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雨降って地固まってる?

 


「ふぁ……」


 俺は差し込む朝日に起こされて、ベッドの上で伸びをした。


 昨日は大変だったな。


 眠たい頭を覚醒させながら昨日の夜のことを思い出す。


 結局リアは協力してくれることになった。

 しかし現状でリアのできることはない。


 この街は現在カゲフミに支配されていて、女の子が1人で出歩けばそれだけであいつらに捕まってしまう。

 リアは貴族の娘なだけに尚更だろう。


 そういえばリアがなんでこの宿に住んでいるのか聞き忘れたな。


 あとで聞けばいいか。


 俺が起き上がろうと上半身に力を入れると、かすかな抵抗を感じる。


「ん?」


 毛布を捲るとそこにはフラフィーが抱きついていた。


 裸で。


「久しぶりに1人で眠れたと思ってたのに……」


 昨晩は1人で眠りについた。

 フラフィーはズズ達と狩りへ。トモは俺と一緒に寝ようとしていたところをリアに止められた。


 それにしても……昨日のあれは……。


 上半身を起こしてから目覚めたばかりの頭で昨日の出来事を思い出すと、これからどうやってトモと顔を合わせたものか悩む。


『わ、私はそんなに魅力がありませんか?』


 そう問うて来たトモは控えめに言って可愛かった。

 今更ながらによく我慢できたと思う。


 しかしあれはトモの本心なのだろうか。


 確かに俺はトモを助けた。

 だからっていきなり好かれて行為を迫られるだろうか?


 ニートまっしぐらだったオタクな俺が?


 ないわ。


 あれはお酒で酔っ払っていたんだ。

 きっと俺のセリフを勘違いしたトモがお酒の酔いで一時的に錯乱したのだろう。


「そうだな。きっとそうだ」


 1人で勝手に納得した俺はスマホを取り出す。


 これからの作戦を考えねば。


 現在所持金は97ゴールド。

 持っている魔石は21個。

 成長ポイントは赤30、緑18、茶13、白4。


 今日も40ゴールド近く増えている。


 さて、これでどうやってカゲフミを倒す?


 カゲフミの数は不明だが恐らく50人から100人くらいはいるだろう。

 1人の戦力を100だとしても最低5000。


 勝つために理想を言うならば戦闘力6000は欲しいところ。


 魔石21個を使い魔にしたらトモのスキルで総数43匹かける2で86。43匹に86の戦闘力が足されるわけだから、トモのスキルだけで戦闘力が3698にも及ぶ計算になる。

 使い魔の元々の戦闘力を合わせれば5000近くにも及ぶ。


 悪くない戦力だ。


 だが、このまま真正面からぶつかるなんてことはしたくない。


 いくら戦力が上回っているからといって、損害なく勝てるということではないのだから。


 理想は誰も怪我をせずに奴らを倒すことだ。


 それを踏まえた上で戦力を増強しなければならない。


 現在の戦力はフラフィー、グレイフルフ5匹、レッドスライムのヒート、スライム15匹。そして昨日召喚したラピッドラビットのルリ助。


 戦い方としてはやはりグレイフルフを牽制にしながらスライムで背後を襲うというのが無難だろう。


 しかし今回の相手はそうもいかない。


 敵は街の中にいる盗賊。

 半数が領主の屋敷にいるとしても、屋敷内でスライムの不意打ちが可能かはわからない。


 不安定要素をメイン戦力とした作戦を立てるなんてダメだ。


 なので新しい戦力も必要だろう。


 ゴールドは相手の戦力を調べてから使っても遅くないはずだ。

 今できるのは魔石をどう使うか。


 ラピッドラビットはあと1匹ほど欲しい。

 彼らの警戒力はグレイフルフよりも上だ。自分の近くで周囲を警戒させておきたい。


 次にグレイフルフか。

 彼らの戦闘能力は個々ではラピッドラビットよりも下だが、集団戦では違う。

 数匹の群れで動いてことグレイフルフは真価を発揮するのだ。

 現在のズズ、ゼゼ、ザザ、ゾゾをZ班として、さらに別のフォーマンセルの班がいくつか欲しい。

 テテはトモに預けるつもりだ。なぜか彼女の方に懐いてしまったからな。


 スライムは現状のままで問題ないだろう。


 ポイントに関しては前々から考えていた実験を行ってからだな。

 その結果を見てからでもいい。


 新しい召喚スキルを取ることも考えて魔石は半分ほど残すとして、召喚できるのは10体ほど。


 俺は今日のやるべき事を決め、ベッドから降りて顔でも洗いに行こうかとしたところで、昨日のリアとの会話を思い出す。


「そういえば……なんか言ってなかったけ?」


 確か……カゲフミの話をしている時だった気がする。小さな引っ掛かりを覚えて考えたけど、有耶無耶で話しを進めてしまったことがあったはず。


 ダメだ。

 思い出せない。


 忘れてしまったってことはそれほど重要じゃないってことかな?


 気にするほどでもないか。


「んっ……。ますたー?」


 俺が動いたことで目が覚めたのか、フラフィーが眠たそうに口を開く。


「ほら起きろフラフィー。そろそろ朝飯だぞ、たぶん」


「……ごはん」


 フラフィーが半分以上閉じている目を擦りながら起きるも、うつらうつらとしている。


 野生……どこいったの?


 夜行性で寝なくても狩りができるとか言ってた子はどこの誰だっけ。

 親の元ではぐっすり眠れる的な感覚なのだろうか。


 わからん。


 使い魔たちとはいくら一緒にいても謎が深まるばかりだ。


「おっとっと」


 睡魔に負けたフラフィーがベッドに倒れこみそうになるのを慌てて抱きしめる。


「ほら、起きろフラ――」


「センパーイ。朝のご飯できるらしいですよー」


 そんな時にトモが部屋の扉を開けて入ってきた。


「…………」


「…………」


 いつもの制服ではなく町娘的な服を着たトモと、裸のフラフィーを抱きしめる俺。

 無言でお互いがお互いに見つめ合ったあと、トモが部屋の中に入ってきて後ろ手に扉を閉めた。


 扉が閉まる音がやけに大きく響いた気がする。


「と、トモ?」


「なんですか、ロリコンセンパイ」


 朝日にも負けない笑顔でトモがこちらへ歩いてくる。


「これはあれだ。フラフィーが朝起きたらベッドに入ってきてたんだ」


「ふーん。裸でですか?」


 部屋を見渡しながら訝しむトモ。


「あ、ああ」


 俺はゆっくりとフラフィーをベッドに寝かせると、トモが息を吸い込んだ。


「そこに正座してください!」



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