地べたに這いつくばって復讐を誓え。
俺はしばらくしてボスと犬助が完全にいなくなったの確信を持ってからスマホを取り出し、ジョブメニューから召喚獣を選んだ。
灰色のギギの名前の上にズズの名前が追加されている。
名前:ズズ
種族:グレイウルフ
属性:土
所属:ケイ
称号:召喚獣
戦闘:29
支配:0
総合:51
ズズはギギよりも少し弱いらしい。
戦闘力は均一ではないのか。多分平均値としては30くらいなのだろう。
そして、下側にギギのステータスにはなかったものを見つけた。
「育成?」
育成ボタンを押すと、6種類のマークがある。
赤:0
青:0
緑:0
茶:10
黒:0
白:0
それぞれマークの横にはプラスのマークがあるが、茶色以外は振り分けられない。
茶色のみ振り分け可能で13まで上げることができた。
属性値?
なんだこの数字は。
情報が少なすぎる。
なぜ茶色だけ10ポイントも持っていて、3ポイント振れるんだ?
育成って事だから振れば強くなると思うが、下手に振れない。
今は目の前にズズもいないから変化があったとしても分かりづらいのもある。
これはあとでやろう。
下手に振り割っても後悔するのが目に見えている。
***
お昼過ぎ、ズズを連れて盗賊たちが外へ出た。
アジトは洞窟の中に作られており、洞窟は森の中にあるらしい。
そんな情報が共有されてきた。
距離が離れたら情報共有ができなくなるのではと少しだけ懸念していたのだけど、そんなことはないらしい。
森は針葉樹が多く、そこそこ見通しがいいらしい。
しかし、盗賊が1時間ほど歩き回っても森が途切れないことからそこそこの大きさの森なのだろう。
盗賊の目的はゴブリン狩りだった。
森にいたはぐれのゴブリンを数人で寄ってたかって倒している。
倒した際にゴールドが増えたのを確認した。
まず40ゴールドから43ゴールドに増え、次のゴブリンが倒されたら43ゴールドから46ゴールドに増える。
現在の所持金は46ゴールド。
ゴブリン1匹3ゴールドということか。
ジョブの召喚獣から育成メニューを見ると、振り分け可能なポイントも増えていた。
赤が4ポイント。
0ポイントから4ポイントまで振り分けられるようになっていた。
ゴブリン1匹で赤が2ポイント。
ポイントはゴールドと同じく何かを倒せば手に入るのか。
やはり強くなるには魔物狩りなんだろうな。
もうしばらく待ったがそれからゴブリンが狩られることはなかった。
***
「おらマヌケ、飯の時間だ」
19時過ぎほどに犬助がご飯を届けにきた。ボスまで一緒だ。
今回の飯はパンにスープまで付いている。
「やっと飯か。腹ペコだぜ」
俺は近寄って受け取ろうとすると、飯を遠ざけられる。
「その前に仕事だ」
ボスが口を開くと魔石を2個渡してきた。
なるほど。ボスが一緒なのはこの為か。
「気に入ってくれたのかい?」
「ああ。どのくらい使えるか見るために山のゴブリンを狩りに行ったんだが、いい鼻だ。でけーのは避けて、しっかりゴブリンだけを教えてくれやがる」
ゴブリンを倒したのは知っていた。
しかし、ズズが大きな魔物を避けてゴブリンだけ倒しているのは知らなかったな。
使い魔から共有されるのは情報だけということか。
感情や思考は分からない。
それでも意思が伝えられるだけで全然いいけどな。
「こいつらは遠吠えでやりとりできるんだろ? もう1匹は欲しいところだ」
「こいつらの良さを分かってくれて嬉しいぜ」
俺は早速魔石を一個握り、右手を鉄格子から出す。
練習の成果を見せる時らしい。
「山狼召喚」
俺はスキル名を口にするも何も起こらない。
魔法陣が出ることもなく、牢屋の中はシンとした。
「失敗か……」
俺は白々しく嘘をついた。
本当は俺のアイテムボックスに魔石はあるのに。
内心ほくそ笑む。
「次だ。次は成功させろよ」
ボスは表情を変えずに言った。
「3回に1回成功したらいい方なんですって。朝成功した時はほんと涙こらえてたんですよ」
俺はさらにそんな嘘をついて最後の魔石を右手に握った。
「山狼召喚」
再び何も起こらない。
召喚しても良かったが、ここで召喚の難しさを教えておきたかった。
「魔石だけちょろまかしてんじゃねーだろーな?」
「なっ! んなことできるわけないだろ!」
心臓が飛び跳ねそうなったのをなんとか顔に出ないようにできたのは奇跡だ。
「身体検査だ。開けろ」
ボスの言葉に犬助が鍵を出す。
その間にボスがギギを殺したカトラスを抜いた。
「ちょっとでも下手な動きしたら斬るからな」
「持ってねぇって言ってんだろ!」
「それを決めるのは俺だ」
そう言ってボスが牢屋の中に入ってきた。
「調べろ」
後から入ってきた犬助をボスが顎で使う。
「へい」
指示された犬助が髪の毛から順に下へと体を弄り始める。
男に体を触られても不快なだけだ。
復讐相手だと尚更。
今ここで魔石全部出して襲いたくなるのを堪える。
「ありやせん」
「馬鹿野郎っ! 股の奥までしっかり手を突っ込んで調べねぇか!」
靴を脱がしてひっくり返してた犬助が怒鳴られる。
「ひっ! さーせん兄貴!」
怒られた犬助が人の股間を触り出す。
くそっ、絶対殺す。
「ありやせん」
ケツの穴までしっかり触られてから再度犬助が首を振る。
「ふんっ」
ボスが鼻を鳴らした。
やっと最低な時間が終わる。
こいつらはアイテムボックスの存在を知らないらしい。
もし知ってたら最初の時点でアイテムを全部巻き上げられてると思うけどな。だから魔石のねこばばを実行したわけだし。
俺はホッと息をーー。
「ぐがっ!」
突然ボスに腹を蹴られた。
「明日は成功させろよ。それと、てめーの夜飯は抜きだ」
未だに疑ってるのか、俺を睨んでからボスが唾を吐く。
「行くぞ、ダッチ」
「へい兄貴」
犬助は俺のパンとスープの載った盆を持って去って行く。
「くそっ」
痛みで蹲るしかない俺はそんな事しか言えない。
「……絶対に殺してやる」
苦痛にゆがむ俺の声は、牢屋の中に虚しく響いた。
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