。


 それでもパンとスープは特別美味しいと感じた。

 パンは硬く、スープは具がなかったのに。


 空腹は最高のスパイスだな。


 腹減りで夜はあまり眠れなかった。

 あんな最低な気分で寝てもぐっすり寝れなかっただろうけど。


 その代わりズズを使ってアジトの周りを色々調べることができた。


 アジトは洞窟の中にあり、その洞窟の周りが森なのは知っていた。

 洞窟は狭くアジトがあるだけでなにもない。

 森は昼に盗賊と行動していた時の情報以外はほとんど得られなかった。

 東へ行くと街道があると言うことくらいだろうか。



 ズズは案外自由にやっている。

 トイレを一度床にしたら、ボスに部屋を追い出され、それからは屋敷の中をウロウロ。結局は玄関の前に居場所を落ち着けていた。


「ふぁー」


 俺は満腹とは行かないまでも満足はしたお腹を撫でて寝っ転がる。


 汚い牢屋の床に寝っ転がるのも慣れてきたな。

 慣れたくはなかったけど……。


 やる事もないし、お昼はぐっすりとさせてもらう。


 牢屋の中は地下という事もあって暗いし丁度いい。


 おやすみなさい。




     ***




「起きろマヌケ! いつまで寝てんだ!」


 鉄格子を蹴られる音で起きるのが当たり前になってきた。

 相変わらず最悪な気分だ。


「飯か?」


「それはお前次第だ」


 俺の問いかけに答えたのはボスだ。


 今度は魔石を3つ渡してくる。


「うー、飯抜きは勘弁してもらいたいぜ」


「なら成功させな」


 ボスと犬助が見つめる中、俺は魔石を握りしめスキル名を唱える。


「山狼召喚」


 が、何も起こらない。

 魔石1個ご馳走様です。


「あぁ……」


 なんて内心では思いながら絶望の顔をする。


「今日も飯抜きか?」


 犬助がニヤケながら口を開く。


「つ、次は成功させるっ」


 まあ、失敗させるんだけどね。


 俺は魔石を持って再度スキルを唱える。


「山狼召喚」


 何も起こらない。

 当たり前だ。魔石はアイテムボックスにちょろまかしたのだから。


「嘘だろぉ」


 俺は顔を伏せて落ち込んでいるように見せる。


「早くしろ」


 ボスが焦れたように最後の一回を促す。


「頼む頼む頼む」


 俺は魔石を両手で握りしめて危ないダイスを振る漫画キャラのように神にお願いをするポーズを見せる。


「山狼召喚」


 俺がスキル名を唱えると手の中から魔石が消えて、魔法陣が浮かび上がる。


「やった!」


 俺は喜んだふりをして立ち上がる。


 最後くらいはね。だってご飯食べたいもん。


 確かに魔石は欲しいけど、手下を増やすのも作戦の内。


 手下も増えて夜飯も貰える。


 完璧な計画だ。


「ふんっ」


 ボスが口元を緩めた。


「名前はそうだなぁ……ゼゼにしよう」


 ズの次はゼだからね。

 ごめんね、適当につけて。

 でもこれからのことを考えると真面目に考えたら後々大変なことになるんだ。


「くれてやれ。行くぞ」


 ボスはそれだけ言うとゼゼを連れて去っていった。


「ほいよ」


 俺はスープを受け取るなりパンを浸して食べ始めた。


 お昼がないからお腹空くんだよ、ほんと。


 三食つけて欲しいぜ。


「あ、そうだ」


 帰ろうとする犬助を呼び止める。


「なんだよ」


「ゼゼを召喚した報酬ってわけじゃないけど、枕か毛布が欲しいところなんだ。ここの床は硬すぎる」


「捕まってる癖に贅沢なやつだぜ」


 犬助はそれだけ言って去っていった。


 毛布、持ってきてくれるといいけど。




     ***




 飯を食い終わり、皿を取りに来た犬助を見送った俺はスマホを取り出す。


 なんだか完全に夜型になってるな。


 盗賊どもは大半が寝てるだろうし昼よりは動きやすいと思う。

 牢屋の中じゃ昼も夜も変わらないしな。


 よし、活動しよう。


 魔石を三つ貰った時点で考えていたが、恐らく9ゴールド増えてるはずなんだ。


 これで所持金は55ゴールド。


 50ゴールドを上回った。


 そう、新しいスキルを覚えることができるんだ。


 武器や防具なんかもありだろうけど、現状使わないし、使って戦いたくはない。


 ポイントは奴らが稼いでくれてる。


 あとは俺の戦力を秘密裏に増やすだけだ。


 候補は三つ。

 子鬼と液体と砂蟲。


 100ゴールドまで待つのもありかなぁ?


 100ゴールドあたりだと気になるのは黒狼だ。

 でも、こいつを取るとグレイウルフの存在価値がなくなる。


 出来ればグレイウルフとは違う使い方をできる方がいい。


 陽動や索敵がグレイウルフの主な活用手段だ。

 攻撃にも使えるが、あまりやらせたくはない。

 目をつむれば目の前で斬られ殺されたギギを思い出すからだ。

 自分が名付けた仲間をもう殺させなんかしない。


 今欲しい戦力は敵を確実に殺せる暗殺者的な奴。


 うーん、どうだろ。いるかな?


 俺はスマホを操作して獲得できるスキルを見ていく。


 候補としては100ゴールドの血鳥、闇蜥蜴あたりが気になる。

 100ゴールドからは魔物の種類もぐっと増えているから目移りするな。


 でも名前だけを頼りに取るのはなぁ。せめてどんなモンスターか説明が欲しい。


 なにか辞書的なものはないのか?


 やはり行き当たりばったりしかないのか。


 50ゴールドの中から選ぶならスライムだ。

 ゴブリンは弱そうだし、砂蟲は使役したくない。


 スライム……スライムかぁ……。


 ゲームだと大抵雑魚モンスター扱いだ。


 液体ってくらいだからたぶんどろっとしてるタイプで、ドラゴンなんちゃらみたいな丸いスライムではないと思う。


 バブル的なやつ?


 そいつに人を殺せるのか?


 そもそもスライムって人を襲うの?


 あれ、そういえば小説なんかではスライムは暗殺者なんだっけ。

 暗闇や水辺に潜み、音も無く頭に纏わり付いて窒息死させる的な。


 そう考えると現状で俺が欲しい手駒ではある。


 やはりスライムか。


 闇蜥蜴もなかなかロマンがあるのだが、闇の蜥蜴ってなんだよって感じするしね。岩蜥蜴とかなら想像しやすいんだけど。


 スライムなら液体だと感情移入もしずらいだろう。殺されてもあまり心にはこないかもしれない。


 よし、スライムにしよう。


 俺は意を決して液体召喚を購入した。



反撃への第一歩です。

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