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蒼い瞳の鳥が呼ぶ。

 


「ここまでくれば大丈夫」


 裏路地を走り抜け、何度も何度も角を曲がり、現在地がどこで先ほどまでいた門がどっちにあるかもわからない。


 そんな道を進み幾ばくか、ようやく謎の少女が止まった。


 謎の少女は木塀に作られた木製扉を開き、中へと入る。


「ここは……?」


 人が1人通れる程の扉をくぐりながら俺は疑問を口にする。多分裏口用の扉だ。


 まず見えたのは2階建ての木造建築。扉の向こう側は裏庭なのか、小さな家庭菜園がある。


 謎の少女は裏口を閉めてから迷いなく家を回り、正面へ向かう。


 敷地はかなり広い。

 馬小屋があり、井戸があり、東屋もある。


 全体的に木造であり、レンガや粘土はあまり使われていないようだ。


 裏路地が薄暗く狭かったのは、このように自分の敷地を木塀で囲んでいるからだろう。家の塀と塀に挟まれた路地は迷路のように形もそれぞれになる。


「ここは夜烏の羽休め亭」


 謎の少女は家の正面に回ってからそう言った。


「つまり……宿?」


「そうさ。アリア、お客さんかい?」


 俺の疑問に答えたのは宿の中から出て来たおばさんだった。

 使い込んでいるのがわかる前掛けをしているその姿は、宿の女将と言わんばかり。


「そうよ。街の入り口であいつらに絡まれてたから連れて来たの」


「ちゃんと撒いたのかい?」


「大丈夫よ」


 謎の少女とおばさんの会話を聞くにあいつら門番は街の人たちには嫌われているのだろうか?


「お客なら歓迎だよ。ほら、早く入りな」


 おばさんに急かされ俺たちは宿の中へと入る。


 おそらく罠なんてことはないだろう。

 テテも警戒した様子はないし、中で敵が待ち伏せてるなんてことはないはず。


 宿の中は普通だった。


 横に受付があり、そのまま進むと食堂になっている。食堂のテーブル数は10基ほど。

 他にお客はいない。


 匂いが独特だな。

 木材にカビが生えた匂いというか、古い建物独特の香りだ。

 日本の古い旅館なんかこんな匂いがする。


「部屋は一つでいいのかい?」


 受付に立ったおばさんが聞いて来たので俺はトモを見る。

 トモが無言で頷くのでおそらく同じ部屋でいいのだろう。


 別に分けてもよかったのだが今更分けてくれとも言いずらい。


「それでお願いします」


「銀貨3枚と大銅貨5枚だね。夕食もつけると3人分で銀貨4枚におまけするけど、どうするかい?」


「夕食もつけてください」


 俺はそう言って外套の中にある皮袋に手を入れ、アイテムボックスから銀貨を取り出す。


「あいよ。丁度だね。部屋の用意をするから適当に食堂で時間を潰しててくれ。夕食は日が落ちてから私が寝るまでさ。部屋は階段登って一番奥だよ」


「分かりました」


「わたしはアルザ。アルザさんでもおばさんでもなんでもいいよ。あんた達に森の安らぎがあらんことを」


「俺はケイだ」


「トモです」


 俺は名乗りながら外套のフードを外した。

 それを見てトモもフードを脱ぐ。


「終わったんなら早くこっち来なさいよ」


 すると良く通る鈴の音に似た声が響いた。


 謎の少女の声がした方を向くとそこそこ長めの金髪を後ろで結った女の子が食堂のテーブルに座っている。


 歳は14歳程。


 彼女がここまで連れて来た謎の少女なのだろう。


「さっきはありがとう。助かったよ」


 俺がテーブルに座りながら礼を言った。


「礼は要らないわ。別に私が助けなくても逃げれたんでしょ?」


 金髪少女は頬杖をついてジロジロとこちらを見る。


「そんなことはない。あいつらは油断してたからなんとかなったが数で囲まれたら危なかった」


「本当に?」


 俺が適当に誤魔化そうとすると金髪少女がじっと見つめてくる。


「あ、ああ」


 つい目をそらしてしまった。

 可愛い子に見つめられるのには慣れてないんだ……。


 なんかトモがジト目で見てくるし。


「でも、あいつらをやっつけたのってその子でしょ?」


 やはり見られてたか。


 フラフィーの顔を見ようとフードの中を覗き込む金髪少女。


「ちょっと。こういう時はまず名乗るものなんじゃないんですか?」


 それをトモが遮る。


「そうね。私はアラーリア。みんなからはリアって呼ばれてるわ」


「俺はケイだ。旅人……かな?」


「私はトモ。ケイの奴隷です」


「人聞きの悪いことをいうな!」


 突然シャレにならない冗談を口にするトモに抗議する。


「だいたいあってますよ」


 トモが拗ねたようにそっぽを向く。


「……あなたたちはなんでこの街に来たの?」


 リアが本題に戻りたいのか呆れたように口を開く。


「旅の途中なんだ」


 とりあえず適当に嘘をついた。

 最近は嘘をついてばっかりだな。


「どこに行くつもりなの?」


「この街道を下に行くつもり」


 当たり障りのないように答える。


「はぁ……。もしかしてあなたたちって田舎出なの?」


 するとリアがため息をついた。


「なんかおかしかったか?」


「可笑しさしかないわよ」


 リアが呆れたように言う。


「アルゼッドから下にある東城塞都市ミルはもう無いのよ」


 リアの蒼い瞳は期待を裏切られたとばかりに伏せられた。



気づけば総合評価500になりそうです!そして目標の200ブックマークも目前・・・。

目標達成したら今回も3話連続投稿しますよ!

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