何事も終わりは案外あっけないものだ。
「こんな事して赦されると思うなよ! 今にイチヤ様がぎゃあ!」
剣を落とし、壁に追い詰められたフルメイル剣士がダミラの顎によって噛み殺される。
アマンが死んでからはあっという間に片がついた。
ツツとテテがフルメイル剣士を怯ませ、咬岩竜がトドメを刺す。
先ほどまで苦戦していたのが嘘のようだ。
特にフラフィー。
1人でフルメイル剣士を2人も殺してる。
そんなフラフィーのステータスはこちら。
名前:フラフィー
種族:セイクリッドラピッドラビット
属性:光、水
所属:ケイ
称号:聖なる召喚獣
戦闘:642
支配:0
総合:1345
上がり幅が半端ない。
戦闘力が3倍くらいになってた。
称号にも変化が起きてる。
聖なるって……。見た目ただの幼女なのに。
いや、もう少女か。
「…………?」
領主の屋敷にいたフルメイル剣士を全員倒したフラフィーを見ていたら、そばに寄って来て不思議そうにこちらを見返した。
「お疲れ様。今回のMVPはお前だ」
「フラフィー、偉い?」
見た目が成長しても喋り方が変わることはないらしく、いつものように間が空いた独特な喋りをするフラフィー。
「ああ。最後の一撃は良かったぞ」
「えへへ。マスター、もっと褒めて」
「いいともいいとも。偉い子偉い子だ」
俺は嬉しそうに目を細めるフラフィーの頭を撫でてあげる。
フラフィーが笑顔で頭を揺らすたびに兎耳がパタパタと騒ぐ。
フラフィーの見た目はもうほとんどが人間だ。
前までは腕や足先だけ毛に包まれていて、獣らしさが若干なりとも残っていたが、ここまでくると人間が兎耳をつけているだけのように見える。
「フラフィー、尻尾はあるのか?」
俺が純粋な気持ちで問いかけると、
「センパイ、セクハラですか?」
トモがジト目でこちらを睨んだ。
「違うって! 成長させたから変化を調べてるんだ!」
「マスター、ちゃんと残ってる」
俺がトモを説得させようとした時に、フラフィーがワンピーススカートの裾をお尻が見えるほどまで持ち上げた。
「ちょっ! フラフィー!」
「センパイ! 何命令したんですか!」
「俺は何もしてねぇ! てかなんでノーパンなんだ!」
「嫌がってつけないんですよ!」
「パンツ、邪魔」
なぜか誇らしげに胸に手を置いて頷くフラフィー。
「マスター、パンツない方が喜ぶ」
「なっ!」
「センパイ……。さっきはちょっとカッコいいとか思ってたのに……」
「思ってないから! そんなこと思ってないからね!?」
俺の苦しい否定が暗いエントランスに響くことなく吸い込まれていく。
「ちょっと。まだ終わってないんだから浮かれないでよ」
俺たちの会話をそばで聞いていたリアが不満げに声を出した。
「そうだな。この話はここでやめにしよう。それがいい」
俺はここぞとばかりに話を打ち切る。
「といっても、あとは残党狩りだけだからな」
街にいる盗賊はほぼ全員がこの屋敷に向かって来ていた。
中の状況が伝わってないのか、未だに屋敷へ入ろうと押しかけている。
それを倒すだけでいい。
一応逃さないようにグレイウルフの半数をすでに後ろから回り込ませている。
正面からはダミラとダギスで襲い、後ろからグレイウルフで倒す。
逸れた輩はラピッドラビットやスライムの餌だ。
「屋敷にはもう敵はいないのよね?」
リアが見違えるほどに荒れて壊れた屋敷を見渡して、嫌な顔をしながら聞いて来た。
「ああ。現在グレイウルフで探索を進めてるけど、残党が隠れているってことは……お?」
「どうかしましたか?」
「いや、ちょうど屋敷探索してるA班のグレイウルフが地下階段を見つけてな。人がいるらしい」
「地下階段?」
「ああ。向こうかな?」
リアの言葉に頷いて、大まかな場所を指差す。
「そっちの地下階段だと多分地下室よ」
「地下室か……。なにかあるのか?」
「なにもないはずだけど……」
「とりあえず行ってみよう」
俺たちは血溜まりの中を歩きながら屋敷の中を進む。
自分でここ戦いの場所に選んでおいてなんだけど、屋敷は酷い有様だった。
壁に穴は開き、床は割れたい放題。
飾られた石像や絵画も壊されていたり血が跳ねていたり。
「もっと静かに戦って欲しかったわね」
「ご、ごめんな」
別に俺が悪いわけじゃないが、つい謝ってしまう。
いや、俺が悪いのか?
弁償する気は無いけど。
「く、くるなっ!」
エントランスから廊下を歩いていると震えた男の声が聞こえた。
「ここか」
声は目指していた地下室への階段かららしい。
中を覗いてみるとグレイウルフへと槍を向けている男がいた。
「お前もカゲフミか?」
「誰だお前!」
「たったさっきこの屋敷を占領した者だ」
「た、隊長はどうした!」
「隊長? アマンって奴のことか?」
「そ、そうだ!」
「俺が殺した」
「ひえっ」
逃げ腰な男は一歩下がるも扉があるせいで背中をぶつけてしまう。
「奴らの仲間なら殺すところだが、ちょうど聞き出したいこともあるんだ。お前がその槍を捨てるなら生かしてやる」
「許してください!」
男は条件反射のように槍を放り投げた。
「潔いのは嫌いじゃないぜ」
俺は無様な盗賊の成れの果てを見てほくそ笑む。
こうして、アルゼッドでの戦いは幕を下ろした。
総使い魔80匹。
負傷14匹。
死亡1匹。
殺した盗賊231人。
捕虜とした盗賊5人。
結果としてみるならば、悪くない数字である。
結果を結果として割り切れるのなら人間はもっと楽に生きられるんだろうけど。
次回で第二章終わりです。




