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この幼女、実は肉食系なんです。

 


 翌日。


 寝不足である。

 朝まで指を舐められた。


 この世界広しといえども膝に乗った幼女に朝まで指を舐められ続けた奴はそうそういないだろう。


「なんだったんですかね……あれは……」


「俺が聞きたい……」


 同じく寝てないトモも、1人だけぐっすりと眠るフラフィーを見て呟いた。


「舐められすぎて指がヒリヒリする」


「動物に舐められ続ける刑罰があるって聞いたことありますよ」


「シャレにならないからやめてくれ……」


 俺はため息をついたあと考える。


 あれは一体なんだったのか。

 毎晩あんな迫られたんじゃおちおち夜も寝れなくなる。


 街道を歩き続けながら考えるも、あの状況がなんなのか、どうすれば解決できるかなどわかるわけもない。


「……んっ」


 俺の背中でおんぶされたフラフィーが小さく声を漏らす。


 芋と干し肉の炒め物にパンと代わり映えしない朝食を食べた後、俺たちは野営地から出発。それから2時間ほど歩き通した現在、やっとフラフィーが目を覚ました。


「起きたか?」


 俺が背中でモゾモゾと動き出したフラフィーに言葉をかける。


「マスター?」


 なんでおんぶされてるのか分からないのか疑問符をつけて俺のことを呼んだ。


「昨晩のこと、覚えてないのか?」


「昨晩?」


 なぜか不思議そうにするフラフィー。


「大変だったんだからね!」


 トモ、お前は結局何もしてないだろう。


「マスターに……焦らされた」


「人聞きの悪いことをいうな!」


「うわ……サイテーですね」


「トモ! お前はどっちの味方だ!」


 なぜか俺が悪いみたいになった。

 もしかして使い魔の性処理は俺の役目なの?


 いやいやいや。流石にそんなエロゲーみたいな話あってたまるか。


「その……フラフィーは今も……や、やりたいのか?」


「なっ! センパイ、こんなちっちゃな子に手を出す気ですか!」


「ちげーって! ややことしくなるから静かして!」


 俺は口出しするトモに静かにさせる。


「マスターと交尾したい」


 おんぶしているせいで耳元で囁かれるようになってしまった。

 ゾクゾクと何かが目覚めそうになるのを必死に堪える。


「そ、それはお前が人間みたいになったからか? それともラピッドラビットってみんなそうなのか?」


 俺が聞きたかったのはこれだ。


「もともと肉食。だけど毎日は狩れない」


 肉食なんだ……。兎なのに。


「草食じゃないんですか……」


 トモが一番驚いていた。


「狩れないと……ああなるのか?」


「狩りは生き甲斐。狩りができないとモヤモヤする」


 狩りで解消されるはずだったストレスの発散方法が交尾なわけか?

 フラフィーは狩りをしたいという溜まったストレスを交尾をして解消しようとした。

 そこで俺が指を舐めさせるという代償行為でなんとか納めたわけだ。


 納得できるような納得できないような。


 とりあえず俺は立ち止まってフラフィーを降ろした。


「つまりフラフィーは狩りがしたいんだな?」


「したい」


 とんだ肉食系だった。


 可愛い姿なのにえげつない生き物だな、ラピッドラビット。


「ならお昼はズズ達と森の中でいとくか?」


「……マスターと一緒がいい」


「お、おおう」


 嬉しいような嬉しくないような。


 微妙な心境だ。


「フラフィー、夜に狩りする」


 フラフィーは言った。


「なら夜にズズ達と森へ行くのがいいのか?」


「そうしたい」


「でも寝なくていいのか?」


「大丈夫」


 そういえばズズ達にも昼も夜も関係なく狩りをさせてるけど、いつ寝てるんだろう?


 無理はするなと言ってあるし、疲れたら休めとも言っているから大丈夫だとは思うけど。


 いや、でも眠るなんて無防備な行為をするのは人間だけだって話を聞いたことがある。

 野生の動物は常に身が危険な状態にあるから、どこでも寝れて、すぐに起きるとか。


 たぶんフラフィーもそんな感じなのだろう。


「分かった。なら夜は思う存分狩りをするといい。その代わり無茶はするなよ。ちゃんと自分の狩れる範囲で獲物を倒すこと」


「まかせて」


 兎耳幼女は嬉しそう丸い尻尾が揺らした。




     ***




 次の日の朝。

 街に着くことはなく、再び野宿をして夜を明かした。

 そして今、1人だけ早く目が覚めて起きてみると、目の前に狩りを終えたフラフィーが立っている。


「マスターおはよう」


 片耳を半端で折りながら笑顔で朝の挨拶をするフラフィー。


「あ、ああ、おはよう」


 俺はなんとか挨拶を返す。


「たくさん倒した」


 まるで子供のように無邪気な笑顔のフラフィーが、赤く染まった手のひらに魔石を乗せて差し出してくる。


 彼女の真っ白な肌には返り血もいくつかついていた。


 軽いホラーだ。


 幼女が血まみれで帰ってくるとか。


 俺は気を取りもどしてからステータスを確認すると、所持金が43ゴールドも増えていた。


「ふ、フラフィー。何を倒してきたんだ?」


 ズズたちのナイトハンティングの平均収穫は今の所10ゴールドから高くても20ゴールドだ。

 それがいきなり倍になっている。


「みどりのと、あかいのと、ちゃいろいの」


 ごめんわからない。


「緑のってのはどんなの?」


「このくらいで、フラフィーみたいなの」


 フラフィーよりも小さく人型で緑色ということはゴブリンかな?


「赤いのは?」


「空飛んでる」


「鳥タイプか」


 前にズズ達が倒してたやつ。

 風属性3ポイントの。


「茶色は?」


「こーんなでっかいやつ」


「は?」


 俺はついこんな声を出してしまった。

 だって目の前でフラフィーが体全体を使ってその大きさを表そうとするのだから。


「マスターよりも大きい」


 なぜかドヤ顔で言い放つ。


「ちゃいろい毛むくじゃらで、爪があるの」


 もしかして熊か?

 俺よりも大きく大柄で、茶色く爪がある生き物。


 熊だな。ベアーだ。


「俺は無茶はするなって言ったんだが……」


「大丈夫。みんな怪我してない」


「ほ、ほんとか?」


「ほんとう」


 誇らしげに頷くフラフィー。

 この子はコロコロと表情が変わる。


「ならいいのか……? いや、でも熊だし……危ないだろ……」


「ちゃいろいの、いつもひとりぼっち」


 俺があれこれ考えているとフラフィーはさらに説明してくる。


「みんなで囲んで、フラフィーが目を潰すして鼻を殴るの」


 まるでお絵かきの仕方を教えてくれるように熊退治のやり方を身振り手振り説明する幼女。


 やだこのようじょこわい。


 熊の鼻を殴る。

 こんな小学生低学年もいいところのフラフィーが?


 ギャグ漫画かよ……。


 いや、彼女を見た目だけの幼女と考える方が間違ってるのかもしれない。

 こんな見た目だが戦闘力は200くらいある。


「……明日からも気をつけながら頑張って」


「フラフィー頑張る!」


 俺はフラフィーの頭を撫でながら、そう言うしかなかった。




     ***




 朝ご飯を食べ、街道を歩き続けて数時間。

 未だに街が見えることはない。


 周りの風景も変わり映えすることなく、ずっと森と草原に挟まれたままだ。


 そんな道を歩くだけなのでいろいろ考えてしまう。

 

 一番気になっているのが俺たちの存在だ。

 「勇者」という自覚はある。トモもそうだと言っていた。


 勇者とはなんだ。

 俺たちは何をしにこの世界に来た。


 まあそんな哲学的に自問自答を繰り返してみたものの答えが出ることはない。


 次に考えていたのがこの世界の事。

 この世界は俺たちがいた世界とは全くの別物だ。

 スキルを使えることもそうだが、そもそも魔法を使えている。

 この世界は剣と魔法のファンタジーなわけだ。


 この世界の住人がどれほど魔法が使えるのか、俺達のようにスキルを使えるのか。


 そんなことも考えたが、答えが出ない。

 これに関しては盗賊を一人くらい生かしててもよかった。なんて思ったり。


 次の街に行って、もっとまともな奴に聞いたほうが良いんだろうけどね。


 そうそう、次の街と言えば気になることがあるのだ。


 この街道を歩き続けて二日目になるが、一度も人に出逢っていない。

 街道なわけだから街と街をつないでいるはずなんだ。

 それなのに馬車どころか人っ子一人いない。


 よくよく思い返してみると盗賊が襲撃した馬車は北側に向かう途中だったと思う。

 俺達とは逆方向だ。


 犬助が言うには一番近い街はこちらの方角だが、一番近い街が良い街だとは限らない。


 一時になるとずっと引っ掛かりのようなものが胸の中にはびこり続ける。


 昼食事もトモに気に掛けられるくらいには考えこんでいたらしい。


 特に問題がないといいけど……。



肉食系幼女(そのまんまの意味で)

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